8月、Googleの生成AI検索「AI Overview」が日本でも一般公開されました。これまで一部のユーザーに公開されていた機能が誰でも日常的に利用できるようになり、ビジネスにおいても生成AIがまた一段と身近な存在になりました。
【画像】生成AIライティングは既に多くの領域で人力をカバーする存在に
既にビジネスにおける生成AI活用は盛んに行われていますが、その中でもコンテンツのライティングは安価に大量生成が可能であるため、多くの企業で生成AIによるライティングの導入が進んでいます。一方で、ハルシネーション(事実とは異なる内容)の問題や、オリジナル性に乏しいコンテンツがたくさん生成される中で、あらためて人間によるライティングの真価が問われてきている側面もあります。
果たして、AI時代にライティングはどう投資すべきか。本記事では生成AIが流行しつつあるコンテンツ市場について解説します。
●企画書からSEOまで 生成AIが使えるシーン
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生成AIライティングの利用シーンの例としては、企画書やレポートなどの定型的な文章作成や多言語対応、商品紹介文の作成、キャッチコピーの生成や、FAQの作成などが挙げられます。
SEO(検索エンジン最適化)コンテンツ作成にも生成AIを活用でき、実際に生成AIで作成したコンテンツが検索結果の上位に表示された事例も多数あります。ただSEOにおける生成AI活用には注意点があり、Google検索品質評価者向けガイドラインによると、生成AIコンテンツを人による編集とファクトチェックなしに使用すると低品質の評価とする、という記載があります。生成AIが作成したコンテンツを人の監修なしでそのまま公開してしまうと、検索順位に悪影響が及ぶリスクがあるため注意が必要です。
生成AIの普及により、Googleでは生成AIの利用に関するルールが定められるなど、その活用環境が整備されています。ルールを順守しながら生成AIを効果的に活用することで、無限に近いリソースを生かし、大きなビジネスインパクトを生み出せます。
●ライターよりも安価 生成AIライティングツールの増加
最近ではコンテンツライティングに特化・最適化された生成AIライティングツールが増えており、ライターとの契約の代わりにツールを導入する企業が増えています。
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生成AIライティングツールは、記事・プレス・商品説明・メルマガなどの文章を自動生成でき、専門家向け・一般向けなどの表現の調整も容易にできるのが特徴です。
SEO対策を念頭にSEOコンサルタントが監修するサービスもあり、生成AIの使用以外で発生する人的なリソース部分もカバーしてくれます。
利用料金は記事数やアカウント数によりますが、サブスクリプションで毎月数千円〜数万円程度と、ライターにライティングを依頼する料金と比較すると安価です。
ライターにかかる費用よりも生成AIツールの方が安価でありながら、クオリティーについては人間による監修を入れることでハルシネーションの問題をクリアにできるため、特定のコンテンツライティングにおいては生成AIの方が優位なのが現状です。
●マーケティングにも生成AIの波 小売・eコマース分野で改善した事例も
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Grand View Research, Inc.の調査によると、マーケティングにおける生成AIの世界市場規模は2030年までに220億2000万ドル(約3.13兆円)に拡大すると予測されています。
欧米では、小売・eコマース分野を中心に顧客に個別のコンテンツを届けるニーズが高まっており、生成AIによる高度なテキストモデルをマーケティングシステムに組み込むことで、顧客のエンゲージメントが改善された事例が生まれています。生成AIの導入により、従来のライターによるコンテンツでは実現しなかった施策が生まれ、マーケティング手法に大きな変革が起きています。
●ライターへの発注は不要になる?
従来のライティングはライター個々人の能力や経験によってコンテンツの質が左右されてきましたが、生成AIなら一定の品質で短時間にコンテンツを作成できるため、コンテンツマーケターにとっては強力なツールとなっています。
しかし、生成AIは創造的な独自の洞察や、革新的な発見、感情や倫理的な判断、データ不足の分野での応答など、アルゴリズムで答えを導きづらい情報については苦手としています。
コンテンツマーケターはこの点を踏まえたコンテンツ制作に臨むべきでしょう。例えば生成AIで記事の骨子を生成し、ライターがその骨子を元に読者の心に響くストーリーテリングを加えることで、より魅力的なコンテンツを生み出すといった方法です。
●生成AIとライター コンテンツ共創時代
生成AIによってコンテンツ制作の現場は大きく変化しました。市場の変化により、今後マーケターはコンテンツライティングにおいて効率と質を両立させる投資が求められるでしょう。
生成AIは大量のデータ処理や定型的な文章作成において優れたパフォーマンスを発揮する一方、従来のライターが持つ創造力や独自の視点、感情を伝える力も依然として重要です。特にオリジナルなストーリーテリングや一次情報の生成には人間の力が欠かせません。
生成AIによって、人の記憶に残らない記事が大量にあふれることが予想されます。そういったコンテンツは早晩評価されなくなるでしょう。これからのコンテンツマーケターは人間にとって良質なコンテンツとは何か、もう一度読みたいと思うコンテンツとは何かを考える姿勢を失ってはいけないと考えます。
●筆者プロフィール:田中雄太
株式会社デジタルアイデンティティに2023年にジョイン。前職の株式会社アダムテクノロジーズでは執行役員。現在はSEOエヴァンジェリスト、コンサルタント。SEO集客からの売り上げ・問い合わせ増加など、セールスファネル全体のコンサルティングが可能。『薬機法管理者』の資格を有し、表現の規制が厳しい薬機法関連分野のマーケティングにも精通。
X(旧Twitter):@yuuta_tanaka88
会社HP:https://digitalidentity.co.jp
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