年間多くの対局が組まれる中、そのたびに話題となるのが対局中の食事やおやつ。「勝負めし」「勝負おやつ」などと呼ばれて、戦況と合わせて注目を集めています。特に「勝負おやつ」は一般の人が購入できるものも多いため、報道後に「藤井聡太さんが食べた!」と買い求める人が殺到するケースも珍しくありません。
最新の「勝負おやつ」は「パイナップルパンと中国茶」
去る2024年9月18日、名古屋市の「名古屋マリオットアソシアホテル」で行われた第72期王座戦五番勝負第2局では午後のおやつとして「パイナップルパンと中国茶のセット」が出され、やはり大きな注目を集めました。「中国料理『梨杏』の料理長がおやつと一緒に中国茶も楽しんでもらいたいとご用意しました。王座戦のために作ったメニューだったのですが、店頭、電話、ECサイトなどに問い合わせが数多くあり、藤井さんが召し上がったランチと合わせたセットにして期間限定で販売させていただくことになりました」と同ホテル担当者。
ブレーク神話のきっかけは「ぴよりん」
藤井聡太さんが対局中に食べたものがブレークする。そのような社会現象のきっかけとなったのが「ぴよりん」でした。
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その後も効果は継続し、ショップ前の行列は今や日常となってほぼ毎日完売。お菓子やグッズなど関連商品も次々に発売され、ぴよりんは今や名古屋を代表する人気キャラクターの一つとなっています。
現在ぴよりんはJR名古屋駅構内の「ぴよりんSTATION カフェジャンシアーヌ」と「ぴよりんshop」、2024年2月にJR勝川駅(愛知県春日井市)近くにオープンした「ぴよりんshopアトリエ店」の3カ所で販売。
駅構内の2店舗では販売は10時、14時、17時の3回、ぴよりんshopアトリエ店は13時〜先着となっています。Web通販サイト「ぴよりんMARKET」の「スマートぴよ約」で予約購入も可能です。
「ケロトッツォ」「元祖 鯱もなか」、名古屋の老舗和菓子店の銘菓も人気沸騰
名古屋で続いて大きな反響を巻き起こしたのが、2021年7月の対局で藤井さんが食べた「ケロトッツォ」と「元祖 鯱もなか」です。
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ケロトッツォはういろうで有名な青柳総本家の定番商品で、カエルまんじゅうをアレンジした和洋折衷スイーツです。
「報道当時はケロトッツォ目当てのお客さまで行列ができ、店舗単位では売上2倍以上の効果でした。現在でも名古屋以外で催事出店した際、お客さまから『藤井棋聖が食べたおやつだ!』とお声がけいただくことがあります」と同社担当者。
ケロトッツォは現在、青柳総本家の大須本店(名古屋市中区)、KITTE名古屋店(同・中村区)、守山直営店(同・守山区)で購入でき、記念日などにはネット通販も行っています。
元祖 鯱もなかは創業100年以上の老舗・元祖 鯱もなか本店の看板商品。名古屋のシンボル・金のシャチホコを型取ったいかにも名古屋らしい和菓子です。
「おやつに選んでいただき従業員一同飛び跳ねるくらいうれしかったです!」と同社担当者。
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元祖 鯱もなかは名古屋駅のキヨスク、名古屋城、中部国際空港 セントレアなど、名古屋を中心に主要な観光スポットやお土産物店で購入可能。販売店の情報は元祖 鯱もなか本店の公式サイトでご確認ください。
コンテスト開催で和洋のスイーツが新名物に
このような効果の大きさから、2024年7月に名古屋で行われた「第65期王位戦第1局」に先駆けて、名古屋商工会議所(共催:名古屋市、名古屋観光コンベンションビューロー)が「勝負おやつコンテスト」を開催。書類審査、一般投票、審査員実食により「おやつ候補リスト」8品が選ばれ、対局棋士に提供されました。「コンテスト形式にすることによって注目度が高まると考えました。実際、対局中に食べられたもの以外の商品、お店からも反響があったという声が寄せられています。
また、応募は名古屋市に実店舗のあるお店に限定し、最終8品をパンフレットにすることで、対局後も各店舗を巡り市内を回遊していただけると考えました」と名古屋商工会議所担当者。
最終審査を通過したのは8品。その中から、藤井さんが実際に食べたのは「名鉄商店」の「こぐまくんケーキ」、そして「尾張菓子きた川」の「へそくり餅」、「グリュース」の「葵フルーツバターサンド」でした。
こぐまくんケーキ
こぐまくんケーキは名鉄運輸のマスコットがモチーフのココアスポンジでいちごムースを包んだケーキ。オリジナル商品のみを扱う名古屋土産専門店「名鉄商品」限定のスイーツです。
「選ばれた当初は増産してもすぐ完売となり、現在も完売が続いています。『藤井さんがこぐまくんケーキを食べているところをテレビで見たよ』などとお声がけいただくことも多く、より幅広いお客さまに認知していただけていると実感しています」と同店担当者。
こぐまくんケーキは毎週水、金、土、日曜日、名鉄百貨店本店 メンズ館1階「名鉄商店」で販売。店頭でも電話でも予約可能です。
へそくり餅
へそくり餅は知る人ぞ知る和菓子の名店「尾張菓子きた川」のオリジナル商品。金柑の甘露煮を柔らかな羽二重餅で包んだ親しみやすくも上品な一品です。
「藤井さんが召し上がったと報道されるやいなや、名古屋市内の店舗だけでなく関東の取扱店にも多くの方が足を運んでくださいました。将棋のキーホルダーや扇子をお持ちの将棋ファンの方も数多くご来店くださっています」と同店店主。
へそくり餅は名古屋市北区の本店のほか、ジェイアール名古屋タカシマヤ地下1階「銘菓百選」(毎週木、日曜日)、星ヶ丘三越地下1階「菓遊庵」(毎週金曜日)で購入可能。ただし1〜2時間で完売することが多いので、ご注意を。
葵フルーツバターサンド
葵フルーツバターサンドは名古屋市東区の洋菓子店「グリュース」が今回のコンテスト、対局のために新開発したオリジナルスイーツ。サブレ生地で、あんず、干し柿のはちみつ漬け、いちじくを使ったバタークリームをサンドした、素材にこだわった一品です。
「一過性ではなくその後も多くの方にお買い求めいただいていて、一番人気の商品となっています。愛知県の食材を使った看板商品を作りたいと思っていたので、その思いもかなえられました」(グリュース店主)
藤井さんの「勝負めし」「勝負おやつ」は、対局が行われる全国各地で話題になっていますが、とりわけ藤井さんの地元である愛知県では、大きな盛り上がりを見せています。
これからも藤井さんが活躍すればするほど、それにあやかるグルメも盛り上がるはず。藤井さんを応援する思いを込めて、「勝負めし」「勝負おやつ」を味わってみてはいかがでしょうか?
大竹 敏之プロフィール
愛知県常滑市出身。大学卒業後、名古屋の出版社に勤務し、その後フリーライターとして独立。雑誌や新聞、Webメディアなどに名古屋の情報を発信する。著書は『間違いだらけの名古屋めし』(ベストセラーズ)『名古屋の喫茶店 完全版』(リベラル社)など多数。(文:大竹 敏之(名古屋ガイド))