参加費を賞金にする「ゴルフコンペ」 実力勝負でも「賭博」になるってホント?

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2024年10月04日 10:10  弁護士ドットコム

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「賭けゴルフ」のコンペでも金銭のやり取り一切なしで参加すれば大丈夫なのか──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。


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コンペは社会人で構成されたゴルフサークルが主催しており、参加費などを徴収して、特定の順位になった参加者に賞金として配っているそうです。



コンペへの参加を検討していた相談者は、コンペで賞金をもらえば「賭博になるのでは」と思ったものの、「参加費無料・賞金なし」でも参加できると伝えられ、ゴルフ自体はプレイしたいがためか心が揺らいだようです。



参加費を払わず、賞金も受け取らなければ、ゴルフコンペに参加しても問題ないのでしょうか。そもそも参加費などで賞金を設定するコンペは違法な「賭けゴルフ」なのでしょうか。瀬野泰崇弁護士に聞きました。



●ゴルフも偶然の事情に左右される「賞金有コンペは原則“賭博”」

──「賭けゴルフ」に関連する罪名は具体的に何でしょうか。



「賭けゴルフ」に関連する代表的な罪名は、「賭博罪」です(刑法185条、50万円以下の罰金または科料)。



賭博罪は金銭などの財物を賭けて勝敗を争う行為を処罰するもので、参加者が金銭を賭けてゴルフをプレイする場合、これに該当する可能性があります。



さらに、もし「賭けゴルフ」が繰り返し行われていた場合、「常習賭博罪」が適用され、より重い処罰がなされる可能性もあります(刑法186条1項、3年以下の懲役)。



ただ、この「常習」性は、たとえば、職業性を帯びている場合や生活の重要な部分を占めるに至っているような場合に認められるのが一般的なので、質問の事案のような「賭けゴルフ」で常習性まで認定される可能性は低いかもしれません。



また、ゴルフコンペの主催者が利益を得る目的で賭博行為を行っている場合、賭博場を開設しその利益を得ることに関与したとして、主催者には「賭博場開張図利罪」が適用される場合もあり得るでしょう(刑法186条1項、3月以上5年以下の懲役)。



──参加費などで賞金を設定するコンペでも「賭けゴルフ」なのでしょうか。



「賭博」とは、「偶然の事情に関して財物を賭け、勝敗を争うこと」と定義されています。



参加費を集め、それを賞金として分配する形式のゴルフコンペは、参加費という名目であっても、コンペの結果において特定の順位になった参加者にそれを原資とした賞金が配られるので、参加費を支払うことは「財物を賭け」たといえるでしょう。



──ゴルフ競技の結果は「偶然の事情」に当たりますか。



ゴルフは確かに技術の競技ですが、天候やコースのコンディションといった偶然的な要素が結果に多少なりとも影響するため、「偶然の事情」に左右される勝負と解釈されるだろうと思います。



したがって、ゴルフの勝敗は偶然に左右されるので、「偶然の事情に関して財物を賭け、勝敗を争うこと」という「賭博」の定義に当てはまると考えます。



なお、形式的には賭博行為に該当する場合であっても、性質上「一時の娯楽に供するもの」を賭けたに過ぎないときは処罰されないとされています(刑法185条但書)。



しかし、金銭はこれに該当しないとするのが判例の主流ですので、その金額の多寡にもよるのでしょうが、少なくとも一般的なゴルフコンペの参加費の金額が「一時の娯楽に供するもの」に過ぎないとされる可能性は低いと考えます。



──もし参加費を払わず、賞金も受け取らなければ、ゴルフコンペに参加しても罪に問われたりはしないのでしょうか。



参加費を支払わず、賞金も受け取らない場合には、賭博行為に直接関与していないとされる可能性が高いとは思われますが、完全にリスクがゼロになるわけではありません。



たとえば、他の参加者が賞金を目的にゴルフコンペを行っている場合、そのコンペ自体が賭博と認定されれば、自分が賞金を受け取っていないとしても、コンペへの参加が違法行為への関与と見なされ共犯となる可能性があります。特に、主催者が利益を得る目的でコンペを開催している場合、その危険性は高まるでしょう。



安全策としては、そもそも賞金を設定しない形式のコンペにだけ参加するか、参加費が原資となっているような賞金がないことを確認した上で参加することが推奨されます。主催者に事前に詳細を確認し、自分が賭博行為に関与することにならないかを確認しておくことが重要です。疑問がある場合は、弁護士に相談された方がよいでしょう。




【取材協力弁護士】
瀬野 泰崇(せの・やすたか)弁護士
一般民事・家事・企業法務などマチベン分野を取り扱いながら、刑事事件や著作権法や公職選挙法(選挙実務)などに注力している。趣味は、釣りと武術とエンタメの現場のお手伝いをすること。著書に「こんなときどうする刑事弁護の知恵袋」(現代人文社)。
事務所名:弁護士法人きさらぎ
事務所URL:https://shinyurigaoka.kisaragi-law.com/



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