沖縄出身者と沖縄ルーツの南米出身者ほか、多様なルーツの人が暮らす鶴見の街を歩いて、考える

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2024年10月07日 18:23  TBS NEWS DIG

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横浜市鶴見区で開催された「多文化共生フィールドワーク」

京浜工業地帯の一角、横浜市鶴見区は、戦前から、朝鮮半島や沖縄から来た人たちが大勢暮らしてきた地域です。

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そして、1980年代以降、ブラジル、ボリビアといった南米からの移住者が増えましたが、その多くは沖縄がルーツの人たちです。

9月28日(土)、鶴見駅の南側、工業地帯の近くの街で、「かながわ国際交流財団」主催の「多文化共生フィールドワーク」が行われました。

集合場所は、鶴見区仲通の「鶴見沖縄県人会館」。

22人の参加者はまず、横浜鶴見沖縄県人会の並里典仁副会長の講義を聞きました。

講義では、戦前から鶴見にある沖縄出身者のコミュニティの歴史や年中行事、例えば、秋の「ウチナー祭」についての説明がありました。

「ウチナー祭」ではエイサーや三線の演奏、沖縄舞踊でにぎわい、沖縄料理や沖縄ルーツの南米の料理の出店もあるということです。

また、沖縄角力大会が毎年開かれていること等も講義では話題に上りました。

県人会の現在の青年部長はボリビア出身です。

鶴見の町を歩いてみるとわかること

そのあと、参加者は街に出ました。

商店街沿いは、「沖縄そば」というのぼりを掲げたり、「サーターアンダーギー」が店頭に並ぶ店が現れます。

工業地帯や高速道路のそばには昔の雰囲気を残す古い住宅街もあります。

この日の案内人は、関東学院大学准教授の藤浪海さん。

藤浪さんは一軒の沖縄料理屋を指さし、「あの店に行けば、県人会の誰かしらに会う店ですが、あそこもそうだし、鶴見の沖縄料理屋さんに行くと出てくるのが、ソーキ(豚の骨付きあばら肉)の唐揚げなんです。

沖縄ではソーキを揚げたりしないけど、ここに暮らす南米の人たちが、揚げたものが食べたい、作ってくれないかということで、鶴見でソーキのから揚げが生まれたんです」と話します。

また、県人会館の1階にある「沖縄物産センター」は、観光目線の品揃えではなく、生活に密着した、沖縄出身者が日常の生活で買うものを、きちんと置いていることを説明しました。

ところどころに、南米出身者が経営する電気設備会社を見かけますが、会社名は沖縄の名字が目立ちます。

この辺りを歩くのは初めてという、参加者の一人は「歩いてみないとわからない場所っていうのはたくさんありますよね。いろんなルーツの方が暮らしているっていうのは、こういうフィールドワークじゃないと、やっぱり体験できないのかなと思います」と話します。

案内人の藤浪さんによると、2000年代からは、中国、フィリピン、ネパールなどからの移住者も増え、ブラジル人経営の会社で、ベトナムからの技能実習生が働いていたりするということです。

商店街には、沖縄では日常的に飲まれる「ルートビア」が買える自動販売機があったりもします。

ペルー料理店の前を過ぎ、ブラジル出身者が経営するスーパーに入ったりもしました。

参加者は、外国人支援に関わる人や教員、会社員、大学生と様々でしたが、「スーパーの入口のすぐ横で、ハンバーガーも作ってるのはびっくりしました」という声や、ルートビアを買って、その場で飲む人もいました。

母親と参加したという若い男性は「自分にはブラジルと沖縄の血が入っていて、興味がちょっとあったので、参加しました。愛知県の豊田市とかにはブラジルの店がたくさんあるけど、鶴見にもこんなにあるのはびっくりしました」と話していました。

「自分は鶴見人」と語る安富祖さん

それぞれに楽しみながら街を歩き、最終的に、ブラジルのレストランと物産販売を兼ねた店に到着。

待っていたのは、地域密着で、外国人の支援やコミュニティ作りに取り組むNPO法人「ABCジャパン」(藤浪さんも理事)の理事長、安富祖美智江さん。

安富祖さんはブラジルで生まれ育った日系二世で、日本に移住して34年になります。

「両親は沖縄出身、ウチナーンチュ」とあいさつ。

ブラジルでは、ポルトガル語で育ったけど、両親は沖縄の言葉で話すので、時にコミュニケーションがうまくいかなかったことや、日本に来て、子供を育てるようになると、今度は自分が日本語で苦労したこと。

特に、学校、教育関係の言葉は、日常会話で出てこない単語もあるので、「周りのママ友に手伝ってもらった。ほんと感謝している」と参加者を前に語りました。

そして、ABCジャパンが取り組んでいる「子供の教育保障」(フリースクールなど居場所づくり、進学、進路のガイダンス、母語やルーツの文化を学ぶこと等々)や「大人の自立支援」(日本語教室や生活のガイダンス)、母語で行う「こころのサポート」、日本人も巻き込んだ「コミュニティ作り」などの活動について説明しました。

安富祖さんは「誰でもウェルカム。もちろん、日本人も」と、出身国やルーツに関係なく活動を行っていると話します。

そんな安富祖さん自身は「自分は、鶴見人」と言い切っていました。

「かながわ国際交流財団」は「多文化共生フィールドワーク」を毎年行っていますが、2024年度のテーマは「日本人も外国人住民もお互いに住み心地のいい、誰にとっても居心地のいい街というのはどのような地域なのか」。

今回の鶴見の街歩きも、参加者それぞれの関心に応じて、考えるヒント、きっかけになったでしょう。

鶴見の町を「沖縄タウン鶴見マップ」片手に歩いてみると、様々な発見があるかもしれません。

TBSラジオ「人権TODAY」担当: 崎山敏也記者

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