チーム事情から見るドラフト戦略2024〜楽天編
プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月24日に開催される。各球団すでに指名選手をリストアップし、最終段階に入っていると思うが、チームの現状と将来を鑑み、今回のドラフトで本当に獲得すべき選手は誰なのか? 楽天は2013年以降、優勝から遠ざかっており、投打ともに世代交代の時期に差しかかっている。今年のドラフトで補強すべきポジションとは?
【チーム防御率は12球団ワーストだが......】
こういう仕事をしていると、特定のチームに対するファン意識というものは徐々に希薄になってくるものだ。以前は熱心なヤクルトファンだったが、ここ数年は仙台生まれということもあって、楽天の動向が気になっている。
個人的印象としては、「勝ったり負けたり」だけど、調べてみたらほんとにそのとおりで、今季もここまで(10月7日現在、以下同)66勝72敗3分(勝率.478)。過去5年を遡ってみると、トータルで326勝333敗31分とほぼ5割。順位も3位が1回で、4位が4回......。
まさに印象どおりの結果で、1つ負けても次は勝つから、ファンも球団も「まぁいっか......」となって、チーム強化になかなか本腰を入れられなかったのではないか。
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昨季もパ・リーグワーストだったチーム防御率(3.52)が、今季はさらに数字を落として3.78。パ・リーグどころか、12球団ワーストになっているのだが、それでもそこまで「ひどい投手陣」という印象がないのは、一軍で"奮投"している投手たちの防御率が決して悪くないからである。
先発陣では、岸孝之(21試合/6勝11敗/防御率2.84)、早川隆久(25試合/11勝6敗/防御率2.54)、さらに4年目の今季、突如覚醒した藤井聖(22試合/11勝5敗/防御率2.93)。
リリーフ陣では、酒居知史(48試合/25ホールド/防御率2.38)、鈴木翔天(47試合/22ホールド/防御率1.74)、宋家豪(41試合/17ホールド/防御率3.18)が昨年同様に立派な成績を挙げ、そこに8年目の藤平尚真(45試合/19ホールド/防御率1.83)が新境地を開き、今季守護神に転向した則本昂大(54試合/32セーブ/防御率3.46)がセーブ王のタイトルを獲得。
あとは先発陣で頑張ったルーキー左腕の古謝樹(15試合/5勝8敗/防御率4.32)と、故障明けの荘司康誠(7試合/1勝4敗/防御率6.98)の"成長"を待つばかりだ。
【将来のクリーンアップ候補】
過去2年の支配下ドラフトで、楽天は14選手を指名したが、そのうち10人が投手。ちなみに2021年は上位3人が野手だったが、メドが立ちつつあるのが安田悠馬のみ。そうした状況、また構成的にも今年の楽天のドラフトは「野手」だ。
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主軸として打線を支えてきた浅村栄斗も、来季35歳になる。そろそろ浅村に匹敵する選手が出てきてほしいところだが、期待できる若手は見当たらない。なので、今年は「浅村栄斗の後継者」を探すドラフトになる。
いる、探さなくても、今年はいる。
筆頭は、西川史礁(龍谷大平安→青山学院大/外野手/182センチ・88キロ/右投右打)だ。今年のドラフトの目玉となるスラッガーである。
「それはない!」という人もいるだろう。なぜなら、昨年のドラフトで同じ青山学院大から外野手の中島大輔を6位で獲得しているからだ。「被ってしまう......」と、ドラフトではそうした気の遣い方をするものだ。
しかし、その心配はない。西川を「内野手」として指名すればいいのだ。そもそも西川は内野手である。高校2年春に出場した甲子園で、「遊撃手・西川」のプレーを見ている。今よりずっとスリムなユニフォーム姿で、しなやかな身のこなしと強肩が印象的で、高校3年時は内野手としてドラフト候補に挙がっていたほどだ。プロ野球選手としての心身の資質は、2年目で阪神のクリーンアップに定着した森下翔太にもヒケをとらない。
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昨年のドラフトで、野手として最初に指名した4位のワォーターズ 璃海ジュミルが、新人自主トレ中に故障。左ヒザの骨軟骨を移植する手術を受けて、現在もリハビリ中。また4年目の大型遊撃手・入江大樹もファームで着々と経験を積んでいるが、プロでショートが務まる選手は現れた時に獲っておかないと、なかなかいるものではない。
今年は高校生にいい素材の選手がいる。
齋藤大翔(金沢/遊撃手/181センチ・76キロ/右投右打)は、強肩と軽快なフィールディングが持ち味。以前はやや強引なプレースタイルだったが、捕球から送球の一連の動きがコンパクトになり、守りの精度が格段に挙がった。シングルを二塁打にできる快足も大きな魅力だ。
ほかにも、走攻守の三拍子なら今坂幸暉(大阪学院大高/遊撃手/178センチ・80キロ/右投左打)、石見颯真(愛工大名電/遊撃手/174センチ・70キロ/右投左打)。強肩・強打なら岸本佑也(奈良大付/遊撃手/180センチ・85キロ/右投左打)、快足なら萩原望安(戸畑/遊撃手/174センチ・65キロ/右投左打)。それぞれタイプは異なるが、好素材は何人もいる。
【外野手育成も重要課題】
育成の外野手がふたり戦力外になり、若手は武藤敦貴(5年目)、吉野創士、前田銀治(ともに3年目)の進捗状況を見ると、外野手も2、3人ほしい。
快速と広い守備範囲なら、飯山志夢(中央学院高→立正大/外野手/178センチ・81キロ/右投左打)と麦谷祐介(大崎中央→富士大/外野手/180センチ・83キロ/右投左打)が候補に挙がる。飯山は、ヒットになりそうなボールだけを捉えるシュアさと選球眼を備えており、麦谷はやや粗削りだが"長打力"という武器を持つ。
大砲候補なら井上幹太(神村学園→金沢学院大/外野手/185センチ・96キロ/左投左打)だ。途方もない長打力は、きっとファンの歓喜させるに違いない。小柄だが、寺本聖一(広島商業→広島経済大/外野手/170センチ・85キロ/右投左打)は鍛え抜かれたヘラクレス級の体躯から長打を連発し、俊足・強肩も魅力。全国的に無名でも、能力満載の隠し玉的存在だ。
そういえば、高校生捕手も随分と獲っていない。とはいえ、そうそう絶好の素材がいるわけではない。だが今年は、総合力に優れた箱山遥人(健大高崎/捕手/177センチ・84キロ/右投右打)がいるが、上位で消える可能性もある。
そうなれば大学生に目を移して、誉田貴之(福岡工大城東/捕手/178センチ・84キロ/右投右打)を獲るものもありだ。強肩と強靭な体躯なウリの選手だったが、4年になって実戦力を上げ、レフト方向へ長打、ライト方向にも強い打球を飛ばせる技術が加わっている。まだまだ伸びしろを感じるだけに、これからの成長に期待できる選手だ。