海外で今も現役「松坂世代最後の大物」久保康友(44歳)、ドイツから帰国 来季の展望は→「息子の受験があるので日本にいます」

4

2024年10月10日 19:20  まいどなニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

まいどなニュース

2013年、阪神時代の久保康友投手

プロ野球のロッテ、阪神、DeNAで活躍後、海外のチームで選手生活を続けている久保康友投手が、ドイツ・野球ブンデスリーガでのシーズンを終えて帰国した。ドイツ2年目となる今季は12試合に登板し、8勝3敗、108奪三振、防御率2.16をマーク。6月には完全試合も達成したという。当然、次のシーズンもどこかの国で投げるのだろうと思いきや、「長男の高校受験があるので、ずっと日本にいる予定です」とのこと。2シーズンを過ごしたドイツでの手応えや、今後の展望などについて話を聞いた。

【写真】現在の久保康友投手

旅行しまくった1年目、野球に力を入れた2年目

かねてから「日本野球機構(NPB)を離れた自分にとって野球はもう仕事ではない」と公言し、海外で現役を続ける理由について聞かれると「趣味である世界遺産巡りを楽しむため」と説明してきた久保投手。ドイツのチーム「ハンブルク・スティーラーズ」でも1年目は休みの度に旅行に出かけ、特に調整もしないまま登板することが日常茶飯事だったが、今季はちょっと様子が違ったらしい。

「今季はハンブルクを含む北地区5チームのうち4チームに日本人選手が加入して、ハンブルクにも20代の岡田竜汰選手が来てくれました。彼にドイツの野球や生活のことを色々とアドバイスするうちに、僕自身も野球のスイッチが入った。昨季はあまり力を入れていなかったトレーニングもほぼ毎日こなすようになった結果、驚くほど体の状態が良くなりました。ドイツ1年目は涼しい気候がとにかく新鮮で『こんなにも楽に投げられるのか!』と感動しましたが、今季は『ちゃんと練習したらコンディションってこんなにも良くなるのか!』という発見がありました。まあ当たり前のことなんですけど(笑)」

日本と違う環境で野球ができる楽しさ

ドイツでは野球はかなりのマイナースポーツで、試合が開催されるのは週末。野球だけで食べている選手はおらず、平日はそれぞれ別の仕事で生計を立てているという。

「日本とは全く異なる環境で野球ができていることは、自分にとっての大きな財産だと思っています。ドイツに限らず、僕が今までプレーしたアメリカやメキシコも、野球との距離感や考え方は全然違うので、日本の“当たり前”が崩れるのが僕は気持ち良い。『あ、こんなんでええんや』と思えるので、生きるのがすごく楽ですね」

今季、練習の大切さを身にしみて感じた久保投手は、帰国後も、以前所属した関西独立リーグの「兵庫ブレイバーズ」などに練習場所を借りて日々トレーニングをこなしているという。とはいえ本人曰く、それは「野球のため」ではなく「健康のため」。久保投手は「トレーニングをすると頭も体もスッキリして、めちゃくちゃ体調が良くなるんですよ」と、アスリートとは思えないようなことを言って笑う。

2025年は長男の高校受験に専念

NPBを離れて以降、米独立リーグ、メキシカンリーグ、国内の独立リーグ、そしてドイツの野球ブンデスリーガで選手生活を続けてきた久保投手。2025年の予定を訊ねると、「日本にいるが、仕事はしない」という。

「来年は長男の高校受験があるんです。これまで子供の懇談や三者面談には一度も行ったことがなかったのですが、高校受験は彼の人生にとって非常に大事なことですから、僕も近くで見守りたいと思っていますし、懇談などにも積極的に参加するつもりです。『1年間休養する』みたいな大袈裟なことではなく、今は野球よりも優先的に向き合うべきことが家庭内にあるだけの話。トレーニング自体は続けますし、もし野球の解説や講演などの依頼をいただくことがあれば喜んで引き受けます。独立リーグの試合に出てほしいと言われれば出る。それで息子の受験が無事に終わったら、2026年はまたどこかの国でプレーしたいです」

ピークを過ぎても続けたければ続ければいい

44歳という年齢については「特にネックではない」と言い切る。

「もちろん技術力や体力は落ちていきますが、プレーする国のレベルを落とせば全然問題なく続けられると思います。今はトレーニングでコンディションを維持できているという感じですが、とはいえ、さらに無理をしてまでやるほどの志はありません。ストレスなく、楽しめる範囲で続けていくのが理想です」

「NPBの外にも探せば居場所はいくらでもあるので、年齢を重ねてピークを過ぎたからといって、別にすっぱり引退しなくてもええんちゃう?と思っています。NPBの価値観に染まった人たちにとっては、誰も見ていない、誰も評価してくれない海外のリーグに行くなんて、“意味”がわからないかもしれません。でも僕は、満員の甲子園でも、ドイツの小さな球場でも、全く同じ気持ちで投げています。他人にちやほやされたり騒がれたりすることに、一切興味がないからです。試合中は、どう投げれば良くなるかということしか考えていません。もちろん全盛期よりもパフォーマンスは落ちていますが、今できることをやる。僕はそれが楽しいんです」

◇  ◇

久保康友(くぼ・やすとも)

1980年、奈良県橿原市出身。関西大学第一高校で春夏連続で甲子園出場を果たし、卒業後は松下電器を経て2004年にプロ入りした。「松坂世代最後の大物」とも呼ばれ、2017年にプロ野球界を去るまでに残した成績は97勝86敗。2018年からは米独立リーグやメキシカンリーグ、国内の独立リーグなどを渡り歩き、2023、2024年はドイツのハンブルク・スティーラーズで主力投手の一人として活躍した。兵庫県西宮市在住。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

動画・画像が表示されない場合はこちら

ニュース設定