前回からの続き。私はカズエ。ある日届いた一通の手紙で、私が7歳のときに出ていった母が亡くなったことを知りました。遺産放棄の手続きのために異父きょうだいであるナオフミさんとタカフミさんと会って話しているなかで、母が不倫していた事実に気がついてしまったのです。しかも、不倫相手と幸せな家庭を築いていたなんて、とてもじゃありませんが許せることではありません。私は放棄する予定だった遺産をもらうことにしたのです。
まだ7歳だった私を置いて、父ではない見知らぬ男に寄り添い家を出ていった母の姿。できることなら思い出したくないですが、生涯忘れられない光景なのです。目の前のふたりに罪はないとわかっていながらも、その悲しさ、やるせなさを伝えずにはいられませんでした。
母が亡くなったからといって、私が母にされたことが帳消しになるわけではありません。相続を放棄するのは、今の自分も、子どものころの自分も望んでいないと思ったのです。異父きょうだいたちには「遺産は放棄しません」とあらためて伝えました。
怒り、悲しみ、虚しさ……お店を出たとき、さまざまなマイナスの感情が心のなかで渦巻いていました。怒りの感情のせいか、帰り道では不思議と涙は出てきませんでした。しかし家に着き、父の写真を見た瞬間、急に堰を切ったように涙があふれ出てきたのです。
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それからしばらくして、ナオフミさんたちの弁護士から連絡がありました。意外なことに減額などの交渉もなく、法定相続分相当の金額で遺産をもらうこととなりました。両親が不倫の末に結ばれていたことはナオフミさんたちには関係のないことなので、正直災難だったかもしれません。しかし、彼らの両親は違います。父と私を深く傷つけておきながら、のうのうと幸せに暮らしていたのです。これは遺産ではなく、父と私の人生に対する母たちからの「慰謝料」だと思って受け取ることにしました。私が母を許すことはないでしょう。それよりも、寂しい思いをさせないよう、愛情をたっぷり注いでくれた父との思い出の日々を大切にしていきたいと思います。
原案・ママスタコミュニティ 脚本・今淵凛 作画・Ponko 編集・海田あと