災害で電車が運休しても上司は「商談に行け」の一点張り…“超遠回り”した部下を襲った“つらい仕打ち”

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2024年10月11日 09:31  日刊SPA!

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旭川駅前に到着した帯広行きバス
 台風は日本に近づくと速度を上げるのが一般的だが、8月下旬に接近・上陸した台風10号は、記録的な遅さで長期間にわたって各地に被害をもたらした。
 東海道新幹線では三島―名古屋間が3日間の計画運休を実施。東京と名古屋・大阪の大動脈が止まったことで北陸新幹線+在来線特急の迂回ルートに人が殺到したことがテレビや新聞で報じられた。

 この台風10号では秋雨前線にも影響を及ぼし、台風の進路から離れた東北や北海道でも大雨に。特に北海道では札幌と道東を結ぶ、JR石勝線が土砂災害により8月31日から9月4日の昼前まで運休。しかし、大手メーカーの札幌支社に勤務する安村智之さん(仮名・32歳)はJRが不通になっているにもかかわらず、帯広へ出張を決行せざるを得なかった。

◆JRは不通、高速バスは満席でも商談のスケジュールが変更できず…

「出張は9月2日の月曜日。直前の週末は海外ドラマを全話イッキ観していて、テレビやネットのニュースをチェックしていなかったんです。石勝線が不通なのを知ったのは出張前日の1日夕方。しかも、この時点では『再開の見通しが立っていない』って。それで札幌―帯広は都市間バスを調べたのですが、2日朝の時間帯はすでに全便満席でした」

 実は、安村さんの会社の都合で商談の日程を一度変更してもらったため、再度の変更は避けたいとの事情もあった。休日だったが急を要する状況なので上司に連絡するも「迂回ルートを使ってでも行ってくれ」と命じられてしまう。

「ウチの会社は出張の際、公共交通機関を利用する決まりになっており、車で向かう選択肢はありませんでした。調べると旭川―帯広に都市間バスがあることがわかりましたが、約束の13時に間に合わせるには旭川駅前7時55分発のバスに乗る必要がありました。でも、札幌からだと始発の特急でも間に合わず、旭川で一泊する必要があったんです」

◆旭川で前泊することに

 改めて上司に連絡すると「申し訳ないが頼む」と言われ、急いで身支度をして1日夜の特急で旭川へ。駅前のビジネスホテルに泊まり、翌朝のバスで一路帯広へ。

「ただ、乗車時間は4時間弱ととにかく長かった。美瑛や富良野を通るルートだったから車窓の景色は良かったです」

 途中、休憩で停車した道の駅では展示していたヒグマのはく製を撮影し、搾りたての瓶牛乳を飲むなど「それなりに楽しんでいた」というが……。

「この時は半分開き直っていたし、楽しまなきゃ損かなって。本当はプライベートで来たかったですけどね(苦笑)」

◆前泊&超遠回り出張に対する上司の労いの言葉はなし

 帯広には定刻より約20分遅れだったが、なんとか予定していた13時には取引先の会社に到着。商談では旭川からの迂回ルートで来たことを話すと驚かれたが、先方の担当者も何度かドライブしたことがあるルートだったらしく、思いのほか話が盛り上がったそうだ。

「その方とはそれまで雑談することがほとんどなかったため、距離感を縮めることができました。新規の契約も無事受注することができましたし、遠回りしてまでわざわざ来た甲斐がありました」

 帰りは商談の終わる時間が読めなかったのでバスの予約はしていなかったが、幸いにも15時半発の札幌行きのバスに若干の空きが残っていたのでチケットを購入。出発までは少し時間があっため、遅めの昼食を取るために入ったのは、地元では名物の豚丼以上に支持されているご当地カレーチェーンの『インデアン』。メールのチェックをしながら上司にも契約が成立したことを報告。すると、すぐに返信が届いたそうだ。

「契約が取れたことは喜んでくれましたが、超遠回りで出張に行かせたことに対する労いの言葉は一切なし。文句のひとつでも言ってやりたかったですけど、相手は上司なので何も言えませんでした」

◆日曜夜から移動したのに振替休日も休日手当もなし

 札幌中心部のオフィスに着いたのはすでに日も暮れた19時半過ぎ。安村さんは翌朝までに商談報告書を上司に提出しなければならず、また、この日のうちに処理しなければいけない別の仕事もあった。結局、家路についたのは23時過ぎだったという。

「JRだったら電車の中でもノートPCを開いて仕事ができますが、バスでそれをやると酔ってしまうので。試しに少し作業をしてみたのですが、やっぱり気持ち悪くなって途中で諦めました」

 また、日曜日の夜に急きょ旭川への移動を強いられたにもかかわらず、振替休日や休日手当などは一切発生しなかったそうです。

「上司曰く業務命令ではなくアドバイスという認識みたいです。『自主的な移動をしただけで休日勤務にはならない』って。前泊しなきゃ商談には間に合わなかったのにこの仕打ちはあんまりですよ」

 いちばん腹が立ったのは上司に対してだったようだ。

<TEXT/トシタカマサ>

―[乗り物で腹が立った話]―

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

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