サッカー日本代表の最大値を森保監督は引き出しているか? サウジアラビアに序盤で苦戦した理由

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2024年10月11日 17:01  webスポルティーバ

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 サウジアラビアにアウェーで2−0。日本はW杯アジア3次予選C組で勝ち点を9(得点14、失点0)に伸ばした。オーストラリア、サウジアラビア、バーレーンが勝ち点4で追うが、独走状態に入ったと言っていい。滑り出しで躓いた直近の2大会とは180度異なる余裕の展開になっている。

 アジア枠が8.5にほぼ倍増したことを考えると、予選落ちはあり得ない状況だ。3戦を終了した段階で、W杯本大会出場8回連続出場はもうそこまで見えている。現時点でこれだけ余裕がある国は、世界を見渡しても見当たらない。

 最大の敵と目されたサウジアラビアでさえ、怖いチームではなかった。ホームでもう一度戦っても敗れることはなさそうな、手応えの少なさだった。それはチームが"成長できにくい環境"に置かれていることを意味する。贅沢な悩みと言えばそれまでだが、目標値であるW杯準々決勝から逆算すれば、喜ばしい事態とは言えない。

 つまり、日本は世界で他に例がない新局面を迎えている。異常事態と言ってもいいこの「緩すぎる環境」とどう向き合うか。逆にどう活かすか。

 サウジアラビア戦の日本の布陣は従来同様3−4−2−1で、スタメンは以下のとおりだった。

 GK/鈴木彩艶、CB/町田浩樹、谷口彰悟、板倉滉、ウイングバック/三笘薫、堂安律、MF/守田英正、遠藤航、シャドー/鎌田大地、南野拓実、CF/上田綺世。

 対するサウジアラビアは4−3−3で対峙してきた。日本と同じ5バック的な布陣でくるとの予想もあったが、セオリーに従った格好だった。世界的に見て、5バックになりやすい3バックがより、4−3−3、4−2−3−1がなぜ多数派か。それぞれがマッチアップした際に生じるズレが、攻撃的サッカーに有利に現れる傾向にあるからだ。

 実際、サウジアラビアは前半、いい感じだった。日本は本領を3割程度しか発揮できないサッカーに陥っていた。「これのどこが超攻撃的3バックなのか」と突っ込みを入れたくなるほど、守勢に追いやられた。堂安、三笘の両ウイングバックは案の定、後方待機を強いられた。相手の両ウイングの動きに牽制され、ウイング色よりDF色の濃い、低い位置でのプレーを余儀なくされることになった。

【日本の攻撃的な魅力はほぼ発揮されず】

"例外"が起きたのは前半14分。両者は一瞬、揃って高い位置を取ることができた。堂安のクロスを三笘がダイレクトで折り返したシーンである。それを守田が頭で落とすと鎌田が飛び込み、先制弾とした。

 しかし、その後もサウジアラビアのペースは続く。関係は4対6。日本はボール支配率で劣ることになった。1−0でリードながら、好ましくない展開を強いられた。

 日本の3−4−2−1は相手ボールに転じると5−4−1に移行するが、両シャドーの移動距離が長いため、移行が完了するまでに時間がかかる。よって、順番的にはまず5バックの態勢を固め、それからその前方に「4」が形成されることになる。前からプレスは掛かりにくいのだ。また、ボールを奪っても、今度は1トップの上田が孤立する。他の選手との距離が遠いからである。

 1トップがボール回しに絡む機会が少ない。これは森保ジャパンの構造的な問題にも見える。CFが主役ではなく脇役に見えるサッカーだ。前にボールが収まる機会が少なければボール支配率は上がらない。得点シーン以降、日本の攻撃的な魅力はほぼ発揮されなかった理由だ。リードしているからいいようなものの、見ていて面白い試合ではなくなっていた。

 危なかったのは前半42分。サウジアラビアの右SBサウド・アブドゥルハミドが放った強烈なインステップキックが日本ゴールの右上隅を捉えた瞬間だった。GK鈴木がファインセーブでこれを弾き出したが、決まっていたら2−0の勝利はなかったかもしれない。ターンニングポイントと言ってもいいプレーだった。

 日本も前半のアディショナルタイムに、上田が相手GKに体勢を崩させる惜しいシュートを放っている。これが決まっていれば試合も決まっていた。サウジアラビアのロベルト・マンチーニ監督を警戒させるには十分な一撃だったのかもしれない。

 というのも、後半、サウジアラビアは4−3−3から3−5−2(3−3−2−2)へと、布陣をいじってきたからだ。日本の3バックとは若干異なるが、守備的であることに変わりはない。

 マンチーニと言えば、けっして攻撃的とは言えないイタリア人らしい監督として知られる。それが前半、頑張って日本に対して、定石どおりに4−3−3で向かってきた。日本は実際、苦戦した。ところが、上田に惜しいシュートを浴びて怖くなったのか、後半、日本と似たような布陣で戦うことになった。終盤は再び前に出ようと4バックに変えているが、後半36分には小川航基に2点目を決められている。この布陣を巡るブレが日本にとっては幸いした。森保一監督を救うことになった。

「賢く、したたかな戦い方」とは森保監督の言い分だが、森保監督が史上最強と言われるこのメンバーのマックス値を最大限に引き出しているかと言えばノーだ。このサウジアラビア戦で示した出力は3割程度。相手の拙攻に救われた2−0と言うべきだろう。

 次のオーストラリア戦について問われた森保監督は「勝つ保証はどこにもない」と、相変わらず生真面目そうに兜の緒を締めていたが、日本がどの国より余裕たっぷりであることは事実。このメリットをどう活かし、強化につなげるかを考えることこそが「賢く、したたかな戦い方」ではないか。

 宮本恒靖会長をリーダーとするサッカー協会の首脳陣は、2026年北中米W杯に向け、協会として招集方法を含めた戦略を練り直す必要に迫られている。従来と同じ方法ではもったいない。無駄に全力で戦っていては、日本のマックス値は更新されない。

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