「東京から敦賀に北陸新幹線かがやきで帰ってきてみて初めて福井に新幹線来たんやなって実感がわいた。早いって感覚はないけどかなり楽。」(関東圏、Xより)
「先日も福井まで行きましたが、不便極まりMAX状態です。その先を新幹線に乗せるためにつるが乗り換え・・・なんでしょうけど、手間、めんどくさい(以下、略)」(関西圏、Xより)
3月16日に北陸新幹線福井・敦賀が開業してから半年あまり。SNSにも率直な感想がつぶやかれているが、直通新幹線で福井とつながった「関東圏」と特急サンダーバード直通から敦賀駅で新幹線乗り換えに変わった「関西圏」とでは温度差が大きいようだ。関西圏にとっての北陸新幹線福井・敦賀開業とは? 大阪市内で10月9日、福井県によるメディア向け説明会が実施された。
■それでも大阪からの旅行客は増えている
福井県未来創造部新幹線・交通まちづくり局長の姫川祐一さんによると、開業6カ月間の来訪者は昨年比で関東圏から「42%増」、関西圏から「22.3%増」。増加率は関東圏が上だが、来訪者数の変化を見ると関東圏が約46万人→約66万人、関西圏が約105万人→約128万人で、関西圏が圧倒的に多い。関西圏は「もともと交流が多」く、「乗り換え」負荷の上に「(時間短縮効果)3分しか恩恵がないにも関わらず増えている」という。
若年ファミリー層など若い世代の旅行客が多いのも関西圏の特徴だ。北陸新幹線開業後の県内観光の同行者はいずれの都道府県も「夫婦2人(東京:34%、大阪:37.9 %)」が一番多いが、東京都は2位が「自分ひとり(17.8%)」なのに対して、大阪府は「小学生以下連れの家族(14.5%)」や「恋人(8.2%)」「友達(5.89%)」が昨年と比べて伸びているという。マイカーで福井入りした人も含むデータだが、関西圏からはよりカジュアルに遊びに行く場所なのだ。
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■敦賀駅は「ただの乗り換え駅」ではない
大阪−金沢直通の特急サンダーバードは、金沢−敦賀間の新幹線延伸により並行区間の運行を廃止。敦賀駅での乗り換えの手間が発生した。
「この乗り換え、老人や子ども連れ、大荷物だとかなりウザく感じるでしょうね今まで直通だっただけに。」「金沢は目的地。敦賀は残念ながら目的地にはならない。単なる乗り換え駅。」(Xより)
乗り換え時間が最短8分しかなく「障害物山登り競争」(Xより)という声もある。
姫川さんによると、乗り換えの利便性は当初から考慮されていた。だからこそ1階に特急ホーム、2階にコンコース、3階に新幹線ホームを設置し、「上下方向だけの乗り換え」で設計したという。在来線への乗り換えには「60メートルの連絡通路」を使って上下左右に移動しなければならない。
「JRの都合で乗り換えが必要になったなど不便を感じている人」は、敦賀駅舎にも目を向けると良いかもしれない。この駅には、実はたくさんの「日本一」がある。「駅の高さ(37メートル)」、「ホームの高さ(21メートル)」、「乗り換え用自動改札機数(30基)」、「整備新幹線1ホーム当たりのエスカレーター数(7基)」、「コンコースの長さ(200メートル)」、「コンコースの広さ(5200平米)」、「3階ホームと2階コンコース間の階段(76段)」など、11もの「日本一」がある。鉄道マニアの間では「駅そのものもスポットになっている」という。
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■敦賀駅・越前たけふ駅・福井駅を旅の目的地に
もちろん駅だけでなく、敦賀市内にも魅力的な観光名所がある。敦賀港のシンボルで国の有形文化財である敦賀赤レンガ倉庫を見学し、夜間は敦賀港を一望できる金ヶ崎緑地のイルミネーションを鑑賞できる(「ミライエ」は12月25日まで〈11月は金・土・日・祝、12月は毎日〉)。レトロな外観で国の重要文化財の敦賀市立博物館は12月まで屋上特別公開中だ。
福井駅まで足を伸ばせば、福井県立恐竜博物館(福井市)、一乗谷朝倉氏遺跡(福井市)、永平寺(永平寺町)などの定番スポットはもちろん、敦賀駅と福井駅の間にある越前たけふ駅を有する越前市は「源氏物語」の作者紫式部と縁がある。紫式部が若い時期に都を離れてこの地で暮らし、雄大な自然とともに越前和紙の技術に触れたことが「源氏物語」を書く原動力になったとされる。平安時代に租税として収められていたというこの和紙の神様を祭る岡太神社・大瀧神社(越前市)では、「日本一複雑な屋根」といわれる社殿が見どころだ。平安時代の寝殿造庭園が再現された紫式部公園(越前市)もある。
今年は、都から近江を通り越前国府まで歩いた紫式部の実際の旅を再現。一般公募による再現行列は、神社仏閣参拝や諸儀式を行いながら3日かけてゆかりの地を移動する。10月20日(日)15時から、旅の終着点となる越前国府(越前市役所前広場)で着任の儀が行われる予定だ。越前市ブランド戦略課主査の清水真名さんは「越前での旅がなければ『源氏物語』は生まれなかったことを知ってもらいたい」と訴えた。
■敦賀-新大阪の全線開通まで25年
1973年に整備計画が決定してから51年かけて、ようやく8割が開業した北陸新幹線。残り2割の敦賀−新大阪間の整備が今、改めて注目されている。
敦賀−新大阪間は、2017年に小浜市から南下して京都駅と京田辺市を経由する「小浜ルート」ですでに決定している。しかし、25年という工期の長さや巨額の整備費などにより、敦賀駅から米原駅に接続する「米原ルート」を求める声が出るようになった。
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この「米原ルート」の適否については、工期や整備費だけでなく「東海道新幹線の代替機能」の観点からも理解する必要があるという。今夏の保守車両事故と2度の台風時、北陸新幹線は「東海道新幹線の代替として利用」されたが、姫川さんは「米原ルートは代替にならない」と言い切る。「米原ルート」では新大阪−米原間で東海道新幹線を利用することになり、南海トラフ地震の被害想定からも同ルートを利用しない北陸迂回ルートが有効だという。
利用者にとっても「米原ルート」のメリットは実はあまりない。新大阪−福井間の所要時間や料金はおよそ1.5倍に膨らむ上に、「米原駅で永遠に乗り換え」になる。そもそもJR西日本・沿線自治体の同意が得られず着工できないし、工期短縮効果は京都大学大学院教授の藤井聡氏の試算によると、2016年試算の「10年」ではなく「19.3年+α」かかる見通しだ。
全線開通すれば、これまで東京を起点に放射線状に延伸してきた新幹線に大阪発の南北ルートができ、東京−大阪間に広域の環状ルートが形成される。現在2時間9分かかる京都−小浜間は19分で結ばれ、「衝撃的な時間短縮」がこれまでの暮らしを一変させるかもしれない。「関西にとっても大きな効果があるはず」と理解を求めた。
現在は、年内に京都府内のルートを決定し、「令和8年3月着工が最短スケジュール」。とはいえ、「これからの計画は25年。20数年敦賀駅で乗り換えないといけないので、乗り換えの利便性、楽しいことはないかと進めている」(姫川さん)。