10月11日、静岡県の富士スピードウェイで始まった2024全日本スーパーフォーミュラ選手権の第6&7戦。1ウイーク2レース制の週末ということで金曜日に90分間のフリー走行が行われ、佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)がトップタイムを記録した。
セッション序盤から上位につけるなど好調な走りをみせていた佐藤。セッション最終盤には1分22秒769を記録し、僅差でライバルを上回ってフリー走行一番時計を叩き出した。
「タイム的には走り出しから上の方にいて、持ち込みのセットも悪くないかなというところでした。そこからさらに合わせ込みをしていって、セッション中盤からユーズドタイヤでも、ほぼトップタイムでずっと走れるような感じでした。今日は終始調子が良かったのなと思います」とセッションを振り返った佐藤。
特に夏場に入ってからは上位タイムを記録する機会も多かった感のある佐藤。前回の第5戦もてぎでもフリー走行で2番手につけたが、予選ではそのポジションを維持できず9番手と悔しい結果に終わった。予選のコンディションに合わせ込むことを意識したセッションになったという。
その手応えも上々のようで「前回のもてぎもフリー走行まで良くて、その後の予選で外れてしまったので、この走行でも予選に向けての合わせ込みをやりました。一歩高いレベルで予選に入れるのかなと思います。そこに対しては今までにないくらい好感触です」と佐藤も笑みをこぼしていた。
とはいえ、本番は明日の予選でしっかりと結果を出すこと。佐藤は「今のところチャンピオン争いとか、そういうところにはいないので、まずはポールポジションを獲って自分のポテンシャルを出し切って優勝を狙いにいきたいです」と、週末の2連戦に向けて気合いを入れ直していた。
■佐藤の誘いで加藤エンジニアが“新体験”
セッション終了後、佐藤は公式映像インタビューで「事前にエンジニアとシミュレーターで何回も繰り返してきたことが、今の状況では合っていたと思います」と語っていた。
これについて65号車担当の加藤祐樹エンジニアに聞くと「何のことはなくて、蓮から『(加藤エンジニアも)iRacingをやって、それでお互いにやり取りしませんか?』というリクエストを受けて、蓮をはじめいろんな人からパーツをもらって自宅にセットを作ったんですよ」と、苦笑いしながら事情を明かしてくれた。
自身もシミュレーターでSF23を走らせるうちに、あることに気がついたという。
「そうしたら、7月の富士ラウンド(第4戦)の予選と似たようなアンダーステアが出て『あれ? なんか似ているな』となりました。それを直す方法を今までは理屈ベースで計算してやっていたのですけど、今回は自分がシミュレーターに乗ることで体感として(ドライバーと)同じ目線で会話ができたなというところはありました」と加藤エンジニア。
その成果があったのか、フリー走行中のやり取りも今まで以上に中身が濃かった様子だ。
「いろいろと話をしてきたなかでも、(セットアップを)コンサバな方向で持ち込んできていたので、そこは蓮も引っかかっている様子でした。そのすり合わせをしながら、コンディションへの合わせ込みというところに精度を持ってやれているのかなと思います。この結果をそのまま信じていいのか分からないですけど、彼が思っている『こうしたい!』ということが、もう少し具体的に分かったかなと思います」と、今までとは異なる手応えを掴んでいるようだった。
加藤エンジニアも、フリー走行から予選にかけて調子をキープできるかというところを課題として捉えており、「明日の朝に予想されるコンディションを充分考えて、それに合わせてQ1とQ2でどうしていくのかを、これから時間をかけてやっていこうかなと。いざ予選になって風向きが変わっていたり、路面温度が思うように上がらないとなった時でも慌てず対応して、彼のパフォーマンスを発揮できるようにしたいですね」と冷静に現状を分析する。
「一晩あるので……(今日の夜は)長くなりそうです」と、ポールポジション獲得に向けた詰めの作業がまだまだ続きそうな気配だった。