今回は、離婚後4年、小学校中学年になった娘から面会を断られることが増えたという男性からの相談です。さまざまな形で「別れ」に向き合ってきた、看護師・僧侶・スピリチュアルケア師・ケアマネ−ジャー・看護教員として多くの方の心に寄り添ってきた玉置妙憂さんの答えとは?
【相談】これから先の人生、娘に会えない寂しさに慣れるためには?
離婚してから4年が経ち、最近まで定期的に娘と面会交流を続けてきました。私は娘に会えることが毎月の楽しみだったのですが、娘が小学校中学年になり、最近になって面会をキャンセルすることが増えてきました。
やりとりは妻を通してではなく娘と直接LINEで行っているため、理由を尋ねると、「友達と遊ぶ約束や学校の宿題、習い事がある」といった答えが返ってきます。娘が成長するにつれ、友達との時間や学業が優先されるのは自然なことだと理解しているものの、やはり寂しさが募ります。
実際、面会時に何を話していいかわからないことも増え、以前のように自然に会話が弾むことが少なくなってきました。さらに、最近の面会で娘から「お母さんが再婚を考えている」と聞かされ、動揺しました。
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私は離婚後、一度も誰かと付き合ったことがありません。娘や元妻に対して恨む気持ちはありませんし、彼女たちが幸せになることを願っていますが、私自身の孤独感は深まるばかりです。この寂しさとどう向き合い、慣れていくべきなのか、ぜひアドバイスをいただきたいです。(40代 男性)
【玉置さんの回答】「慈悲」の境地に入ってみませんか
「友達と遊ぶ約束」「学校の宿題」「習い事」これらを理由に、親と一緒にいることを拒否。いやあ、娘さんは至極真っ当に、順調にお育ちですね。実に、良かったです。
とはいえ、巣立って行く我が子の姿を見て、一抹の寂しさを感じるお気持ち、私にもわかる気がいたします。でも、それは己の心の中だけに留めておくべき想いのひとつで、剥き出しにしてしまっては趣を欠きますね。
ましてや、娘さんに直接ぶつけてしまっては「きもっ!」と言われるだけでしょうから、自重いたしましょう。
常々、人を思う思いの深さには、段階があると感じています。一方的にドキドキハラハラする「恋」。お互いが一緒に幸せになろうとする「愛」。そして、相手の苦しみが除かれ楽になることだけを望む「慈悲」。どれが良い悪いの話ではありませんよ。ただ単に、段階があるなと感じているだけです。
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でも、私は、歳を重ねるとともに、どうせなら「慈悲」深い人間になりたいなと思うようになりました。なんとなくですけど、そのほうが私にはかっこよく見えるもんでね。
あなたも、離婚して4年。40代になりましたか。どうです。そろそろ、娘さんへの「愛」をさらに一歩深めて、「慈悲」の境地に入ってみませんか。娘さんが苦しくなかったらいいんですよ。娘さんが楽なのであれば、それでいいんです。
会ってくれるとか、話してくれるとか、そんな些末なことに左右されない、愛より深い慈悲の境地です。ね、かっこよくないですか?
そして、元奥さんのこともそうです。彼女が幸せになることを、ただただ、願う。「私は離婚後一度も誰かと付き合ってない」? だからなんですか。そういうちっちゃいことを言わないの。お気をつけあそばせ。恨む気持ちがダダ洩れしていますよ。少々かっこ悪いです。彼女が幸せになってくれさえすればそれでいいと、慈悲の深さで願えてこそ、器のでかい人間になれるというものです。
でも、寂しい? そうねえ…たしかに。でもね、人間はね、究極、独りなんですよ。もともと、徹底的に独りなんです。
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いうなれば、それぞれが一機の飛行機のようなもんです。独りで生まれてきて(離陸)、独りで死ぬんですよ(着陸)。そりゃ、時には並んで飛ぶようなこともあるでしょうけれど、決して「ひとつの飛行機」には成り得ないのです。
独りが基本。孤独が基本形です。だから、寂しさとどう向き合い慣れたらいいかと四苦八苦しないで、「ああ、そうだった。もともと徹底的に独りだったんだ」と、知ってください。
その寂しさは、乗り越えるものでも、慣れるものでもありません。そもそもそういうものなのです。寂しいもんなんですよ。人間は。これが真理です。
そして、そのどうしようもない寂しさを知っているからこそ、離れていく飛行機の無事を心から願えるようになるのでしょう。「人間は徹底的に独りだ」という真理に気が付いていないから、「なんで離れていくんだ」「どうして愛してくれないんだ」「なんで私はひとりなんだ」と、七転八倒四苦八苦する羽目になるんです。
あなたも、そろそろいい頃合いですよ。魂のレベルを、今よりさらに一歩深めようじゃありませんか。今より大きな人間になる、今がその絶好のチャンスです。
あなたという飛行機が、雲を突き破り、空高く孤高に飛んでいく姿が見えます。ものすごくかっこいい! かっこいいので、横に並んで飛びたいという飛行機が、そのうちきっと現れるでしょう。
あなたの順風満帆な飛行を、心から願っています。
◆玉置妙憂(たまおき・みょうゆう)/看護師。僧侶。二児の母。専修大学法学部卒業後、法律事務所で働く。長男が重度のアレルギーがあることがわかり、「息子専属の看護師になろう」と決意し、看護学校で学ぶ。看護師、看護教員の免許を取得。夫のがんが再発。夫は、「がんを積極的に治療しない」方針をかため、自宅での介護生活をスタートする。延命治療を望まなかったため、自宅で夫を看取るが、この際にどうしても、科学だけでは解決できない問題があることに気づく。夫の“自然死”という死にざまがあまりに美しかったことから開眼し出家。高野山にて修行をつみ高野山真言宗僧侶となる。その後、現役の看護師としてクリニックに勤めるかたわら、患者本人、家族、医療と介護に携わる方々の橋渡しとして、人の心を穏やかにするべく、スピリチュアルケアの活動を続ける。訪問スピリチュアルケアを通して、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)とQOD(クオリティ・オブ・デス)の向上に努める。非営利一般社団法人「大慈学苑」をつくり、代表を務める。課題解決型マッチングメディア「リコ活」でコラムを執筆。
(まいどなニュース/リコ活)
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