突然の老老介護で「これが老後か」と愕然とする日々…70歳まで働く時代をどう生きるか?

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2024年10月11日 22:11  All About

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夫婦で老後の計画をたてたといっても、「定年後も働く」ということを決めて安心してはいけない。定年も過ぎれば、認知症やその他の病気、そのほかの理由で、どちらかがいつ働けなくなるかはわからないのだ。
いつからが老後なのかは人によるのかもしれないが、仕事を辞め、夫婦2人きりになったとき、「これからどういうふうに暮らしていこうか」という話し合いはなされた方がいい。だが、その時点ですでに話し合いすらできない関係になっていることもある。夫婦の老老介護から相手を殺める事件も目立つ今、60代前半が鍵になるのではないだろうか。

「老老介護」夫の介護に鬱々とする私

「夫は77歳、私は68歳。70歳で仕事を辞めてから、夫は一気に老け込みました。2年前には転倒して骨折、そのころから認知症の症状が出てきて、最近は夜中に家を出て徘徊しているところを警察に保護されました。初めてのできごとだったので、私も気が動転してしまって……」

マナミさんはそう語った。夫が転倒したのは、介護認定を受けようとしていた矢先だった。だが夫自身は、認知症を認めようとしないし、もともとわがままだったのがさらに傍若無人となっている。

「先日も近所のコンビニで大声を出して店員さんを脅したらしくて。近所には認知症なのでと言って回っています。この辺りは住宅街で、昔から住んでいる人たちが多いので、皆さんに支えてもらうしかなくて」

要介護となってたとえヘルパーさんが来てくれたとしても、本人が受け入れないとなると話はややこしくなる。今、マナミさんはなんとか夫の気持ちを穏やかに保ってもらおうとしているという。

老後のことを夫婦で相談していなかった

「こうなる前に、老後のことをきちんと話し合っておけばよかった。そう思います。夫は生涯現役で働くと言い続けていたし、体も丈夫だったので、なんとなくこのまま暮らしていけるような気がしてしまった。仕事を辞めたのは、自らではなく辞めさせられたようなもの。

性格はもともと頑固なんですが、そこに妙な攻撃性が出てきてしまった。あの時点で病院につれていくべきでした」

2人の子は遠方にいる上、それぞれ子育て中で大変なことが分かっている。だからこそ頼れない。近所の人が助けてくれることはあっても、自分が動かなければ自治体から大丈夫ですかと声をかけてくれるわけではないのだ。

「どちらかにちょっとおかしなとことがあったら、すぐに病院につれていくとか、かかりつけの医者を近所に作っておくとか、いろいろできることはあったはずなんですが、私もずっと働いていたので日々の多忙さにかまけてしまって」

後悔先に立たず。早く自治体とつながって夫への対処を考える必要がありそうだ。

今から話し合っている

「定年後も働く」だけでは、老後の生活は安泰なわけがない

「大病したら経済的にどうするか、どちらかが体が不自由になったらどうするか。私たち夫婦の最近の会話はそればかりです」

そう言って苦笑するユカリさん(61歳)。2歳年上の夫の定年は2年後だが、その先も働く予定ではあるという。年金をもらうのは70歳からとふたりで決めている。

「でも病気ばかりはいつかかるか分からない。気を付けていれば病気にならないわけでもないですしね。退職金の一部は家のローン返済にあてて、ようやく完済ということになるので、年金受給を遅らせるしかない。そこまで元気でいられるかどうかが勝負だねと話しています」

夫の弟が先日、60歳で亡くなった。そのことも夫に不安とショックを与えているようだとユカリさんは言う。

「ただ、不安に苛まれて人生を送るのも嫌ですよね。ささやかな楽しみをどうやって見つけていくのか。それも私たちの課題です」

不安や焦燥感が募って、夫婦仲がぎくしゃくしたら本末転倒だ。それだけは避けたい。互いを思いやりながら暮らしていきたいと2人とも考えている。

「考えてもしょうがないよと本当は言いたいんですが、こんな世の中になると、年金だけでは生きていけない。私たちの親の世代は、年金だけでなんとかやっていけたものなのに……」

70歳を超えても働く時代をどう生きるか

何十年も働いて、日常生活を楽しむこともできない年金しか手に入らないから70歳まで働き続けるのが当たり前になりつつある。70歳を越えても働く人たちも多い。

「実際に亡くなる寿命と健康寿命は違いますからね。周りを見ていても、75歳くらいが限界なのかなと思う。あとは楽しみながら余生を送るべきですよね。人として本来あるべきそういう人生を送れなくなっているのが本当に不安です」

大企業に勤めてきて、それなりに年金が充実している人より、こうした不安を抱えている人の方が多いはずだ。それでもなんとか暗くならないよう、2人きりになった夫婦は支え合うしかない。

「どちらかが心身ともに病んだりしたら、とにかく早く病院や自治体とつながっておくこと。頼ることを怖がらないこと。今はそう決めています」

どうなることやら、ですけどねと、ユカリさんは大きなため息と共に「よいしょ」と声をかけながら立ち上がった。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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