京都市上京区の千本通丸太町上ルに、学生らの救世主となるラーメン屋がある。学生が皿洗いをすれば、ラーメン1杯を無料とする太っ腹ぶり。かつて「餃子の王将 出町店」で、同様のサービスがあり、感動に震えたオーナーが、「いつか自分も」と温めていた思いを実現させた。学生に限らず、誰にでも温野菜を無料で出すサービスも。「おなかいっぱいになって頑張ってほしい」と若者にエールを送る。
大手居酒屋で働くなど、飲食の経験が豊富な男性オーナー(45)が今年3月に開いた「麺屋 一麺専心」。ラーメンの原体験は、20数年前に味わったという「餃子の王将 出町店」での一杯だ。「すごくおいしかった。それからラーメンが好きになった」と思い起こす。おいしさだけでなく、同店の皿洗いで無料というサービスが心に突き刺さった。「恥ずかしいですけど、学生を助けたいという思いに感動して、泣いてしまった。いつか絶対に自分もやろうと決めた」という。
「若い人の力に」という気持ちをずっと抱いてきた。居酒屋で働いていた時には、腹をすかせたアルバイト学生に食べ物をこっそりあげたことも。「おなかがいっぱいになれば、頑張っている子がもっと頑張れるようになるから」とほほ笑む。
ついに開店させた一麺専心。満を持して「45分の皿洗いで一杯無料」を始めた。立命館大や同志社大、大谷大、佛教大など、かいわいに多い学生や、専門学校生を対象とする。学生証を示すだけでよいという。ただ、最近の学生は恥ずかしいのか、困っていないのか、「まだ1人も皿洗いをした学生がいないんです」と残念がる。物価高で学生生活は圧迫されているはず。「力になりたい」と話し、遠慮なく声をかけてほしいと願う。
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国産のニンジンやキャベツ、タマネギなど150グラムもの温野菜を無料提供するのも一麺専心流。「健康のために、特に若い人に野菜を食べてほしい」という一心で始めた。キャベツが破格の高騰を見せた5月には、「(家で)なんでお客さんにはただで出すのと言われた」と冗談めかして笑う。
味ももちろん本格派。独学で味を追及した「超濃厚豚骨らーめん」が看板だ。「鶏白湯らーめん」も人気を誇る。豚骨と鶏骨、水だけで、長い時間をかけて丁寧にスープを作り込む。スープ作りに打ち込むため、いつも睡眠は3〜4時間。体力的に大変だが、まがい物が一切入っていない一杯を自信を持って出すために身を削っている。麺は、全国の人気店から引っ張りだこの「麺屋棣鄂(ていがく)」の品を使う。ラー油や、ギョーザのたれ、ヒマラヤ岩塩などを使ったソルトも自家製。高菜も無料と、随所にこだわりを見せる。
オーナーは「自分の力と愛情を込めて工夫した一杯で、頑張っている人を応援したい。うそっぽく聞こえるかもしれないですけど、社会に貢献したい。おなかいっぱいになって、もっと頑張れるようになれる店にしたい」と意気込む。
(まいどなニュース/京都新聞・陰山 篤志)
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