タイの“日本推し”ローソンで「Lチキ」が大ヒット 近未来で和風な店舗がオープンした背景

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2024年10月15日 06:31  ITmedia ビジネスオンライン

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どんな商品を扱っているのか

 タイで展開しているローソンが、店内調理のおにぎりや日系食品の品ぞろえを強化した新型店舗を9月12日にオープンしたところ、好調な滑り出しを見せている。日本で販売しているのとおなじ「Lチキ」が目標の7倍売れただけでなく、客数も通常店舗の3倍を記録しているという(9月末時点)。どういった点が支持されているのだろうか。現地でローソン事業を展開する、Saha Lawson Co.,Ltd(サハローソン)の品川公彦氏(Managing Director)に話を聞いた。


【画像】タイでバカ売れのLチキ、日本を感じさせるおにぎりやおでん、近未来で和風なデザインの店舗(全10枚)


 新型店舗は、首都バンコクのオフィス街にオープンした。冷凍食品、アイス、菓子、即席麺といった日系食品のアイテム数を、タイにおける通常店舗の約4倍に拡大。さらに、Lチキや店内で調理した本格的なおにぎりを、タイのローソンとして初めて発売したのが特徴だ。品川氏は「ローソンの良さを伝えるのが目的で、フラグシップとして位置付けている」と説明する。


 店内の様子を見ると、「鮭マヨネーズ」「辛子明太子」「鶏唐揚げ弁当」といったように、値札にタイ語と日本語を併記しているのが印象的だ。菓子コーナーでは「ブラックサンダー」「ビスコ」「ベビースターラーメン」といった日本でなじみのある商品が並ぶ。また、店内は「和×未来」をコンセプトにしたデザインとしており、日本の甘味処や腰掛茶屋をイメージしたインテリアも採用している。


 なぜ、ここまで“日本推し”なのか。品川氏は「差別化のため」と説明する。タイでは、日本と同様に「コンビニがあって当たり前」という環境なので、競合と同じような店舗を出しても意味がないというのが理由だそうだ。


 ローソンのイメージに関する消費者アンケートを実施したところ、上位に「日本」「おでん」といったキーワードが上位に来ていることも影響しているとのこと。


 タイで日本食が人気ということを裏付けるデータもある。日本からのタイ向け農林水産物・食品輸出は2023年に511億円となっており、2018年から17.5%増加している。タイの日本食レストランも2023年には5751店舗が確認されており、2018年と比較すると1.9倍に増加している(出所:農林水産物・食品 輸出支援プラットフォーム)。


 筆者が調べたところ、タイではセブン‐イレブンが圧倒的な強さを誇っている。店舗数は1万4000店を超えており、セブン1強という状況だ(出所:日本経済新聞『ファミマ、タイから撤退 セブン1強の構図一段と』)。ローソンがタイに進出したのは2013年3月で、198店舗を展開している(9月末時点)。チャレンジャーの立場であることも、強い差別化戦略を打ち出していることの背景にあると考えられる。


●Lチキが好調な理由


 新型店舗における目玉商品の一つがLチキで、価格は56バーツとした(オープン時のレートで約238円)。タイローソンの一般的なフライドフーズの2倍近い価格なのに、計画の7倍売れているという。好調な理由として品川氏は「日本を訪れた際にLチキを食べた経験があるお客さまも多く、『日本と同じものを食べられる』という点が支持されているようだ」と分析する。値段は高いが、それだけの価値があるものとして購入されているようだ。


 店内調理したおにぎりや弁当も好調だという。タイでは屋台文化が浸透しており、出来たての商品を求める層に受け入れられている。


●セルフレジにもチャレンジ


 タイローソンの初めての取り組みとしては、セルフレジや商品告知を行うデジタルサイネージの導入も挙げられる。


 品川氏によるとタイのコンビニでは、セルフレジは日本ほど普及していないという。今回、店内業務効率化のために導入したところ、想定した以上に利用されている。新型店舗がオフィス街にあることから、仕事で忙しい利用客が積極的に利用しているようだ。


 デジタルサイネージは、店内販促物の付け替え業務を削減する狙いがある。現地では20〜40代の女性がローソンをよく利用しているというデータもあるため、サイネージでは女性客を意識してデザートなどを訴求している。


 このように、タイローソンの新型店舗は好調な滑り出しを見せている。品川氏は今後の展望について「SNSではローソンをもっと出店してほしいという声も見受けられる。コンビニ市場はまだまだ開拓の余地がある」と意気込む。圧倒的な店舗数を誇る競合他社がいる中で、タイローソンが打ち出した差別化戦略は今後も支持を得られるか。



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