ロボットも「目は口ほどに物を言う」 人はヒューマノイドの視線につられてしまうと判明 理化学研究所

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2024年10月18日 14:11  ITmedia NEWS

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理研、人はヒューマノイドの視線につられてしまうとの研究成果を発表

 理化学研究所は10月17日、他人の視線につられて注意を向ける「注意シフト」が、ヒューマノイドロボット相手にも引き起こされるとの研究成果を発表した。49人を対象に、人のような目を持つロボットを使って心理実験を実施。結果、人の目と同様にロボットの目の動きにもつられることが実証できたという。


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 「目は口ほどに物を言う」という慣用句の通り、非言語コミュニケーションにおいて目は特別な役割を持つ。しかしロボット相手でも同様かはこれまで調べられていなかった。特に、注意シフトは視覚情報に反応するだけでなく、他者の心を読み取って起こると先行研究で報告があったことから、ロボット相手にも生じるのかが心理学分野において重要な問いだったという。


 そこで研究チームでは、解剖学・心理学の知見に基づき、ヒューマノイドロボットの頭部「Nikola」を開発した。人の表情筋の動きを模し、怒りや幸福などの6つの感情を作ることができる他、人の目を精巧に再現した目を搭載。黒目の位置を動かすことで、視線移動を可能にした。


 これを使い、ロボット相手にも注意シフトが生じるか3種類の実験を実施した。1つ目の実験では、Nikolaの左右にライトを設置。断続的に点滅させ、実験の参加者にどちらのライトが点滅しているかボタンを押して回答してもらった。なお参加者には、アンドロイドの目の動きと頭部の向きは、点滅するライトの向きと必ずしも一致せず、判断の手掛かりにはならないことを伝え、光を認識したらなるべく早くボタンを押すよう指示した。


 以上の条件で、目のみを動かすパターンと頭部のみを動かすパターンを調べた。結果、どちらのパターンでも、ライトの向きとNikolaの動きが一致する場合は、不一致の場合より、ライトが点滅してからボタンを押すまでの反応時間が短くなった。人がロボットの動きにもつられると実証できたとしている。


 しかしこれだけでは、単に視覚情報に反応しているだけの可能性もある。そこで2つ目の実験では、Nikolaの視線を遮るように左右のライトとの間に障壁を設置し、1つ目の実験と同様に調査した。すると、Nikolaの目の動きが点滅するライトの向きと一致するか否かによって、参加者の反応時間に大きな差が生じなくなった。


 3つ目の実験では、ライトの点滅を音の信号に置換。同様に実験したところ、今度は障壁の有無にかかわらず、Nikolaの目の動きと音の信号の向きが一致する場合に、参加者の反応時間が短くなった。これらの結果から、ライトの点滅を気にしている、音に意識を向けているといった心を、Nikolaの目の動きから参加者が自動的に読み取っている可能性が高いことが示唆されたという。


 研究チームは、今回の成果について「人とヒューマノイドロボットが視線を通してコミュニケーションを実現できることを示唆する」と説明。ロボットに人のような外見・行動を実装することで、心があるかのように感じさせ、人の行動に影響を与えるロボットを開発することが期待できるとしている。


 研究は、科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版に4日付で掲載された。



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