試用期間中の妊娠報告、会社は「社会人として非常識」と退職を迫る 法的に問題ない?

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2024年10月19日 08:20  弁護士ドットコム

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試用期間中に妊娠が発覚したところ、会社から退職を迫られましたーー。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられています。


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相談者は、試用期間中に妊娠が発覚しました。相談者は、育休は難しくとも産休を取得し、産休後は正社員として仕事復帰したいと考えていましたが、「研修期間中に妊娠することは社会人として非常識」として会社に拒否されてしまいました。



そこで、相談者は退職勧奨通知書と理由書を要請。しかし会社はそれを拒否し、試用期間満了予告通知書を渡されました。内容は、「会社の従業員としてふさわしくないと認められた」という理由で、本採用しないと言うものです。



相談者は、会社の対応に頭を悩ませていますが、このような会社側の対応は法的に問題ないのでしょうか、中井雅人弁護士に聞きました。



●試用期間とは

——そもそも、試用期間とはどういうものなのでしょうか 



試用期間とは、労働契約締結後に、使用者が労働者の従業員としての適格性を観察する期間です。



使用者は、当該労働者が従業員として不適格だと判断すれば、試用期間中または試用期間満了時に本採用拒否をすることがあります。



——試用期間後の本採用の拒否は、どのような場合にできるでしょうか



判例上は、雇用契約書や就業規則で試用期間が定められている場合も労働契約自体は成立しているが、試用期間中は使用者に労働者の不適格性を理由とする解約権が留保されており、この留保解約権の濫用は許されないとされています。



つまり、本採用拒否は、労働契約が成立している以上、使用者による一方的な労働契約終了の通知(=解雇)です。その意味では「本採用拒否」=「解雇」であり、解雇と同様の規制が及びます。よって、留保解約権の濫用は許されません。



最大判1973(S48).12.12・三菱樹脂事件は、「企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合には、さきに留保した解約権を行使することができるが、その程度に至らない場合には、これを行使することはできないと解すべきである。」としました。



●妊娠を理由とした本採用拒否はできるのか



——本採用を、「妊娠」を理由に拒否することはできるのでしょうか。



男女雇用機会均等法9条3項は、女性労働者が妊娠や出産を理由とした解雇その他不利益取扱いを禁止しています。



また、同条4項は、妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、使用者が妊娠等を理由とする解雇ではないことを証明しない限り無効とするとしています。



したがって、「妊娠」を理由とした本採用拒否はできません。



——相談者はこの後どのように対処すれば良いでしょうか。



これまで述べてきたように、妊娠を理由として本採用を拒否することはできません。会社側の「研修期間中に妊娠することは社会人として非常識」という発言も不当です。



このような会社の対応に対しては、以下のような対処が考えられます。



都道府県労働局雇用環境・均等部(室)で相談し、指導、援助を受けることができます。



また、労働組合と共に団体交渉等を通して解決を図るということもあり得ます。



もちろん、弁護士に相談し、労働審判や民事訴訟(裁判)を通して解決を図ることも考えられます。




【取材協力弁護士】
中井 雅人(なかい・まさひと)弁護士
日本労働弁護団、大阪労働者弁護団、大阪弁護士会人権擁護委員会国際人権部会(2020年度より部会長)などに所属。残業代請求、解雇、労災、労働組合事件など労働者側の労働事件に専門的に取り組んでいる。入管事件や名誉毀損・差別問題にも取り組んでいる。
事務所名:暁法律事務所
事務所URL:http://www.ak-osaka.org/



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