駅弁の定番「チキン弁当」が60歳 なぜ、世代を超えて愛され続けるのか

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2024年10月22日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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「チキン弁当」が60周年を迎えた

 年間45万食を誇る人気の駅弁「チキン弁当」が10月で発売60周年を迎えた。1964年の東海道新幹線開業とともに誕生し、半世紀以上にわたり根強いファンに支えられている。「冷めてもおいしい」をコンセプトに、トマト風味のライスと唐揚げがメインというのは当時のままだ。なぜ、世代を超えたロングセラーを実現できているのか。その秘密を聞いた。


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 チキン弁当は、発売当時の価格が200円で、同時期に販売されていた幕の内弁当(150円)と比べると高価だった。製造販売元のJR東日本クロスステーションフーズカンパニー(東京都渋谷区)商品開発チームの池田大輔さんは「発売当時は比較的高価な弁当として人気を集め、旅の楽しみとなる存在だった」と語る。


 現在は、トマト風味ライス、鶏唐揚げを主軸に、スクランブルエッグ、ドライトマトオイル漬け、グリーンピース、サラダ、スモークチーズで構成されており、発売当初から一部の食材はリニューアルしているが、基本的な構成は変わっていない。


●2023年度は45万食を達成


 ここ数年、販売数は順調に推移している。2023年度の年間販売数は45万食に達し、10年前と比較すると3倍、コロナ禍前と比較しても2.5倍の成長を遂げた。「販路を拡大したことで販売数が伸びた」と、弁当ブランド戦略チームの湯原博之さんは語る。


 従来の駅弁販売店に加え、同社が運営する駅構内のコンビニエンスストア「ニューデイズ」でも取り扱いを開始したほか、2023年4月に吸収合併した日本ばし大増のブランド力を生かし、百貨店での販売も強化した。販路の拡大にともないチキン弁当の製造拠点も統合、集約し、大規模な改修で最新設備を整えて製造している。


 チキン弁当が60年間愛され続けている要因として、「冷めてもおいしい」というコンセプトのもとメニューを大きく変えていないことが挙げられる。加えて、当時は高価な部類だった価格も、現在は900円と比較的手頃な設定となっている点も見逃せない。


 「当社が運営する東京駅の『駅弁屋 祭』で販売する駅弁の平均価格は1300円だが、チキン弁当は900円で提供し続けている」(湯原さん)


 価格と品質を維持するため、同社はさまざまな工夫を重ねている。食材や原材料の値上がりに対応するため、調達先の見直しや配合の調整を行うなど、伝統の味を守りながら価格据え置きを実現している。


●約150種類の駅弁の中で2位の人気


 また、世代を超えて支持されているのも特徴だ。湯原さんは「年配層にとっては懐かしい味として、若年層にはレトロ感のあるパッケージが受けている」と説明する。駅弁屋 祭では、約150種類の駅弁の中で2位の人気を誇るという。


 一方で、チキン弁当が今後もロングセラー商品として生き残っていくためには、「次の世代に購入してもらうことが最大の課題」と湯原さんは指摘する。


 同社は、若年層を含む新たなファン層の開拓を目的として、定期的に企画商品の販売も実施している。池田さんは「定番品は変わらないことを守りつつ、企画商品を併売することで顧客の声を反映させている」と説明する。過去には、香辛料を使用したスパイシー唐揚げや、レトルトカレーメーカーとのコラボレーション商品などを期間や数量を限定して販売した。


 通常のチキン弁当だけでなく、定期的に“変化球”商品を加えることで固定客を飽きさせず、かつ新規のファン層の開拓に取り組んでいる。


 2024年7月には駅弁屋 祭のSNSアカウントを開設し、60周年を記念したキャンペーンを10月1日からスタートした。フォロワー数は半月ほどで9000を超え、1万に届きそうな勢いだ。


 今回の周年でも企画商品を併売している。チキン弁当の記念バージョンとなる「チキン弁当デラックス」(1380円)だ。東京ステーションホテルの総料理長監修による同商品は、加熱式容器を採用し、より豪華な内容とした。同社によると、通常のチキン弁当と顧客を奪い合う懸念もあったが、相乗効果で両商品とも売り上げを伸ばしているという。


●「冷凍駅弁」も開始


 増加するインバウンド需要への対応も始まった。駅弁を日本の文化としてアピールするため、商品パッケージにQRコードを付け、読み込むと英語・中国語・韓国語でお品書き情報が閲覧できる仕組みだ。現段階では、新商品やチキン弁当デラックスなどの期間限定商品を主な対象としている。


 また、9月には、冷凍技術を生かしてECサイト「冷凍駅弁 駅弁屋 祭」を立ち上げた。湯原さんは「駅弁の楽しさをより多くの人に知ってもらえるよう、このECサイトを盛り上げていきたい」と意気込む。チキン弁当も冷凍駅弁化しており、同ショップで販売している。


 60年の歴史を持つチキン弁当は、伝統の味を守りつつ、期間限定メニューの展開や若年層・インバウンド客向けの施策など、新たな取り組みを続けている。旅のお供の名物弁当として、しばらくは人気が続きそうだ。


(カワブチカズキ)



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  • これ、天皇陛下のお気に入りで有名では?巡幸に行かれる東京駅ご利用の際に、必ずお買い上げとか。
    • イイネ!9
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