自作PCアドバイザーのモリケン氏が10月9日、通運会館(東京都千代田区)で「自作PCユーザーミーティング」を開催した。本イベントは自作PCユーザーの交流を目的として開催され、参加者は52人となった。
この記事では、本イベントの模様をお伝えする。
●ユーザー同士が“話せる”イベントに
秋葉原では、PC/パーツメーカー主催の自作PCイベントは数多く開催される。しかし、基本的に特定の登壇者が“一方的に”話すパターンが多いため、イベントに集まった人同士の新しいコミュニケーションは生まれづらい状況となっていた。
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そこで本イベントは、ユーザー同士が交流することに主眼を置いている。自作PCについて語り合うことで、知識のレベルアップを図ろうという狙いもある。
加えて、普段触ることのできない高額なPCパーツを実際に手に取る機会も設け、今後パーツを購入する際の選択肢を広げることも狙いの1つという。
●7つのグループに分かれてディスカッション
参加者は7つのグループに分かれて、まずグループディスカッションに取り組んだ。
最初は自己紹介を行う……のだが、何を話せばいいか分からない人もいることを想定して、話すことのテンプレートも用意されていた。その後、自分がPCショップの店員になったつもりで自作PCの構成と見積もりを提案する。
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「何のため?」と思うかもしれないが、実はインテルが監修している認定プログラム「インテルPCマイスター講座」の中級以上の試験で行われるグループディスカッションを想定した取り組みだ。
お題その1:高校入学前の自作
グループディスカッションは、仮想ユーザーの具体的な要望を聞いた上で、その条件に合致するPCの構成を考える形で進められた。1人目の仮想ユーザーは、以下のような感じだ。
メーカー製PCを使っていた中学生のAさんは、高校入学を前に“おねだり”をしていたPCをクリスマスプレゼントとして買ってもらえることになりました。AさんはせっかくなのでPCを自作をしてみようと考えています。予算は約20万円で、費用は親に出してもらう予定です。 提案は20万円を超えても構いませんが、その場合は親を説得する材料を含めて構成を考えてください。なお、ディスプレイ/キーボード/マウスはAさんの手持ちを流用するものとします。
構成を考える上でのルールは、特に指定のない限りは国内で新品で買えるものとされた。中古品やジャンク品の利用、「AliExpress」などの海外ECサイトからの取り寄せは禁止だ。
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参加者は「このお題のPCを何に使いたいのか?」を想像をしながらディスカッションを進めた。
一応「20万円」という予算の制限があるため、組み立てるPCの方向性や、どのパーツに重きを置くのか(予算を多く割くのか)はグループ内でも見解は分かれがちだった。まさに“十人十色”である。
構成が決まったら、グループごとに代表者がその説明を行う。その際に「どのパーツから決めたのか?」と質問が飛んだが、多くのグループは高額なCPUやグラフィックスカード(GPU)から選定したようだ。
しかし、中には「OSを選んでからグラフィックスカード」というグループもあった。このグループは用途を問わず価格が動かないものから先に選んでいくという発想でOSから選定したのだという。それを聞いた筆者は「なるほど」と思った。
お題その2:30代の男性VTuber希望者
続けて、以下のお題が出された。
30代男性のBさんは、VTuberの配信を見ていて「自分もVTuberやってみよう!」と思い立ちました。しかし、今のPCは10年ほど前に組んだ自作PCで、インターネットとYouTube動画の視聴くらいにしか使っていません。 Bさんは「とりあえずVTuberができるPCって、どれくらいだろう?」と思い、フラッとお店にやってきました。一応、今回もPCを自作するつもりはあるようです。
その1とは異なり、明確な予算は示されていない。そのせいか、「Bさんは散財したいのだ」と考えてハイエンド(≒高価な)パーツをありったけ詰め込むグループもあれば、30代男性が現実的に出せる予算を想定してパーツを選ぶグループもあった。VTuberをやってみたいという提案ということもあり、PCの主要パーツに加えてマイクやオーディオインタフェース、机までトータルで提案するグループも現れた。
本当に“百花繚乱(りょうらん)”といった感じだ。バラエティーに富む話題だったように思う。
このイベントには、配信機器メーカー「AVerMedia」の上田氏が参加していた。同氏は「現役VTuberアドバイザー」としてグループ発表とは別にお題に対する“模範解答”を披露していた。機器メーカーの“中の人”ということもあり、ノイズ(雑音)対策に重点を置いた構成で、「へぇー」と声を漏らす参加者も多かった。
●インテルPCマイスター認定講座と同じルールで行われた「クイズ大会」
グループディスカッションが終わると、次は自作PCに関する「クイズ大会」となる。実はこのクイズ大会もインテルPCマイスター認定講座の試験と同じルールで、分からないことは手持ちのスマホなどで調べてよいことになっている。
モリケン氏は「暗記することよりも、適切な情報を調べられるか(導き出せるか)どうかが重要だ」と語る。
気になるのは「どんな問題が出たの?」というところだが、それは下記を参照してほしい(解答時間は15分:誤字もあるが、そのままとしている)。
答えは以下の通りだ(括弧内をクリックすると表示される)。
・問1:(B)
・問2:(C)
・問3:(C)
・問4:(A)
・問5:(D)
・問6:(A)
・問7:(B)
・問8:(C)
・問9:(D)
・問10:(A)
・おまけ:(VIA EPIA-CN10000G)
先述の通り、調べながら解答しても構わない。ゆえに参加者は必要に応じて検索を駆使してたのだが、なんと全問正解者はいなかった。
特に引っかかっていたのが「問2」と「問6」だ。問2は発売日時の「10月25日0時=10月24日24時」という変換をし損ねてしまい、問6はPCI Express 5.0の最大データ転送速度の“単位”に引っかかるといった感じだ。
●各メーカーの協力を得て行われた「PCパーツに触ろう会」
クイズが終わると、「PCパーツを触ろう会」が行われた。その名の通り、各メーカーの最新パーツを実際に触れられるプログラムで、パーツを使ってPC(Windows)の起動とデバイスドライバの導入までを体験できる。
今回は「マザーボード」が主役で、日程の都合から「AMD 800シリーズ」チップセットを搭載する以下のマザーボードが用意された。
・ASRock X870 Riptide WiFi
・ASRock X870E Nova WiFi
・ASUS PRIME X870-P WIFI-CSM
・ASUS TUF GAMING X870-PLUS WIFI
・GIGABYTE X870E A ELITE WIFI7
・MSI MAG X870 TOMAHAWK WIFI
・BIOSTAR X870E VALKYRIE(日本未発売)
これらはモリケン氏がメーカーに声を掛けて借りたものだといい、他にもAMD、センチュリーマイクロ、サイズ、SilverStone、長尾製作所、湘南通商がパーツの貸し出しに協力していた。
マザーボードは各グループ1枚ずつ割り当てられる。じゃんけんで勝ったグループから好きなものを選べる仕組みで、最初のグループは日本未発売のBIOSTARを選んだ。
組み立ては、グループの中であまり自作経験の無い初心者の参加者が主体となり、それを上級者がサポートするスタイルで行われた。
自作PCの経験者にとって、ただ教えるだけであれば物足りないところだ。しかし、上級者でもニヤリとできる機会として、日本未発売のマザーボードの他、日本の一般家庭では確実にオーバースペックな2000W出力電源など「売ってはいるけれど、実物を見たり触れたりできる機会が限られるパーツ」がいくつも用意されていた。
最終的には、全てのグループがOSの起動まで確認できた。
SSDに入っているWindowsが無事起動したら、次はUSBフラッシュメモリ内に格納されたデバイスドライバをインストールしていく。Windowsがうまく起動しないグループもあったが、原因が判明し全グループが起動までたどり着くことができた。
●「トークセッション」で語られたこと
最後のプログラムは「トークセッション」だ。
初めに主催者のモリケン氏が「なぜ改造PCを始めたのか?」というストーリーを時系列で紹介した。なかなかに興味深いものだった。
トークセッションでは当日の挙手(飛び込み)枠も用意され、AVerMediaの上田氏がASRockの配信者向けマザーボード「LiveMixerシリーズ」への“愛”をアドリブで語っていた。
最後はGreyGhostCCC じーま氏が登壇し、PCケースの塗装について語った。筆者はPCケースに塗装することまで考えたことはなかったが、「素材によって向き不向きがある」といった話は大いに参考になった。
●最後は「じゃんけん大会」
最後のプログラムは、この手のイベントの定番ともいえる「じゃんけん大会」だ。
今回用意された景品は、イベントのために用意されたものからモリケン氏が“ため込んだ”秘蔵アイテムまで、いろいろなものが用意された。本当にたくさんあったので、時間内で全て贈呈できなかったため、余ったものは次回に持ち越すそうだ。
会場では、参加者が持ち込んだPCなどを展示するコーナーも設けられた。今となってはレアなものや懐かしいものも展示されていた。
●次回開催の予定は?
イベントは当初予定よりも1時間ほど遅れて午後6時過ぎに閉会となった。参加者へのアンケート結果を見る限り、おおむね好評だったようだ。
今回の参加者の中には、インテルPCマイスターの上級を取得した人の他、PCショップ店員、ライター、PC業界の関係者が混じっていた。一見すると「何それ怖い」と感じてしまうところだが、好きな自作PCについて語る時は、一様に同じ目線で話せていたようだった。
今回の参加費用は、全てモリケン氏持ちということで無料だったが、第2回は2025年2月ごろに「大人は有料、学生は無料」という形で開催を検討しているという。
特に今回は(盛り上がってしまったため)タイムスケジュールに課題こそあったが、次回もユーザー同士が自作PCについて語ることができるイベントに期待したい。
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