「iPad mini(A17 Pro)」レビュー:M1搭載iPad Pro並みの性能、スマホ感覚のサイズ感も魅力 難点はコスト?

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2024年10月22日 22:31  ITmedia Mobile

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突如発表されたiPad mini(A17 Pro)。デザインを刷新した前モデルをブラッシュアップし、Apple Intelligenceにも対応する

 iPhone 16シリーズの発表から約1カ月、突如Appleのラインアップに追加されたのが「iPad mini(A17 Pro)」だ。約3年ぶりに登場したiPad miniシリーズの新モデルという位置付けで、機種名からも分かるように、プロセッサにはA17 Proが採用されている。同チップを採用したiPhone 16 Pro/16 Pro Maxと同様、iPad mini(A17 Pro)も「Apple Intelligence」に対応する予定だ。この新モデルの発売に先立ち、実際にiPad miniを試用することができた。そのレビューをお届けしたい。


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●デザインは前モデルを完全踏襲、スマホに近い軽さで持ち運びやすい


 iPad miniは、2021年に発売された「iPad mini(第6世代)」でデザインを一新しており、ホームボタンを一新。iPad ProやiPad Airと同じ、全面がディスプレイのデザインを採用した。iPad mini(A17 Pro)でも、これは踏襲されている。サイズ感などに関しては、前モデルとほぼ同じで、重量などの細かなスペックも変わっていない。


 11型のiPad Proなどと比べると非常にコンパクトなサイズ感で、手の大きな人であれば、片手でぎゅっと握りながら持つことが可能。重量は試用したWi-Fi+Cellularモデルでも297gしかない。最近では、スマホも大型化が進んでおり、200gを超える機種が増えているためか、むしろiPad miniの方が軽く感じるほど。さすがにポケットには収まらないが、スマホ感覚で持ち運べるタブレットといえる。


 本体上部にはトップボタンと音量ボタンが配置されており、トップボタンは指紋センサーを兼ねている。こうした点は、3年前に登場した「iPad mini(第6世代)」から変わっていない。iPhoneやiPad ProでおなじみのFace IDに非対応なのは残念だが、手に持ってタブレットスタイルで使うことが多いiPad miniだと、画面を点灯させるのと同時に認証を行えるTouch IDの方が使い勝手はいい。


 底面にはUSB Type-Cのポートが搭載されている。見た目は先代と同じだが、転送速度は10Gbpsに向上しているため、写真や動画など、データサイズの大きなコンテンツを取り込みたいときには有利だ。この点は、プロセッサをiPhone 15 Proシリーズと同じA17 Proにそろえたメリット。A17 Proは、Proモデル用に「USB 3.2 Gen 2」のコントローラーを備えており、iPad miniでもそれを生かせたとみていいだろう。


 ただし、同じくA17 Proでサポートしている最大120HzのPro Motionには対応しておらず、ディスプレイのリフレッシュレートは60Hzのままだ。iPad miniのサイズになってくると、スクロール時のがたつきやや目につきやすくなる。筆者が120HzのiPhone 16 ProやiPad Pro(M4)を使っているためという側面はあるが、特にアプリ一覧を表示する際のアニメーションの動きは気になった。iPad Air(M2)もそうだが、iPadは画面サイズが大きいだけに、無印以上は120Hz対応を進めてほしい。


●A17 Proのパフォーマンスは? M1搭載のiPad Proにも匹敵


 A17 Proを採用したことで、パフォーマンスは上がっている。価格が安いためか、廉価版と思われがちなiPad miniだが、実は性能もiPad Airに匹敵する高さで、コストを重視した無印のiPadとは一線を画している。動作はスムーズで、Adobeの「Lightroom」のような比較的重めのアプリもそのまま動くのは性能が高いことのメリットだ。


 ベンチマークで測った性能は次の通り。ベンチマークアプリには「Geekbench 6」を使用した。まず、CPUはシングルコアのスコアが2844、マルチコアのスコアが6999を記録した。5月に掲載したiPad Pro(M4)のレビューと数値を比較してみると、本機はiPad miniながら、シングルコアのスコアではM1を搭載した11型iPad Pro(第3世代)を上回っていることが分かる。


 同じA17 Proを採用しているため、スコアはiPhone 15 Pro/15 Pro Maxと非常に近い。約1年前に掲載したiPhone 15 Pro Maxのレビューを見ると、シングルコアスコアが2953、マルチコアスコアが7393になっており、iPad mini(A17 Pro)と数値が近似している。ただし、マルチコアスコアについては400点弱の差分がある。


 iPhone 15 Pro Maxとの比較では、GPUスコアにより大きな違いが出た。iPad miniのGPUスコアは2万6045。これに対し、iPhone 15 Pro Maxは2万7251と高い数値を出していた。2機種の差は、GPUのコア数の違いに起因するとみられる。同じA17 Proでも、iPhone 15 Proシリーズ用のそれはGPUが6コアなのに対し、iPad mini(A17 Pro)のものは5コアと1コア少ない。ただし、筆者が想像していたよりも1コアの差が少ないのも事実。ゲームなどでもiPhone 15 Proシリーズとの大きな違いは出ないだろう。


 ちなみに、Geekbench 6の情報を見ると、iPad mini(A17 Pro)は8GBのメモリを搭載していることが分かる。前世代にあたるiPad mini(第6世代)は4GBと当時のiPhoneよりもメモリが少なかったが、本機では一気に2倍に増量された格好だ。恐らくこれは、Apple Intelligenceに対応するためとみられる。Apple Intelligenceは、最低要件のプロセッサがA17 Proになっており、快適に動かすため、メモリも多く必要とされる。


 これを満たすiPhone 15 Proシリーズはメモリが8GBなのに対し、Apple Intelligenceに非対応となった無印のiPhone 15/15 Plusはメモリが6GBと少ない。無印のiPhoneは、iPhone 16シリーズでApple Intelligenceに対応するため、メモリがProモデルと同じ8GBに増量されている。Apple自身は多くを語っていないが、iPad mini(A17 Pro)も、この条件に沿って8GBメモリを搭載することになったことがす推察できる。


 もっとも、現時点ではApple Intelligenceは利用ができない。レビューのために試用したiPad mini(A17 Pro)もOSのバージョンはiPadOS 18.0で、言語を英語、地域をアメリカに変えてもApple Intelligenceは現れなかった。さらに、日本語での提供は2025年になり、細かな時期も明かされていない。そのため、このスペックをフルに生かせるのはもう少し先になる。


 とはいえ、メモリ容量そのものの増加はアプリ起動時の快適さにもつながるため歓迎できる。Apple Intelligenceのための性能底上げが、他の場面でも効いてくるというわけだ。映像、画像の編集などにiPad mini(A17 Pro)を利用する人にとっては、特にうれしい改善といえる。


●Apple Pencil Proに対応、うれしい反面コストアップが難点か


 前世代とのもう1つの大きな違いは、利用可能なApple Pencilにある。iPad mini(A17 Pro)は、先に発売されたiPad Pro(M4)やiPad Air(M2)と同様、Apple Pencil Proに対応する。Apple Pencil(第2世代)やApple Pencil(第1世代)と互換性がない点には注意が必要。iPad mini(第6世代)やそれ以前のiPad miniから買い替える場合、それらとセットで使っていたApple Pencilは利用できなくなる。


 登場が数年おきになっているためか、iPad miniは第5世代、第6世代、A17 Proと1機種ごとに異なるApple Pencilを採用することになる。新機種が出るたびにiPad miniを購入していたユーザーは、それに合わせてApple Pencilの買い替えまで余儀なくされてしまう。iPad miniは、コストパフォーマンスの高さも売りなだけに、この点は少々残念だ。


 一方でApple PencilがApple Pencil Proになったことで、機能性が増していることは間違いない。Apple Pencil Proは、ハプティックフィードバックを採用しており、ダブルタップでツールを切り替えたときに軽い振動がある。これによって、例えば筆記用のペンと消しゴムを切り替えたことが触覚として把握できる。


 筆者も発売以来、Apple Pencil Proを使っているが、文字を消そうと思ったのに線を増やしてしまったという失敗がなくなった。ペンや消しゴムのようなツールは比較的小さいため、切り替えに失敗していることを見逃しづらい。視覚として把握するより、触覚でフィードバックされた方がいいというわけだ。この機能をiPad mini(A17 Pro)で利用できるようになったのは、うれしいポイントの1つだ。


 また、Apple Pencil Proは感圧センサーも内蔵しており、ぎゅっと握ることで画面上部にツールパレットなどを表示する「スクイーズ」にも対応している。ツールを切り替える際に、ペン先を大きく動かさなくて済むため、この操作に慣れると筆記や描画に集中しやすくなる。筆者はあまり利用しないが、回転操作に対応したことで絵を描くときに使える表現方法が増えたのも評価できる。


 一連の機能はiPad Pro(M4)やiPad Air(M2)でも利用できるが、iPad mini(A17 Pro)ならではだと感じたのが、本体を片手で握りながら筆記ができるところ。しかも軽さが相まって、長時間でもあまり苦にならない。これがiPad ProやiPad Airだと、手に固定するためのアクセサリーが必要になる。iPad mini(A17 Pro)なら、メモ帳や小さ目のノート感覚でApple Pencil Proを利用でき、活躍の機会が広がる。


 パフォーマンスが上がり、Apple Pencil Proに対応した一方で、iPad mini(A17 Pro)の価格は最安のWi-Fiモデル、128GB版が7万8800円(税込み、以下同)からとなっており、直前まで8万4800円が最安だったiPad mini(第6世代)より値下げされている。しかもiPad mini(第6世代)の最小構成はストレージが64GBしかない。最小構成同士の比較だと、値下げされた上にストレージが倍増しているというわけだ。これは、とても良心的だ。


 もっとも、iPad mini(第6世代)は為替レートの変動が激しい時期に販売されていたこともあり、たびたび価格が改定されていた。8万4800円に値上げされたのは2024年5月のこと。それ以前はiPad Pro(A17 Pro)と同じ7万8800円だった。それでも、性能が全体的に底上げされており、ストレージも倍増してこの価格というのはお得感がある。コンパクトでコストパフォーマンスに優れたタブレットが欲しい人には、おすすめできる1台に仕上がっているといえそうだ。


(製品協力:アップルジャパン)



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