【ドラフト2024】今年もBCリーグ選手は大量指名されるのか 最注目の有力候補5人

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2024年10月23日 07:30  webスポルティーバ

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 プロ野球ドラフト会議が間もなく開催される。昨年は独立リーグ出身選手の指名が史上最多の23人。NPBを目指す選択肢として、独立リーグが知名度を得てきた感がある。

 今年9月にはルートインBCリーグ選抜と巨人三軍戦、西武三軍戦、ソフトバンク三軍戦と計6試合が組まれ、NPB各球団の編成が集まった。そこでも注目された、BCリーグの有力候補を紹介していく。

【注目度No.1の若手捕手】

■町田隼乙(まちだ・はやと/捕手/光明相模原→BC埼玉武蔵ヒートベアーズ/21歳/186cm・88kg/右投・右打)

 2024年のBCリーグで最も注目されたのは、町田で間違いない。「捕手の有力候補が少ない」とも言われる今年、複数の球団が熱視線を送る。

 光明相模原高校からBC埼玉に入団した2022年、高卒ルーキーにして58試合中57試合に出場。だが、打力もキャッチングも送球も課題だらけで、「自信があった」はずの肩は独立リーグで通用しなかった。

 2年目の2023年には、正捕手として65試合すべてに出場。本塁打8本を含む長打でアピールしたが「送球が課題」と言われ続けた。肩は強いが、高身長の影響もありフォームが大きくなってしまう。試行錯誤が続いた。

 この間、BC埼玉からは野手が続けてドラフトで指名された。2022年には樋口正修(中日)、2023年には町田の高校からのチームメイトだった金子功児(西武)。当然悔しさは大きく、NPBは「必ず行ってみせる」と誓う場所になった。

 一時はコンバートを打診され苦悩するも、昨年の宮崎フェニックスリーグで、捕手出身の山下和彦監督(大分B-リングス)につきっきりで指導を受けることができた。また、2年連続で阪神の二軍の春季キャンプに参加。ブルペン捕手のアルバイトとしてNPB投手の球を受け、時には捕手の練習にも加わった。

「このふたつが転機でした。スローイングで指導されたのは"力を抜くこと"と、"手だけでなく下半身を使って投げる"ということ。成果はすぐに出ました。以前は何も考えずに投げていたのが、自分の形として固まってきた」

 今季、町田のスローイングは飛躍的に改善した。低い軌道で強い送球。二塁への送球タイムも1.8秒台をコンスタントに出せるようになった。

 NPB投手の球を受け続けたことは、打撃にもプラスになった。

「『これならBCの投手の球は打てるはず』という自信になりました」

 今年はドアスイングのクセを改善。本塁打こそ5本だが、打率は.265から.323に上がり、「打席で余裕が出てきた」と精神面の成長も窺わせる。故障離脱もあったが、9月20日のBC選抜×西武戦では2本の二塁打と盗塁阻止を見せて、勝負強さをアピール。ドラフト候補筆頭は変わらないだろう。

 BC埼玉の西崎幸広監督(元日本ハム、西武)らは、今季キャプテンに指名された。求められたのは「積極的に前に出る」こと。

「今年は『町田のチーム』と言ってもらえた。目立てたかなと思います」

 培ってきた自信が表情にも見えた。

【「夢を諦めない」総合力が抜群の捕手】

■大友宗(おおとも・そう/捕手/東海大学→日本通運→BC茨城アストロプラネッツ/25歳/181cm・ 88kg/右投・右打)

 捕手が続くが、総合力なら独立リーグ全体を見ても大友宗(BC茨城)に並ぶ者はない。東海大学時代から強肩・強打の捕手として注目され、卒業後は日本通運へ。木南了という社会人日本代表の捕手の陰には隠れたが、技術が2年間で培われた。

 自ら「崖っぷち」と、背水の覚悟で独立リーグへ。25歳の今年、あと1年と決めた挑戦だ。

 BC茨城では筋肉量を増やすなど肉体面を強化。4月6日のBC埼玉との開幕戦で本塁打を放ち、4月20日の栃木戦では3打席連発で注目を浴びる。シーズン12本塁打はリーグ2位だ。

 守備面では、二塁送球に関しては盗塁阻止そのものよりもタイムを上げることを重視した。視野が広く、投手陣の信頼が厚い。コミュニケーション力や声も武器だ。守備時もベンチでも、常に大きな声でチームを鼓舞する。

「社会人時代、試合に出られない時も声は大事にしてきました。立場が変わってもそれを継続できることが、ひとつの武器と思っています」

 選抜チームの円陣でも、試合前の空気を一気に引き締める声が響いていた。ソフトバンク戦の最終日には、大友らしいスイングでフェンス直撃二塁打を放っている。

 登場曲として『夢をあきらめないで』(岡村孝子)を選んだ大友。帽子のつばの裏にも、曲名と同じ「夢をあきらめないで」の文字がある。諦めなかった男が、今年夢を掴むのか。

【リーグ二冠の先発左腕】

■安里海(あさと・うみ/投手/帝京大学→日立製作所→BC神奈川フューチャードリームス/25歳/179cm・84kg/左投・左打)

 最速151kmの変則左腕。最多勝と最多奪三振の二冠に輝いた安里は、BCリーグ随一の先発投手だ。今年、社会人の名門・日立製作所から独立リーグへの挑戦とあって、入団時から話題になったひとりだ。

「社会人では短期間の勝負だったので、リーグ戦で先発ローテーションを守るのは初めての経験でした。抑えても次、ひとつ負けても次がある。そういうメンタルの持ち方になりました。体力的にはしんどいときもありましたね」

 BC神奈川では、投手出身の川村丈夫監督(元DeNA)をはじめ、高木勇人コーチ(元巨人、西武)ら元NPBの指導者が名を連ねている。昨年にDeNAから契約を結ばないことを通知され、12球団合同トライアウトを経て入団した22歳の加藤大らもいた。

「加藤はずっとキャッチボール相手でした。一球の出力の出し方など勉強になりましたし、BC神奈川は自分にとってはとてもいい環境でした」

 シーズンでは20試合に登板し、11勝4敗奪三振113で投手二冠。チームをリーグ優勝へ導いた立役者だ。9月30日にはソフトバンク三軍戦で先発。最後のアピールだったが、4回を6失点(自責点5)に終わった。

 平均最速は140キロ台前半。球速と年齢はネックと言えるが、BCリーグで残した実績と実力がどんな評価を受けるか注目される。

【最速155キロのパワーピッチャー】

■石川颯(いしかわ・はやて/投手/千葉商科大学→BC福島レッドホープス/24歳/182cm・81kg/右投・左打)

 今年、BC選抜×NPB戦で150キロを超す速球を投げたパワーピッチャーは少なかったが、そのなかで目立ったのが石川だ。BCリーグ2年目。球速が150キロを超えたのはBC福島に入ってからで、今や最速は155キロを誇る。

「1年目は独立リーグの仕組みもわからず、体づくりも曖昧なままでした。2年目はその二の舞になりたくなかったので、体重を増量しました。そうしたら球速のアベレージが2、3キロ上がりましたね」

 シーズン前半は、勝っている試合でも負けている試合でも、点差があっても登板するということが続いた。その頃はストレートとスライダー、フォークだけの投球で、それは岩村明憲監督(元ヤクルトほか)の方針だった。

「試合でコンスタントに投げていたのは、それだけアピールの場を作ってくださったのだと思います。球種を限定していたのは、去年はコントロールがばらついている部分があったので、監督が『まず真っ直ぐ、スライダー、フォークの3つを極めろ』と。それができてから他の球種を、ということでした。今でも球種は多くありません。真っ直ぐ、スライダー、フォーク、カットボールくらいですね」

 それでもリーグ戦では"ねじ伏せる"ことができる球威を持つ。防御率は1年目の5.68から、今年はチームトップの2.61と大幅に改善した。

「岩村監督、若松駿太コーチには力になっていただきました。特に監督には、グローブの出し方から細かく教えていただいて、それを取り入れました。独立では2年の勝負。もう2年目なので死ぬ気でやってきました」

 ソフトバンク三軍戦では149キロを計測。ヒットを打たれたが三振も奪った。一番の持ち味であるストレートは威力があり、平均球速も高い。それがあるからこそ、落ちる変化球も効果的。コントロールはまだアバウトなところがあるが、いつでもどこでも投げられるタフさもある。2勝5敗5セーブという数字以上に魅力を見せた。

【今季飛躍の高卒3年目スラッガー】

■清水武蔵(しみず・むさし/内野手/国士館高校→BC栃木ゴールデンブレーブス/21歳/175cm・75kg/右投・右打)

 体は小さいほうだが、パンチ力は目を見張るものがある。今季は捕手登録から内野手登録に。登録名も「武蔵」に変え、別人のような飛躍を見せた伸び盛りの21歳だ。

 BC選抜×ソフトバンク三軍戦と同日程で行なわれた、独立リーググランドチャンピオンシップには信濃・栃木の2球団が参加していた。その初戦、9月28日のHFL石狩戦で、右へ左へ3打席連続本塁打。翌日の準決勝KAL北九州戦でも3安打2打点と、勝負強さを見せつけた。

 鹿児島から国士館高校へ進んだ右の逸材。「とにかくNPBに行きたい」と、高卒でBC栃木に入団して3年目だ。今季は主にショートで出場したが、一塁、三塁も守れる。

 昨季は打率.239で1本塁打だったが、今季はコンスタントに打ち続け、打率.355(リーグ3位)本塁打9本、OPS.966。内角のボールをさばく技術が上がり、持ち味の逆方向のバッティングでも柵越えを見せた。まだ21歳だけに、今後の伸びしろも十分だ。

 BC選抜戦では活躍を見ることはできなかったが、シーズン中の巨人やソフトバンクの三軍戦では本塁打も放っている。フェニックスリーグの広島戦でも3安打と、印象的なアピールをしたが指名を勝ちとれるか。

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