表情から、人の気持ちまでわかる子に!「顔認識能力」を伸ばす子育てのコツ【脳科学者が解説】

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2024年10月23日 20:51  All About

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【脳科学者が解説】人間は非常に高い「顔認識能力」を持っています。数えきれないほどの人の顔を見分け、表情から感情まで汲み取る力は、社会性の高さにも関連するものです。赤ちゃんの顔認識能力を伸ばすために、親ができること、避けるべきことを解説します。
皆さんは、何人の顔を見分けられますか? 数えきれないほどの「顔」を識別できるでしょう。当然のように思っているかもしれませんが、実は私たち人間の「顔を識別する能力」は非常に優れているのです。

そしてこの能力は、たゆまぬ学習で成立しています。生まれてから成長する中で、顔認識の力をどう伸ばしていくのかを解説します。

輪郭だけで「人間の顔」を判別する赤ちゃんの力

「人間の顔」とそれ以外は、生まれたばかりの赤ちゃんでも、ある程度は見分けることができるようです。心理学者のファンツが、生後46時間から6カ月の乳児を対象に行った実験があります。

この実験で赤ちゃんにたくさんの図形を見せたところ、「規則正しい幾何学模様」に興味を示す傾向がある一方、特に規則正しさのない「人間の顔」にも興味を示すことが分かりました。多くの図形の中から「人間の顔」を判別する能力は、生まれつき備わっているのです。

人間はとても未熟な状態で生まれるので、赤ちゃんのうちは自分一人では生きていけません。「人間の顔」を素早く見つけて、顔の筋肉を動かして微笑みのような表情をしたり、声を出したり、体を動かしたりして、助けを求めます。

赤ちゃんの反応を見て、親は「親である自分を求めている」と感じますが、この時期の赤ちゃんが求めているのは、実際のところは「自分を助けてくれる人間」です。親以外の人間であっても構わないので、この段階では、赤ちゃんは「輪郭」だけで「人間の顔」だと判断しているようです。

物をすばやく識別するためには、まずは輪郭をつかみ、次に全体を把握するのが重要だからでしょう。このような物の見方を、一般に「枠組み効果」といいます。

「顔認識」の力は、顔のパーツや動きを見ながら伸びる

しかし赤ちゃんが成長していくにつれ、「助けてくれる人間なら誰でもいい」というわけにはいかなくなります。人間の社会で生きていく上では、自分の「好きな人」と「嫌いな人」を見分けなくてはなりません。より正確な「顔認識」の学習がスタートします。

この段階では、特に、目、鼻、口の配置に注目し、個々人の顔の微妙な違いを見分ける力が必要になります。輪郭だけで認識する「枠組み効果」を超え、枠の中のさらに細かい違いに注目するために、必要になるのが「動き」の要素です。

例えばカエルは、静止した物体は何も見えません。目の前の壁にハエがじっと止まっていても気が付かないのです。しかしハエが飛び立つ瞬間の動きには即座に気付き、瞬時に舌で捕まえてしまいます。カエルの視覚は動くものを捉えることに特化しているのでしょう。

視覚が十分に発達していない赤ちゃんの場合も、これに似ています。全体がボヤッとしか見えていなくても、素早く動くものにはよく反応します。

顔学習から身につく「感情を汲み取る力」……将来的な社会性の高さにも

赤ちゃんに「いないいないばあ」をすると、とても喜びますね。大げさなくらいの動きで表情を作って見つめてあげると、赤ちゃんは「顔」にますます興味を示し、人間の顔を見るのが好きになります。

親が赤ちゃんを見つめて、自分の表情をたくさん見せることも大切ですし、毎日いろいろな人の顔を見比べる機会が増えれば増えるほど、赤ちゃんの「顔学習」は進みます。

人によって目・鼻・口の形や配置が微妙に違うことや、同じ人でも感情によって違って見えることを学習していきます。成熟するにつれ、相手の顔を見て誰なのかを識別できるだけではなく、その人がどのような気持ちでいるのかまで、汲み取れるようになっていきます。

多くの人に、表情豊かに顔を見つめながら語りかけて育てられた赤ちゃんほど、たくさんの「顔学習」の機会を得られるということです。顔学習の多さが、将来的に高い社会性を身につけることにもつながると考えられています。

電車や公園などでは、ベビーカーに乗せた幼いお子さんにタブレットを見せながら、ご自身もスマホ画面を見ている親御さんの姿を見かけることもあります。忙しい子育ての合間の息抜きかもしれませんが、顔学習の大切な時期であることを考えると、もったいないなと筆者は感じます。

表情豊かに、お子さんの顔を見て話しかけるだけで、伸ばせる力があるのです。顔を見て育てることの大切さを、ぜひ知っていただけたらと思います。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))

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