シチュエーション別営業資料作成のポイント サービス説明、提案、報告…一口で「営業資料」とまとめてはいけない理由

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2024年10月23日 21:10  ログミー

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『Sales is』著者・セレブリックス今井晶也氏がゲストに登場

豊間根青地氏(以下、豊間根):どうも! シリョサクの豊間根です。今日はゲストに今井さんをお呼びしています。よろしくお願いいたします。

今井晶也氏(以下、今井):よろしくお願いします。

豊間根:今日のテーマは「営業資料の解像度」です。営業資料の「こうしたほうがいいよね」とか、逆に「こうしちゃいけないよね」という話やノウハウは、世に溢れていると思います。営業資料を一口に語るだけだと、解像度が粗すぎると思っているんですよ。

今井:そうですね。

豊間根:営業資料って言っても使うシーンとか目的とか相手によって、あるべき状態はぜんぜん違うと思っているので。今日は営業のプロである今井さんと、資料のプロである豊間根が、いくつかの切り口で営業資料の解像度を深掘っていきます。

ふだん営業に苦しんでいるみなさんが、営業資料の全体感を把握し、自分の作っている資料がどういう位置付けで、何に気を付けなきゃいけないのかを学んでいただける動画にしたいなと思っております。ではあらためて今井さん、簡単に自己紹介をお願いします。

今井:みなさん、こんにちは。株式会社セレブリックスの今井晶也と言います。どうぞよろしくお願いします。セレブリックスではCMOというかたちでマーケティングの責任者(をしています)。

セレブリックスを1人でも多くの方に知っていただいて、営業で困った時にご相談をいただける、そんなコミュニケーションを取っています。あとはセレブリックス営業総合研究所という法人営業の研究と発信を行っている機関がございまして。こちらの所長とセールスエバンジェリストというかたちで、営業にまつわる情報の発信をさせていただいております。その流れの中で本を3冊ぐらい出させていただいています。

その1つが『Sales is 科学的に成果をコントロールする営業術』でして、自分で言うのも何ですけど、7.5万部ぐらいで、営業本の中ではけっこう売れております。

あとは最新作として『The Intelligent Sales AIを活用した最速・最良でクリエイティブな営業プロセス』。これからの時代の営業は賢くスマートに、というテーマで執筆させていただいていますので、ぜひご覧いただければと思います。

一口に「営業資料」と言っても、目的が違う

豊間根:ということで本編に入っていくんですけど、まず1個目が「〇〇資料」ですね。営業資料という言葉の中にサービス説明資料とか、会社紹介資料とか、提案資料、報告資料みたいなものが、しれっと混ざっている印象があるんですよね。いかがですか?

今井:混ざっちゃっていますし、「営業資料とは、こう作るべきだ」と、たまに「X」とかで上がっている投稿を見るたびに(心が)ズキズキします。

豊間根:(笑)。ちなみに説明と提案でいうと、どっちが多いですか?

今井:なんか、それが混ざって入っちゃっていることが多い気がしますね。例えば僕らの場合はサービス説明資料とか、初回訪問資料(と呼びます)。広告業界だと自社の強みとかを紹介する資料のことを、クレデンシャル資料って呼んだりもするんです。

豊間根:へー! 

今井:呼び方はいろいろ違うんですけど。いずれにしても初回のオープニングや、相手に興味を持っていただくための導入資料と、その企業さまに合わせた解決策をする企画資料や提案資料というのは別。これは大別された2つの営業がこしらえる資料なんだろうなと。ここの営業資料のまわりには製品パンフレットとか、製品カタログがあったりとか。

あとは提案資料の付帯資料の中に事例資料とか、シミュレーション資料。僕が最近よく使うのはディスカッション資料です。提案書まではガッツリ作らないけど、1次訪問とか2次訪問の間の1.5次訪問みたいなかたちで「御社の課題の方向性って、この方向で合っていますか?」というのを議論し合う、ペラ1枚の資料を作る。それをまとめたものを、提案資料の中に埋め込んでいく感じです。

豊間根:なるほど。ここでも目的がぜんぜん違いますもんね。

報告と提案がセットになっていて混乱しがち

今井:違いますね。豊間根さんは、他に登場する資料のイメージは何かありますか。

豊間根:今の話に上がってこなかったところで言うと、定期的に作る資料がありますよね。例えば僕は元サントリーですけど、ある小売店さんとかに、ある商品を卸していく。それで売れ行きがどうかを報告していくとか、広告代理店さんとかが毎月何百万円を投下して、CPAがどうでみたいな、投下金額の推移をグラフ化していく。

これを週次とか、月次とか、クォーター次でやる時の資料を、営業資料と呼んでいることもある気がしますね。

今井:いわゆる報告資料とか、レポート資料に該当するところを、営業パーソンが行っている場合には営業資料の1つであると。

豊間根:そうですね。そういうのって、定例が前提にあった上で、提案をプラスオンしていくイメージになったりするので。それを提案資料と呼んでいなくて、あくまで定例会議資料と呼んでいるんだけど、レポーティングでも提案でもあるみたいな。

今井:後半のほうで、「この問題を我々がどう解決していくか」という提案がセットになっているイメージですよね。

豊間根:そうですね。だからこそ、より「今のパートはどのフェーズなんだっけ?」と、作り手が混乱しがちなのかなという印象はありますね。

一番重要な切り分けのポイント

今井:あとはもう少し広い視野で見ると、ピッチとかマスプレゼンテーションとかセミナーで行うプレゼンテーション。こういったピッチ資料もまた、作り方や要素がずいぶん違ってくるのかなと思います。

例えば多くの方々に対して共感や、その分野での総統リーダーシップというか、第一想起を獲得するためのプレゼンテーションを行うのであれば、言葉で紡いでいったり、人を見てもらう要素が多くなると思うんですよね。なので資料の情報量は少なめ。

一方で営業資料とか、中でも初回訪問資料や提案資料は、根拠や事例などの一定の情報量が必要。報告資料になると報告義務が発生しているので、ここは割愛をしてはダメで、内容を細かく丁寧に入れたほうがいい。なので同じ資料でも、情報量の入り方がぜんぜん違うんだという前提を理解しておいたほうがいいですよね。

豊間根:間違いないですね。やっぱり常に、このプレゼンないし資料におけるゴールがどこで、そのために必要なインフォメーションセットが何なのかを明確にすることが大事ですよね。ここが本当に大前提で一番重要かなと思うので、最初に持ってきましたが、基本的に説明なのか、初回訪問なのか、提案・二次訪問なのかが一番重要な切り分けですかね。

今井:そうですね。(重要な)切り分けだと思います。

営業資料においてそれほど重要ではない「業界分け」

豊間根:2つ目の業界ですね。ここは今井さんの見解をお聞きしたいと思うんですけど。よく想像するのはコンサルというか、けっこういろんな業界・領域において全体的に改善しますよみたいなパターン。あとはSaaSみたいなITツール的な商材、もしくはそれこそサントリーみたいな食品とか消費財。

またはセミナーを売るようなパターンが、よく営業資料の題材として挙げられがちだと思って挙げてみました。今井さんから見て、こういう業界がよく出てきがちだなというのはありますか?

今井:業界分けは重要ではないですね。

豊間根:そうなんですか!?

今井:重要ではないですが、顧客からするとコンサルに求めている期待感とかはあると思うんですよ。なのでコンサルが作る資料が、あまりにもフレンドリーやカジュアルライクだと、たぶんイメージとのギャップが生まれてしまいますよね。恋愛ではないので、営業活動においてギャップはあまりいらないわけで、期待どおりであってほしい。

なので、そういう意味ではコンサルらしいとか、食品・消費財らしい提案書があるかもしれませんね。でもどちらかというと、既存顧客に対する営業なのか、それとも新規営業なのか、即決を促せる営業なのか、それとも提案型営業なのかで構成が変わってくる。こちらのほうが重要で、コンサルティング営業で即決営業はないから、企画提案型の資料が必要になっているという文脈のほうが、重要かなと思いますね。

豊間根:なるほど。では、今井さんは営業のコンサルティングを支援をされる時に、「この業界だからこう」みたいな考え方は、あまりされないんですね。

今井:ゼロではないです。例えば食品業界。食品工場に営業をする時に、紙をホチキスで留めるのって、異物混入の観点で禁止じゃないですか。

なので業界ならではのセオリーやしきたりはすごく気にしますが、構成という観点でいくと食品だからこう、教育だからこう、と構成が大きく変わることはないんです。食品だとやはり安全衛生面の観点で「こういう要素を入れたほうがいいよね」というエッセンスやアレンジメントは違います。

ですが、構成はどちらかというと初回訪問なのか既存なのか、先ほどお話しした内容のほうが重要かなという気がしますね。

乗り換えなのか継続購買なのか、顧客の状態に着目

豊間根:そうなんですね。ちょっと意外でした。そのお話にまさにつながるところかなと思いますが、顧客の状態ですね。新規なのか、新規でもリプレイスなのか、リピートなのか、クロスセルなのか、大きく4つあるのかなと思っています。それぞれで気をつけるポイントはありますか?

今井:そうですね。このキーワードを営業側の視点で考えるのではなくて、お客さま側の視点でまず考えていただきたいですね。お客さまがその商品を初めて買うという購買体験なのか。それとも別の会社の商品を使っていたけれども、違う会社の商品を導入したいと思っているのか。

豊間根:乗り換えということですね。

今井:乗り換えです。まずこれが大きく違いますよね。もう1つは継続購買。なので、今買っている会社から追加でまた買う。このような購買側が置かれるシチュエーションによって、営業資料に必要な粒度や情報はやっぱり違っています。まず、リピートの追加購買であれば特段大きな資料とかは、いらないんですよね。

豊間根:だいたい知っていますもんね。

今井:はい。それで、その企業と関係性はできているけれども、当社の新商品を売るということであれば、その企業が置かれている状態。リピート営業なので、そこはしっかりわかっているわけですから。意外とわかっていないこともあるんですけど(笑)。そこを踏まえて、この新商品を使ってみていただきたい理由が構成要素として必要。

お客さまからすると、他社の製品は使っているけれども、御社の製品に変えるという修正購買行動の場合は、今使っているものよりも機能や強み、優位性や比較がどういうところなのかが気になりますし。変えた時にトラブルが起きないかどうかは非常に重要な要素になります。

そもそも初めて物を買うという観点であれば、別の動画でもお話をした、課題を明確にすることと意味づけ。なぜ今、なぜあなたにこの商品がフィットするのか。導入したほうがいいのかを、未来の理想の観点とひもづけた企画や提案をしてあげる。ここで、必要な構成要素や資料の分厚さがずいぶん変わってくると思いますね。

「お客さまがどう儲かるか」というストーリーが大事

豊間根:なるほど。ちなみにシリョサクって、この中で言うとほぼリプレイスはないんですよね。新規かリピート、もしくはクロスセルが多い。研修にしろ、コンサルティングにしろ、制作にしろ、けっこうシリョサクでやるか、そもそもやらないかみたいな感じのパターンが現状は多いんですが、やっぱり新規では意味づけが大事になってくる。

今井:そうですね。例えばそこの意味づけでいくと、営業職とかも、人が雇いにくい時代になっていたり、退職も増えていたりする。そうなると営業個人のパフォーマンスとか属人性に頼るのではなくて、トップセールスに依存しない再現性の高い営業組織を作る必要がある。

再現性の高い営業組織を作るために、一人ひとりの営業能力とかスキルを上げるのは重要だけれども、そこを標準化させるのってけっこう難しい。一番標準化させやすいのは、実は資料です。トップセールスの観点とかトップセールスの発言を資料に落とし込んで、みんなが展開できるようになれば、再現性の高い営業組織が作れる。

だから、「これから先、労働人口が減ったり、御社のような大きな会社でも人材の確保が難しくなる可能性を考えた時に、良い資料を作っておくのは重要ですね」みたいな意味づけをする感じですね。

豊間根:いや、それがアドリブで出てくるのが、さすがですね。

今井:でもベースはやっぱり、企業が何にお金を払っているのかを想像できるかどうかが重要ですよね。投資をして儲かるかどうかなんですよ。なので、僕らが資料を作成する支援をした時に、それを支援したことによって「お客さまがどう儲かるか」というストーリーに共感できるかどうかがポイントですよね。

豊間根:刺さりますねー。ありがとうございます。

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