キャンピングカーのベース車両として人気のクルマといえばトヨタ自動車「ハイエース」や日産自動車「キャラバン」などの商用バンだが、今後はステーションワゴン系(乗用車のミニバンを含む)の人気が上がっていく? その理由はエアコンにあり? キャンピングカービルダーに業界のトレンドを聞いてみた。
乗用車の高い安全性がニーズにマッチ
まず、キャンピングカーのトレンドに地域による違いはあるのだろうか。横浜でキャンピングカーの販売や修理などを手掛けるロッキー2の担当者はこう語る。
「道が狭くて混雑することから、コンパクトなクルマを希望されるお客様が多いです。要するに普段使いできて、なおかつ利便性の高いクルマですね。その結果として、ステーションワゴンがベースのクルマが求められているというところはあると思います」(以下、カッコ内はロッキー2担当者)
客層によって求めるキャンピングカーの在り方も違ってくる。ロッキー2の場合は50〜60代の子育てがひと段落した世代や30〜40代の比較的若い女性が購入するケースも少なくないそうだが、ここにも乗用系のクルマが人気になっている秘密がある。
「当店のような購入者層になると、やはり安全性が強く求められます。例えばステップワゴン(ホンダのミニバン)をベースにしたキャンピングカーの場合、前車追従走行(ACC)などが使えるホンダセンシングが搭載されていて、走行安全性能がすごく高いんです。商用車もブレーキアシストなどは付いていますが、やはり乗用車レベルの安全性能は魅力的ですね」
ルーフエアコンの登場で今後はステーションワゴン系の人気が上昇?
ステーションワゴン系のキャンピングカーには、エアコンを取り付けるのが難しいというデメリットがあった。
「近年はずっと猛暑が続いていることもあり、キャンピングカーにエアコンを希望されるお客様は圧倒的に多いです。でも、エアコンを取り付けるには室外機を設置しなければいけません。キャブコンであれば取り付けるところはいくらでもありますが、ステーションワゴン系の場合は取り付けることができませんでした」
しかし、近年登場した「ルーフエアコン」によって状況は変わりつつあるという。
ルーフエアコンは室内機と室外機が一体型になったタイプ。文字通り天井に取り付けるエアコンであるため、スペースを取らないところもメリットだ。
ロッキー2のステップワゴン MVはサブバッテリーとして200Ahのリチウムイオンバッテリーを搭載しているため、エンジン停止時でもエアコンを5〜6時間ほど使用できるという。
また、サブバッテリーチャージャー(走行昇圧充電システム)も搭載しているため、使用した電力は次の日に走行すれば急速充電できるという仕組みになっている。
ルーフエアコンの登場で今後、キャンピングカーのトレンドに変化はあるのだろうか。
「やっぱり、ステーションワゴン系くらいのサイズ感で、キャンピングカーだけではなく普段使いもできるクルマがトレンドになってくると思います。例えば大きいクルマにしてしまうと、普段使い用のクルマと合わせて2台持たないといけなかったりしますが、ステーションワゴン系なら普段使いも車中泊もできます」
商用バンにもステーションワゴン系に比べて圧倒的に広い室内空間というメリットがある。今後はユーザーがクルマに何を求めるかによって、よりシビアにベース車両が選択されていく時代になるかもしれない。
安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら(安藤康之)