南野拓実はモナコを全体4位に。チャンピオンズリーグ出場の日本人8人の活躍度を個別評価

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2024年10月24日 17:01  webスポルティーバ

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 チャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズ第3節。日本人選手で先発を飾ったのは南野拓実(モナコ)、旗手怜央、前田大然(ともにセルティック)、上田綺世(フェイエノールト)、荻原拓也(ディナモ・ザグレブ)の5人。交代出場は古橋亨梧(セルティック)、守田英正(スポルティング)、チェイス・アンリ(シュツットガルト)の3人で、ベンチ入りしたものの遠藤航(リバプール)は出番なしだった。

 得点者は2人。ツルヴェナ・ズヴェズダ(レッドスター・ベオグラード)とのホーム戦で2ゴールをマークした南野と、ベンフィカ戦で1ゴールをマークした上田だ。

 まず南野。ポジションは4−2−3−1の1トップ下で、相手ボールに転じると4−4−2の2トップとして最前線に立つ。マイボールに転じても中盤に下がらず、高い位置に留まることが多い。4−2−3−1の1トップ下といえば、タイプはMF色が強い選手とFW色が強い選手に2分されるが、これまでの南野はどちらかと言えばMF的だった。2シャドーの一角でプレーする現在の日本代表でもMF色のほうが強い。それがモナコではFW色のほうが勝っている。1トップ下と言うより1トップ脇。具体的にはパスを出すプレーより受けるプレーのほうが多い。

 加えて"嫌らしさ"も増している。神出鬼没。前半20分にマークした先制点のシーンがそうだった。オフサイド崩れ、相手の戻り遅れと言ってしまえばそれまでだが、最前線に居留まったポジショニングに、モナコでの南野の実像が見て取れる。試合を決定づける2点目も同様に高い位置を取っていた産物だった。アシストは1トップ、ブレール・エンボロ(スイス代表)で、それを脇で構えた南野が蹴り込む格好だった。

 南野は採点するなら10点満点で8。モナコは5−1で勝利を飾り、通算成績を2勝1分け(勝ち点7)として、ランキングを36チーム中4位に上げた。

 ベンフィカとアウェー戦を戦った上田も、南野に負けじと2ゴールを叩き出したが、2点目となるはずだったゴールはVARの結果、別の場所で反則があったため、無情にも取り消しになった。先制点となった上田の得点は左ウイング、イゴール・パイシャオン(U−23ブラジル代表)の折り返しを中央で合わせてもの。幻の得点となったプレーも、左からの折り返しをゴール前で詰めるという、似たような形だった。

【特筆すべき荻原拓也の活躍】

 国内リーグを含めると上田はこれで3戦連発だ。当たっていることは確かである。しかし、気になるのはプレー機会の少なさだ。日本代表でもそうだが、パス回しにはほとんど関与せず、ゴール前でひたすら獲物を待つ。おこぼれを狙う、よく言えば典型的な点取り屋タイプである。想起するのは1982年W杯の得点王パオロ・ロッシ(イタリア代表)だ。

 ただし故障で離脱中のエースストライカー、サンティアゴ・ヒメネス(メキシコ代表)のような本格派ストライカーではない。彼が戦列に戻った時、どれほど出場機会を得られるか。この日は後半30分までプレー。採点すれば7だった。

 活躍した選手をもうひとり挙げるならば、ディナモ・ザグレブの荻原になる。ザルツブルクとのアウェー戦に3−5−2の左ウイングバックとして後半33分までプレー。採点で7は出せる出来栄えだった。

 この選手は懐が深い。左利き半身の態勢から巻くような、カーブのかかったキックを、けれん味なくシュアに蹴ってくる。後半4分のシーンは、この日4本目に当たるクロスボールだった。ディナモ・ザグレブに先制点が生まれたのはそのふたつ先のプレー。アイスホッケーならダブルアシストがついていた可能性がある。

 荻原はこの試合で、もう1本、決定的な左足キックを蹴っている。後半21分のシーンだ。1トップ、サンドロ・クレノヴィッチ(U−23クロアチア代表)に蹴った縦パスが通ったかに見えた瞬間、ザルツブルクのGKアレクサンダー・シュラガー(オーストリア代表)がたまらずに止めてしまい、一発レッドに処されたのだ。なんといってもキックの精度が高かった。

 このディナモ・ザグレブの2−0の勝利と荻原の存在はかなり密接な関係にある。現地の音声では、実況アナウンサーが荻原を誤って日本代表と紹介していたが、現在、長友佑都が入っている枠は荻原に渡すべきだろう。

 悩ましいのはアタランタとアウェー戦を戦ったセルティックの3人だ。結果は0−0の引き分け。結果は及第点かもしれないが、セルティックの貧弱さが露わになった一戦でもあった。そのなかで古橋はスタメン落ち。上田を上回る活躍をし、代表復帰をアピールしたかったはずだが、出番が回ってきたのは後半23分を迎えた段だった。

【守田英正のキラリと光るワンプレー】

 セルティックの中盤で、唯一創造的なパスを前方に供給することができていた旗手は、逆にそのタイミングでピッチをあとにした。つまり古橋、旗手の両者がピッチで一緒にプレーすることはなく、両者のパス交換も見られずに終わった。

 セルティックから脱出するには、CLで活躍することが近道になる。より上位のクラブへ移籍する手がかりをつかむことができる。アタランタ戦で活躍すれば、アタランタから誘われる可能性もある。欧州のカップ戦は出会いの場でもあるのだ。

 そこでのスタメン落ちや早い時間の交代は、選手にとってストレスになる。出場時間は後半29分までプレーした前田が最も長かったが、旗手の採点を6.5とすれば、前田は5.5が精一杯だろう。これでは株は上がらない。

 第2節のPSV戦で大活躍したスポルティングの守田も、今節のシュトゥルム・グラーツとのアウェー戦ではスタメンから外れた。代表ウィークの翌週にCLが行なわれる強行軍である。W杯アジア3次予選で2試合(サウジアラビア戦、オーストラリア戦)ともに先発フル出場した影響だろう。

 ただ、出場時間は短かったが、守田は1本キラリと光る縦パスを送っている。36チーム中、8位と好調なチームにとって、欠かせない選手であることをあらためて思い知らされるワンプレーだった。

 チェイス・アンリが所属するシュツットガルトは、ユベントスとのアウェー戦で後半の追加タイムに入った47分、決勝弾を決めて番狂わせを起こした。チェイス・アンリがピッチに送り込まれたのはその直後。右SBとして数分間プレーした。たかが数分、されど数分だ。その間、対峙するユベントスの左ウイング、ケナン・ユルディス(トルコ代表)の突破を阻止するプレーも見せている。これでCLは3戦連続出場だ。いずれも交代出場ながら、しっかり経験を積むことができている。

 心配なのはリバプールの遠藤だ。日本代表キャプテンの現状について森保一監督は「世界的な選手と普段、練習を一緒にしているので、心配していない」と述べているが、ここまで出場時間が減少すると、そうも言っていられなくなる。本人も辛くなるだろう。その動向を注視したい。

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