スーパーマーケット「オーケー」が立ち退きに応じなかったために、都市計画事業が頓挫した、との指摘があがっている。一方で地元の住民からは、オーケーが存続することを歓迎する声が少なくない。これまでの経緯を確認しつつ、オーケーの広報部にも話を聞いた。
ディスカウントスーパーマーケット「オーケー」の狛江店が、狛江市の都市計画において道路の拡幅工事などのために立ち退きを迫られていたが、交渉が決裂し、事業が途中で終了した。
この事業は、2009年から行われているもので、慈恵東通りの一部を幅16mに拡幅するというもの。この道路に面しているオーケー狛江店の店舗建物自体は道路予定地と重なっていないものの、店舗前面の荷捌き場・駐輪場が道路予定地と重なっている。同店は、1967年12月6日にオープンした自社ビルで、以前は本社機能も備えていた。
2009年に都市計画法に基づく事業認可を得て狛江市が都市計画道路事業「調布3・4・23号稲荷前線」との名称の道路拡幅工事を行ってきた。狛江通りと交わる慈恵医大第三病院前交差点から北側が事業区間で、オーケー狛江店の前面敷地部分を除いて土地の収用がなされ、工事も進んだ。事業認可以降、施行期間は4回延長され、2024年3月31日までとなっていた。だが、オーケーの土地収用交渉が進まないことから、これ以上の延伸はしないこととし、同日をもって都市計画事業としての道路整備は終了した。
そのため、オーケー狛江店の前は計画の幅員に到達しないままになっている。狛江市によると、2022年7月7日に「国領町八丁目・和泉本町四丁目周辺地区計画」を決定したことで、歩道機能の代替ともなりうる空間を確保でき、まちづくりの進展が見込めることとなったと判断。さらに、オーケーとの交渉経過や、都市計画事業の効用等を総合的に勘案し、都市計画事業の延伸をしなかったとしている。したがって、土地収用法は適用せず、都市計画事業は終了したが、道路事業として事業は続けるという。
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都市計画事業が未完成のまま終了したことを受け、「オーケーが立ち退かなかったから事業が頓挫した」「オーケーのせいで誰も得しない結末を迎えた」など、ネット上にはオーケーの対応を批判する声があふれた。
だが、一方で地元民からは歓迎する声も少なくない。というのも、オーケー狛江店の目の前には、都営住宅の団地群が広がっており、そこに住む高齢者たちにとっては、同店が閉店すると買い物に困るというのだ。実際に、Business Journal編集部がオーケー広報室に交渉の経緯を聞いたところ、以下の通り回答を得た。
「10年以上前に、狛江店に関して市と立ち退きの協議をしておりました。当社としては、当時、ご近隣の住民の方々を中心に狛江店の存続を求める多くのご署名もいただき、そうしたご近隣の皆様の声に真摯に耳を傾けつつ、近隣での代替候補地などについて市とお話合いの場を持つこともありました。その後は、特段お話をいただいておらず現状に至っております」(オーケー株式会社広報室)
オーケーは2017年、狛江店から約500m東へ進んだ場所に狛江中和泉店をオープンさせたが、やはり高齢者たちにとっては代替店舗とはなりえず、狛江店を閉店してほしくないとの声が多かったようだ。オーケー以外の土地の収用が進んだことで、オーケーが立ち退かなかったから事業が頓挫した、と関心が集中したわけだが、その背景には近隣住民の切実な声があった。
(文=Business Journal編集部)
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