ラグビー日本代表・姫野和樹がオールブラックス戦へ向けて語る「初めての超速」

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2024年10月25日 07:21  webスポルティーバ

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姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)インタビュー

 頼れる"キャプテン"が戻ってきた──。

 ラグビー日本代表は10月26日、「リポビタンDチャレンジカップ2024」でニュージーランド代表と激突する。今年国内最後のテストマッチに向けて、日本代表は13日から宮崎などで合宿を敢行。そのメンバーのなかに、2023年ラグビーワールドカップでチームの主将を務めたNo.8姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)が復帰した。

※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)

 長らくジェイミージャパンの中軸を担ってきた姫野にとって、エディージャパンへの参加は実に帝京大1年だった、18歳の時以来だ。

「久しぶりの日本代表での実戦でした。ラグビーが速いです。速く考えて、速く動くラグビーは、自分たちのスタイルに合っている。やっていて、ただただ楽しかった!」

 時折、雨が降るなかで練習を終えた姫野は、少年のような無邪気な笑顔で心境を語った。

 今年1月から日本代表の指揮官にエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が再び就任し、2月に福岡で行なわれたミニキャンプに姫野も参加した。だが、2021年に負傷していた右ひじの古傷を手術した影響により、リーグワンのシーズン終了後の5月から9月まで代表活動は見送っていた。

「どこかのタイミングで手術はしたいと思っていたんです。2021年にニュージーランドに挑戦した時に右ひじをやって、痛みも慢性的になっていて......。削れた骨が患部に溜まっていたので取り除きました。

 おかげで、ひじの伸びはよくなりました。日本代表で7年間ほど活動をしていたので、ちょっと休養も必要かなと思っていたので。エディーさんもそれは理解してくれました。心身ともにリフレッシュでき、代表への思いもすごく強くなったので、いい時間を過ごせました」

【若手は勇気をもってやってほしい】

 復帰した姫野に対し、ジョーンズHCの期待も大きい。

「姫野はボールキャリーが強く、ラックまわりで倒れ込むことなくボールを持ち続けることができ、タックルをしてもすぐに起き上がって次の仕事ができる。それが強みです。まずは体調をピークに戻すことが大切でした。ケガも治ったので、どんどん期待していきます。自分史上で最高の選手になること、世界一のバックローになることが、彼の仕事ですから」

 約1年ぶりに日本代表活動に参加し、姫野はどう感じたのか。

「若い選手が多く、初対面ばかりでした(笑)。つい最近まで日本代表では自分が後輩で、たくさんの先輩がいるのが普通でした。でも今回、初めてエディージャパンに合流し、チームのフレッシュさを肌で感じています。(キャプテンを外れたことは)何も考えていません。でも、自分に与えられた役割、責任は大きなものがある」

 FLリーチ マイケル(ブレイブルーパス東京)がケガの影響で不参加となったため、今回招集されたFW陣20名のうち、姫野より年上はHO坂手淳史(埼玉ワイルドナイツ)ただひとり。ジョーンズHCは姫野をメンターのひとりに挙げており、姫野もその役割を十分に承知しているため、練習中は常に先頭に立ち、円陣でも若い選手に積極的に声をかけていた。

「チームを引っ張っていくのは自分の強みだし、エディーさんも求めていると思う。日本代表に合流してまだ1週間ですが、自分の持てるリーダーシップを出し、ベストな選手、ベストな人間であり続けるよう努力をしていきたい。

 若い選手は初めてオールブラックスと対戦する選手も多いので、怯えずに勇気をもってやってほしい。自分の経験をどんどん伝えて、チームを前向きにしたい」

 もちろん、姫野も若い選手にポジションを譲るつもりは毛頭ない。

「僕自身、『負けない』ことをテーマにやっている。歳をとってしまうと、それにあぐらをかいてしまい、競争力が落ちてしまう。なので『負けない』という気持ちで自分をあおり、それが結果的にチームの競争力につながればいいなと思う」

【オールブラックスに勝つのも夢じゃない】

 姫野にとって、ジョーンズHCが掲げる「超速ラグビー」は初めての経験だ。その感想を聞くと、ジェイミージャパン時代と比較しながら説明した。

「ラグビー自体のディテールは変わっていますが、日本代表の得意としている分野──ストロングポイントを活かしながらラグビーをしていくのは、これまでと変わらない。引き継ぎながらイノベーションして『エディー流』に改良している。スキルを上げて、考える判断や身体を動かす速さを追求していくことが、僕らの目指す方向だと思う」

 エディージャパンに合流して1週間あまり、まだ姫野が慣れていない部分もある。だが、そんな状況も「苦労しているというより、楽しいし、すごく面白い!」と話す。

「頭のなかで『どこに行かなきゃいけない』と考えながらプレーしているので、それを繰り返して身体に慣れさせるのが重要。速いテンポで常に相手よりスピードで上回り、相手ディフェンスが揃う前にアタックする。そういう考え方はすばらしい。相手より常に一歩、二歩速く動くことができれば、さらにいいラグビーができる」

 次のワールドカップは3年後。33歳で迎える大舞台は、もちろん視野に入っているだろう。現在30歳でベテランの域になった姫野は、3度目のワールドカップ出場をどのように捉えているのか。

「もちろん出たいとは思っていますが、正直、意識はしていません。3年後の話なので、ひとつずつ時期を区切って、足もとを見ていかないといけない。自分が毎日、ベストな選手に、ベストな人間になることが、ワールドカップにつながる。地に足をつけてやりたい」

 オールブラックスとの対戦成績は過去0勝7敗。いまだ白星はない。ただ、2年前に姫野がキャプテンとして挑んだ試合は31-38と肉薄した。26日のオールブラックス戦には、昨年のワールドカップ・アルゼンチン戦以来となる先発メンバーに名を連ねた。自身も2021年にニュージーランドのハイランダーズでプレーしていただけに、どんな思いで臨むのか。

「オールブラックスに勝つと、歴史的瞬間になると思う。2年前は1トライ差ほどの差で負けましたが、日本代表もそのレベルまで来ている。オールブラックスに勝つのも夢じゃないと感じています。みんな必ず勝ちたい思いを持っているので、その思いが原動力になっている」

【メンタリティが大事。日本は弱い国じゃない】

 歴史的白星を奪うためには何が大事か? 最後に聞いてみた。

「オールブラックスと対戦するからではなく、自分たちのラグビーとタレントはすばらしいものがある。オールブラックスは試合前にハカをしますが、我々も自分たちの自信にフォーカスしてほしい。

 今まで日本代表は、自信を積み上げてきています。今回のエディー体制になってからではなく、2015年、2019年からずっと。日本は弱い国じゃない。強い国だと思うメンタリティがすごく大事です。超速ラグビーを毎試合、120パーセント出すことも重要になってくるでしょう」

 この日の全体練習後も、姫野は代名詞である「ジャッカル」のトレーニングに精を出していた。

「自分の強みは変わらない。ブレイクダウン周りの運動量、タックル、ボールキャリーが強みだと思うので、その能力を100パーセント出しきる。それが自分の仕事です」

 ニュージーランドとの試合を終えたあとには、海を渡ってフランス(11月10日)、ウルグアイ(11月16日)、イングランド(11月25日)とのアウェーゲームが控えている。姫野は持ち前のリーダーシップを発揮しながら、勝利に一歩でも近づく努力を惜しまないだろう。


【profile】
姫野和樹(ひめの・かずき)
1994年7月27日生まれ、愛知県名古屋市出身。高校ラグビーの名門・春日丘時代はロックでープレーし、2年連続で全国大会に出場する。帝京大学での黄金期を主軸として活躍し、2017年にトヨタヴェルブリッツに加入。1年目にキャプテンに抜擢され、同年11月には日本代表初キャップを獲得する。2019年ワールドカップでは日本初のベスト8進出に貢献し、2021年にはハイランダーズに加入して新人賞を受賞。2023年ワールドカップでは主将として臨んだ。ポジション=ナンバーエイト。身長187cm、体重110kg。

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