「余命1か月から9年が経過」“希少乳がん”の看護師が、200回の抗がん剤治療をしながらやったこと

0

2024年10月25日 08:10  週刊女性PRIME

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

週刊女性PRIME

がんサバイバーのGraceひろさん

「諦めたらゲームオーバーです」と語ったのは、がん宣告当時まだ52歳だった看護師、Graceひろさん。現在ではYouTubeにも活動の幅を広げる彼女だが、200回を超える抗がん剤治療を乗り越えるためにやった“あること”を聞いた。

もう一度ナース服を着たい

 2015年、余命1か月を宣告されたのは、看護師のGraceひろさん。当時まだ52歳の若さだった。

「私のがんは、紡錘細胞がんという希少がんだったのです。このがんの特徴は、急速に大きくなって、痛みがあること。しかも“トリプルネガティブ”という非常に予後の悪い種類のものでした」

 紡錘細胞がんは乳がん全体の1%未満といわれ、増殖速度がきわめて速い。トリプルネガティブ乳がんは、転移を起こす確率、再発する確率が他の乳がんより高いことが知られている。現時点では有効な治療法もない。

「最初にかかった乳腺専門病院の女性医師が、本当に素晴らしい方でした。急を要するタイプのがんなので、がん研有明病院でなければダメだ、ときっぱり言い切ってくれた。通常だと候補の病院のリストを渡されて自分で選ぶものですが、そこでは先生自ら予約を取ってくれました。本当に感謝です」

 自己検診でがんを見つけ、専門病院へと初動は早かったひろさんだが……。

「看護師なので健診は年2回あった。それなのに気づけなかったのは悔しかったです。そこから受診、検査、手術までは、1日も無駄にしませんでした」

 しかし、手術後1か月もたたずに呼吸困難になり、全身転移が判明。そこで、延命治療の宣告をされた。

「このままベッドの上で酸素チューブにつながれたまま死ぬのは絶対に嫌でした。病院で立ち働く看護師さんの姿を見て、つい最近まで私もあちら側だったのに……と悔しくて。もう一度ナース服を着て働きたいと強く思いました」

 緩和病棟の予約をすぐキャンセルし、抗がん剤治療を始めた。看護師としての経験から、抗がん剤の副作用については嫌というほど知っていた。

「実は、転移が見つかる前から、がん治療についてネットで検索を続けていました。そのときに、西脇先生の本に出合いました」

『ハタイクリニック』院長の西脇俊二医師は、断糖療法と超高濃度ビタミンC点滴による代替療法を提唱している。簡単に言うと、がんのエサである糖質を制限して兵糧攻めにし、弱ったがん細胞を超高濃度ビタミンCで死滅させることを試みる療法だ。

「緊急入院中に私は断糖療法を始めました。院食は糖質の少ないメニューを選び、白飯は食べませんでした」

 当時はまだ出始めだったローソンのブランパンと糖質ゼロのハムを友人に届けてもらい、主食にした。

小林麻央さんは“がん友”

「私はまる9年間、2週間に1回のクールで、すでに200回を超える抗がん剤治療を続けています。抗がん剤はパクリタキセルとアバスチンの組み合わせなのですが、副作用がきついといわれるパクリタキセルの200回を超える連続実施症例は非常に稀で、ギネスに申請できるぐらいだと思います(笑)」

 ひろさんが9年間のつらい抗がん剤投与に耐えられたのは、同時に行っていた超高濃度ビタミンC点滴で副作用を抑えられたからだという。

「抗がん剤治療をすると体力が落ち、髪の毛も抜けて、食欲も減退し、生きる気力が失われてしまいます。私はそうではありませんでした」

 部分ウィッグを使っているとはいえ、ひろさんの髪はつややかでふさふさ、肌も白くてすべすべ。食欲旺盛で活力に満ちている。コロナ禍の2021年には、ワクチン接種の看護師業務に復帰。集団接種会場で不特定多数の人々と接したが、コロナウイルスに感染もしなかった。

「あのコロナ禍、何もしないでいるのがいたたまれなかったんです。何のために生きてるの、私?って自問しました。何かの役に立つなら今じゃないのかと」

 当然、看護師業務への復帰に担当医は渋い顔をしたが、「がん治療のために生きているわけじゃないよね」

 と、最後には納得し、応援してくれた。

「私ががん治療をしているのと同時期、小林麻央さんが乳がんになったのが話題になりました。同じ乳がん患者として、私は勝手に麻央さんと一緒に闘っている気持ちでいました。彼女のブログを読んで、毎回コメントもつけていたんですよ。

 残念なのは、彼女が標準治療を拒絶してしまったこと。私は抗がん剤に効果があると思っていますし、必要性を理解しています。ただ、抗がん剤治療を行う医師はほぼ補完代替療法を受け付けませんし、一方で代替療法の医師が抗がん剤を否定することも。両方を行うのは患者にとって難しいのも事実です。

 いろんな治療の可能性を閉ざされることが、どれだけ患者さんにとって残酷か。麻央さんのような例を見ると、本当に残念ですし、医療のあり方に疑問も感じます」

ビタミンC点滴は在宅でも可能

 昨年のPET/CT検査では、画像上、がんがない状態という結果が出たひろさん。今も抗がん剤治療の翌日には、必ず超高濃度ビタミンC点滴を行っている。その効果について西脇医師は次のように解説する。

「超高濃度ビタミンCは抗酸化物質で、通常の抗がん剤の副作用もかなり和らげてくれます。抗がん剤にも併用されるようになれば治療の効果も上がりますので、そういった意味でもビタミンC点滴が保険適用になってくれれば良いと思います」

 ビタミンCといっても市販されている経口のビタミン剤とは異なり、超高濃度の成分を血液中に注入する。経口のビタミンCは大量に摂取してもほとんど体外に排泄されてしまうが、点滴なら血中濃度を上げることが可能だ。

「ビタミンCはもともと抗酸化物質で、身体の疲れなどをとってくれるのですが、がんに対しては酸化物質として作用するという特殊な性質があります。

 がんのエサはブドウ糖。そのブドウ糖とよく似たビタミンCを、断糖した状態で投与すると、ビタミンCががん細胞に入っていく。大量のビタミンCががん細胞の中に取り込まれると、過酸化水素という毒性の強い酸化物を作り出し、それががん細胞を死滅させていくのです」(西脇医師)

 抗がん剤治療を行っている患者は、CVポートと呼ばれる点滴用の医療器具が皮下に埋め込まれていることが多い。そのため、このCVポートから超高濃度ビタミンC点滴を行うことができる。ひろさんもそうだ。

「彼女はナースですが、一般の方でも、練習すればCVポートからの超高濃度ビタミンC点滴が自分でできるようになります。がん治療の場合だと、超高濃度ビタミンC点滴は週2回を推奨していますが、これだと遠方の方は現実的に難しい。

 CVポートを埋め込めば在宅での点滴が可能です。在宅だと時間的に余裕が生まれるし、治療費も安くなる。また、がん細胞は夜中に増殖しますので、その時間に点滴できるのも効果的です」(西脇医師)

 西脇医師によれば、投与するビタミンCの量は、血液中のビタミンC濃度を測定して決定するそう。典型的な例では週に2回の点滴を6か月間継続、その後の経過が良ければ週1回を6か月、さらに2週に1回を1年間、その後は月に1回行う。ビタミンCの量と点滴頻度は病状によって変わるとのこと。ひろさんは現在、月1回、宅配便で届く超高濃度ビタミンCを自己点滴で続けている。彼女が他のがん患者さんに伝えたいのは、次の言葉だ。

「どんな治療もうまくいく場合もそうでない場合もある。確かなのは、諦めたらゲームオーバーということです」

Graceひろ●1963年、東京・品川生まれ。がんと共存中の乳がんサバイバーナース。夫と3人の娘のうち、長女、三女は国際結婚し、海外移住。現在は次女とその娘と都内在住。

西脇俊二医師●精神科医師、精神保健指定医、超高濃度ビタミンC点滴療法認定医。ハタイクリニックの院長として診療をしながら、メディア出演、医療監修、執筆など多くの分野で活躍中。

取材・文/ガンガーラ田津美

    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定