久保建英は左サイドに回ってヨーロッパリーグ初勝利 「効率重視」の戦術に自分を落とし込んだ

0

2024年10月25日 17:01  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

 10月24日、ベオグラード。ヨーロッパリーグ(EL)リーグフェーズ第3節、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)はイスラエルのマッカビ・テルアビブとの試合で、1−2の勝利を収めている。この試合は国際情勢により、中立地で行なわれることになった。ほとんど観客がいないスタジアムは、コロナ禍後では一種異様に映ったが、しっかりと勝ち点3を積み上げた。

 ラ・レアルはスローペースで勝ちきったと言える。

 立ち上がり10分ほど、強度を出してきたのは相手のほうだったが、それをうまくいなしていた。そして勢いが落ちたところで押し込み、要領よく19分に先制に成功。後半も効率重視で、同じように追加点を決めた。昔の言い方なら「省エネ」、今風に言えば「SDGs」となるか。最小限のエネルギー、持続可能な戦い方で、最大限のポイントを勝ち取った。

 GKアレックス・レミーロが欠場(前戦のジローナ戦でヒザを痛めたことで心配されていたが、軽傷で済みそうで、大事をとっての休みとなった)し、イゴール・スベルディア、ルカ・スシッチも欠くなかで、ジローナ戦から連勝を収めたことは朗報と言える。チームが軌道に乗りつつあることを証明した。

「ラ・レアルは宿題完了」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』もそう報じており、長いシーズンのなかで"やるべきことをやった試合"と言える。

 これでELの成績も、1勝1敗1分けの五分に戻し、勝ち上がりに向け、望みをつなげた。ただし今後はアヤックス、ラツィオなど、チャンピオンズリーグでもおかしくない強豪との試合が控えている。

 では、久保建英のプレーはどうだったのか?

 マッカビ戦の久保は、4−3−3の左サイドで先発している。これまでのELでは5−4−1を採用していた。それを変えたのは、久保がいるなかで"守備的になりすぎない"というイマノル・アルグアシル監督の判断だったのだろう。

 久保の左サイドに違和感はなかった。主戦場は右サイドだが、自由度は高く、そもそも固定されている印象はない。どのゾーンでも、高いレベルのプレーができる。実際、日本代表ではシャドー、トップ下もやっているし、ラ・レアルでもダビド・シルバがいた時代はトップの一角でもプレーしていた。オールラウンドなアタッカーで、その適応力も彼の才能のひとつだ。

【縦に切り込みクロスを上げる】

「周りの力を引き出す。その適応力、連係力こそ、タケ(久保)の魅力と言える」

 2000年代、ラ・レアルの"ワンクラブマン"として500試合以上に出場したレジェンド、シャビ・プリエトは、昨年行なったインタビューでそう説明していた。

「タケのプレーヤーとして最大の才能は、ひと言でいえば、Desequiribrio(均衡を崩す)にあるだろう。単純に個人のプレースピードも速いが、チームメイトと連係することによって、さらに攻撃を速めることができる。そのアドバンテージで、守備陣が構築したバランスを崩せる。それが、Determinante(プレーを決定する)の選手になることにもつながっているんだ」

 スタートポジションの右から左への変化は、主に他の選手との相性により行なわれたのだろう。

 この日、ラ・レアルはウマル・サディクがワントップで先発だった。サディクはスピード、パワーが際立つFWだが、ポストワークは苦手で、周りとのコンビネーションがいいタイプではない。広大なスペースを生かし、速い攻撃を使い、カウンターで生きるタイプだ。

 久保は右サイドにいる場合、カットインからの左足シュートを得意としている。しかし、それだけではすぐに封じられるために、トップや周りの選手とのコンビネーションが欠かせない。だからこそ、アレクサンダー・セルロート(現アトレティコ・マドリード)のようなストライカーと相性がよかったわけだ。

 だが、サディクにボールを預けても思ったようなリターンはないし、クロス1本でも合わないことが多い。そこで、この日は久保が左でプレーすることになったのだろう。適応力に優れた彼は、チームが掲げた「縦に速く」の攻撃にもマッチした。左サイドでスピードを生かし、左利きウイングとして縦に切り込み、クロスを上げた。実際、ラ・レアルが得点した2ゴールの"前触れ"のシーンでは、久保が縦に攻撃を仕掛けて全体を押し込んでいた。

「手数をかけない」

 久保もそこは徹底していたようだった。左サイドで1対1になり、中が揃っていなかったら、縦に切り込んでニア上に強烈な左足シュートを放った。味方が幅を取って中央を走ったところでボールを受けると、そのまま右足ミドルで狙った。久保はチーム戦術に自分の技術を落とし込んでいた。そこまで際立った活躍にはならなかったが......。

 今はチームが勝利を重ね、力をつけることが先決だろう。ラ・リーガだけでなく、EL も長丁場の連戦が続く。スペイン国王杯もスタートする。

 ラ・レアルが戦い方のバリエーションを増やすなか、久保の爆発が期待される。次戦は27日。しぶとい戦いを信条とするオサスナとのホーム戦だ。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定