【ワールドシリーズ展望】五十嵐亮太が分析する大谷翔平&山本由伸とドジャースの強さ 「絶体絶命のピンチをプラスに変えられる組織力」

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2024年10月25日 17:21  webスポルティーバ

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五十嵐亮太が語るMLBワールドシリーズ展望(前編)

 大谷翔平、山本由伸を擁するロサンゼルス・ドジャースは、ディビジョンシリーズでサンディエゴ・パドレスを下し、リーグチャンピオンシップではニューヨーク・メッツに勝利し、ワールドシリーズ進出を決めた。これまでのポストシーズンを振り返り、ドジャースがワールドシリーズに進めた理由はどこにあったのか。また、大谷、山本の状態はどうなのか。解説者の五十嵐亮太氏に聞いた。

【ドジャースの組織力】

── ポストシーズンに入ってからのドジャースの戦いを見て、どんな印象を受けましたか。

五十嵐 ポストシーズンに関しては、ピッチャー陣、とくにブルペンの頑張りが大きかったですね。あと先発では、山本由伸投手がしっかり戻ってきた。パドレスとのディビジョンシリーズ初戦で先発しましたが、3回5失点と打ち込まれました。でも次の5戦目、ダルビッシュ有投手と投げ合い5回無失点の好投でチームに勝利を呼び込みました。山本投手がしっかり試合をつくれると、チームとして戦う形が見えてくる。そこは大きかったなと思いますね。

── 山本投手ですが、初戦のあとどこがよくなったと思いますか。

五十嵐 パドレスとの初戦のあと、デーブ・ロバーツ監督から「クセがバレている」というような発言がありましたが、そこをしっかり修正できたというのは彼の能力の高さだと思います。悪い時の山本というのは、ボールがシュート回転してしまって、甘いコースに入るケースが多くなるから捉えられる確率が高くなる。これまで何試合か見ていますが、ひとつでもバランスを崩すと、全体的によくない。

 逆にうまくハマった時は、すばらしいピッチングをする。ディビションシリーズの第5戦、リーグチャンピオンシップの第4戦は、ストレートの回転がきれいで、ボールに強さもありました。抜けるボールも少なかったですし、山本投手本来のピッチングができていたと思います。

── ディビジョンシリーズの第4戦、ドジャースは負ければ終わりの試合をリリーフ陣でつなぐ"ブルペンデー"で勝利しました。

五十嵐 そうなんですよ。負けたら敗退のところ、ブルペン陣が踏ん張って8対0で勝利。あそこでドジャースに勢いが出てきたというか、チームとして自信になったと思うんです。実際、その次の試合で山本投手が好投したわけですからね。あの試合は大きかったですね。

── ディビジョンシリーズからリーグチャンピオンシップへと進むなかで、ドジャースの戦いに変化みたいなものを感じましたか。

五十嵐 組織の力ですよね。これは何かの記事で見たのですが、チームが苦しい状況の時に、選手たちが集まってミーティングをしたと。ドジャースはあれだけケガ人が出て、チームとしてものすごく厳しい状況にあった。そんな絶体絶命のピンチをプラスに変えたというのは、あらためてすごいチームだなと思いましたね。

── そうした結束力みたいなものが、ドジャースの強さだと?

五十嵐 ここまで来ると、技術はもちろん大事なんですけど、精神的な部分が大きく左右してくると思うんですよ。とくにチームが苦しい時こそ、組織力であったり、リーダー的な存在の選手が必要になってくる。なかでも、ポストシーズンでのドジャースのブルペン陣というのは、ものすごく結束していたのかなと感じました。

── 投手陣に不安があると言われていたドジャースですが、ディビジョンリーグ、リーグチャンピオンシップの11試合で完封勝ちが4試合あり、すべて継投でした。

五十嵐 ポストシーズンに入って、一人ひとりが強いボールを投げていますし、平均スピードも上がっていたはずです。ブルペン陣が安定してくれたことが、監督のなかでも安心材料となって、ゲームの組み立てがしやすくなったんじゃないでしょうか。

【大谷翔平の状態は?】

── 打つほうでは、なんと言っても大谷翔平選手ですが、打率.286、3本塁打、10打点という成績でした。この数字について、五十嵐さんの率直な感想は?

五十嵐 全然悪くないのですが、こっちの期待があまりにも大きかった。ついついMVP級の活躍をするんじゃないかと、勝手に思い込んでいたところはありました。数字だけを見れば、もっとやるんじゃないかと......。ただ、得点圏ではしっかり結果を残していますし、ホームランも3本打っている。状態自体は決して悪くありません。

── ポストシーズンは三振が17個と少し多い気がしますが......。

五十嵐 大谷選手のなかで、強く振りたいという意識があるのだと思います。とくにランナーがいない場面は、その傾向が強い。大谷選手というのは、ホームランの打ち損じがヒットみたいな感じの打者ではあるのですが、ランナーがいる場面ではしっかりタイミングを合わせてミートに徹してくる。たしかに三振の数は多いですが、まったくタイミングが合っていないとか、スイングがおかしいというのはありません。むしろ、強いスイングでミートするようになったら、はたしてどんな活躍をするんだろうと......そっちのほうが楽しみですね。

── ドジャース打線自体の調子はどうですか。

五十嵐 調子がいい、悪いというよりも、それぞれの選手が勝つ野球をやっているイメージですね。メッツとの試合で。三塁ランナーの大谷選手が内野ゴロでスタートを切らなかったシーンがありましたが、試合後、ロバーツ監督が苦言を呈しました。テオスカー・ヘルナンデス選手は、内野手が定位置で守っているのを見てゴロを打ったと思うんです。ただ打つというのではなく、試合の流れを見ながら対応してくる。ロバーツ監督もシーズンとは違う野球をしている印象がありますし、これがドジャースの野球なのかなと。

── ドジャースがワールドシリーズに進出した最大の要因は何だと思いますか。

五十嵐 もともと打ち勝つチームですから、しっかり点を取れたということは想定内です。ただ先程も言いましたが、投手陣が本当に頑張りました。短期決戦というのは、ひとつのプレーで戦況が大きく変わりますし、1点の重みが違います。そういう意味で、投手陣がしっかりつないで守りきったというのが、一番の要因だったと思います。

つづく>>


五十嵐亮太(いがらし・りょうた)/1979年5月28日、北海道生まれ。千葉・敬愛学園から97年ドラフト2位でヤクルトに入団。プロ2年目の99年にリリーフとして頭角を現し、一軍に定着。04年はクローザーとして37セーブを挙げ、最優秀救援投手賞のタイトルを獲得。09年オフにメジャー挑戦を表明し、メッツと契約。12年はブルージェイズ、ヤンキースでプレーし、13年にソフトバンクと契約し日本球界復帰。18年オフに戦力外となるも、ヤクルトと契約。19年は45試合に登板したが、20年10月に現役引退を表明。現在は解説者として活躍している。

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