茂木健一郎「世間では『コスパ』『タイパ』と言う若者が多いといわれていますが…」脳科学の視点で解説

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2024年10月25日 20:20  TOKYO FM +

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茂木健一郎「世間では『コスパ』『タイパ』と言う若者が多いといわれていますが…」脳科学の視点で解説
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00〜22:30)。
TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
今回の配信では「パフォーマンス」に関する質問に答えました。


パーソナリティの茂木健一郎



<リスナーからの相談>
私の息子は高校3年生の受験生です。本はあまり読まないタイプですが、勉強していて気になるところがあれば、どうにか近道を探して本を買ってみたりしています。

しかし、途中で読まなくなっているなと感じます。せめてじっくり読みきってほしいなと思いますが、口を出すことはしません。若者のせっかちさといいますか、物事を解決するためすぐに近道を探す感じを、茂木先生はどう感じますか?

<茂木の回答>
茂木:最近は「コスパ」(コストパフォーマンス)や「タイパ」(タイムパフォーマンス)といった流行りの言葉もありますし、そういう若者が多いというようなことは世間で言われています。

実は、コスパ・タイパは突き詰めると面白いと僕は思っています。なぜかというのを、(自発性と職務への誠実さの価値をつづったアメリカ合衆国の大ヒットエッセイ)「ガルシアへの手紙」という本を例に挙げてご説明します。もしよければ、息子さんにもおすすめしていただけたらと思います。

どんな本かと言いますと、アメリカがスペインと戦争しているなか、ある方が「メキシコにいるガルシアさんに手紙を届けろ」と無理難題を言われます。ガルシアはどこにいるのかわからないけれど、手紙を届けなければいけない。目的は決まっているから効率よくやりたいわけですが、そのためにはメキシコのなかに分け入り、いろいろな人に話を聞いて探ったりと、面倒くさいことをしなければいけません。本当のコスパ・タイパというのは、そういう面倒なことをやることだと僕は思います。

他にも、すごい小説家が青年から「小説を書けるようになるためにはどうすればいいか」と聞かれた話があります。小説家は問いに「何か1つ外国語をやりなさい」と言いました。普通は、最近賞をもらった作品を研究して真似すればいいと思うじゃないですか。一見回り道のようですが、他の国の言葉を学ぶと言語感覚が研ぎ澄まされるのか、あるいは日本語が変わっていくのかもしれません。「ガルシアへの手紙」に似ていますよね。

案外、コスパ・タイパは突き詰めると深く、世間で言うコスパ・タイパというのは表面的です。まっすぐにゴールに行こうとしたら、案外迷い道、くねくねしたルートも必要になるということだと思います。

息子さんは今、受験という目標がありますよね。まずはそれをクリアしていただきたいと思うのですが、そのあとも人生は続きます。「幸せになりたい」「社会的な活躍をしたい」といった目標があるとすると、それらはルートが決まっているコスパ・タイパではなく、「ガルシアへの手紙」に近いことだと思います。

そのときに、実は一番の近道が世間的に見ると無駄に見えるようなこと、迷ったりすることだということを、ぜひ気付いていただけたら嬉しいです。ただ、お母様がこうやって心配されて、いろいろ考えているわけですから、それは素晴らしい栄養になると思います。

息子さんはこれからガルシアに手紙を届けるかもしれませんし、小説を書くようなことをするかもしれません。そのときはいろいろ迷ったり脇道にそれたりすると思いますが、温かく見守っていただきたいです。まずは今、ぜひ受験のサポートをしていただきたいなと思います。

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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎

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