八丈島に移住した“女性プロ雀士”に聞くリアルな住み心地。物価は「東京本土のスーパーよりも全部高い」

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2024年10月26日 16:31  日刊SPA!

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魚は買うと意外と高いのだという
 東京・羽田空港から南に約290kmに位置する離島「八丈島」。東京都でありながら、年間平均気温は約18℃で“常春の島”とも呼ばれ、雄大な自然が訪れる人々を魅了してやまない。
 そんな八丈島に一昨年の7月に移住し、古民家での日々の暮らしぶりをブログ「麻雀プロ八丈島物語」やYouTubeチャンネル「八丈島野生夫婦」で発信しているのが、日本プロ麻雀連盟に所属する女流プロ雀士の松岡千晶さん。八丈島へ移住したきっかけや、暮らしの実情を聞いた。

◆八丈島と五島列島で悩んだ結果…

――八丈島に移住されたきっかけは?

松岡千晶(以下、松岡):19歳のときにプロ雀士になって、それ以降ずっとプロ雀士としての生活をしていました。24歳のときに「人生1回しかないし、麻雀以外にもいろいろ挑戦してみたい」と思い、「一千万円貯めて違うことをするか」とか、もともと自然が大好きなこともあって「田舎に引っ越そうか」とか考えていたんです。

 それと、一人で旅に出るのが好きなのですが、コロナ禍のときにLCC(格安航空会社)のPeach(ピーチ)がすごい安い時期があって、ピーチで行けるあらゆる場所に行ったんです。その時に「住むなら本土よりも離島の方がいいかな」って思ったのがきっかけですね。

――いくつかの離島に行かれたと思いますが、八丈島以外にも移住する離島の候補はありましたか?

松岡:長崎の五島列島も候補でした。五島列島が舞台の「ばらかもん」というアニメを見ていて、都会の人が島に移住して地元の人たちと楽しく暮らすシーンが描かれているのですが、それがすごく自分の心に残っていたんです。ただ、五島列島は土地や家は八丈島の半分ぐらいの価格ですごく安いのですが、アルバイトの時給が……生活していくのは大変かなって。それと、島の居酒屋に何軒か行ったのですが、年齢層が高くて若い人が全然いなかったんです。昔から結婚願望はずっと持っていて、その時に恋人がいなかったというのもあって、この島で出会うのは難しいかな……とか考えていましたね。

◆移住は誰にも相談せずに1人で決めた

――収入や結婚を見据えて、八丈島を選んだ?

松岡:そうですね。あと、プロ雀士の仕事などで地元の東京と行き来することを考えたら、長崎を1回経由する必要があることも含めて距離的に大変かなと。八丈島だと東京から飛行機で片道1時間程度で着きますし、アルバイトの時給1,200円ぐらいで募集しているところも多かったので、生活を考えると八丈島の方がいいと思いました。一昨年の7月に移住してきたので、もう2年は経っています。

――移住する際、周囲には相談されましたか?

松岡:誰にも相談せずに1人で決めました。親に伝えたのは移住する1ヶ月前だったのですが、当時住んでいた部屋の大家には既に退去することを伝えていましたし、友達にはX(旧Twitter)を通じて移住する2〜3日前に伝えました。事後報告ですよね(笑)。

◆都会暮らしから抜け出したい気持ちが

――自然が大好きということですが、都会暮らしが嫌になったわけではない?

松岡:嫌になっていないと言えば嘘になりますね。東京って人が多くてゴミゴミしてるじゃないですか。地元は蒲田(大田区)なのですが、島に移住する前は私が店長として働いていた雀荘が神田の駅前にあったこともあり、神田近辺に住んでいたんです。ちょうどオフィス街なので、出勤する人たちの間をすり抜けるようにして仕事に向かっていて……。満員電車も好きではなかったですし、都会暮らしから抜け出したい気持ちは多少あったんでしょうね。

――プロ雀士をやりながら、雀荘の店長をされていた?

松岡:そうです。今でこそプロ雀士が雀荘の店長を務めることは多いのですが、私が店長をしていた10年ぐらい前は少なくて、もしかしたら私が初めてのケースだったかもしれません。従業員の給与を計算したりシフトを作ったり、集客のためのイベントを考えたりしていましたね。

――仕事を掛け持つのは大変そうですが、ご自分の意思で店長になられたのですか?

松岡:私がプロ雀士になった頃はいなかったのですが、いつの頃からかグラビアの仕事をしたり、歌って踊ってというプロ雀士が増えてきて…。私は胸も小さくて、歌はそんなに上手くないし、そういうのが嫌だったんです。それで、「このままだったらプロ雀士として食べていけないかな」っていう思いがあって、それなら裏方の仕事もしてみようと考えて店長になりました。

◆移住する直前に当時友人の旦那から連絡が来た

――ちなみに、プロ雀士といえば旦那様のノリヒトさんもプロ雀士ですね。出会いのきっかけは?

松岡:最初に知り合ったのは10年ぐらい前で、同じ雀荘で働いていたんです。でも旦那は私よりも先にお店を辞めて、それからはずっと会っていませんでした。

――再会されたのはいつ頃ですか?

松岡:八丈島に移住する2〜3日前、10年ぶりにX(旧Twitter)のDMで連絡が来て、ちょうど時間があったので飲みに行ったんです。そこで私がもうすぐ八丈島に移住することを言ったら「俺も行くわ」みたいになって(笑)。

――その段階では、まだご友人ですよね?

松岡:そうです。でも、4匹のペット(犬1匹、猫3匹)を連れて船に乗るのも大変だなと思っていたので、運ぶのを手伝ってもらおうと思って「船の運賃を払うから来て」と言いました(笑)。

◆八丈島に移住して7ヶ月で結婚

――ノリヒトさんも同時に移住されたのですか?

松岡:旦那は移住したわけではなく、私が移住した日にペットの持ち運びなどを手伝ってくれただけで、それ以降はたまに島に遊びに来ていました。そうこうしているうちに付き合うようになり、やがて「結婚するから島に移住して一緒に住む」って言い出して……。「結婚するかどうかはわからないけど、まあいいよ」と(笑)。八丈島に移住したのが一昨年(2022年)の7月で、結婚したのはその7ヶ月後ぐらいでした。

――展開が早いですね。ちなみに、移住してからプロ雀士としての活動に変化はありましたか?

松岡:現在もプロ雀士として日本プロ麻雀連盟に在籍はしていますが、リーグ戦やタイトル戦などには出ていません。リーグ戦に出ると1週間ぐらい家を空けたりするのですが、犬や猫がいるので家を空けすぎるのもなと……。当初は島に移住後も続けるつもりではいたんですけどね。旦那は今も東京と八丈島を行き来して続けていますよ。

◆物価が高いので自給自足に注力

――松岡さんは現在どんなお仕事をされていますか?

松岡:週1〜2日のアルバイトを4つ掛け持ちしています。八丈島でも有名な郷土料理のお店で掃除をしたり、別のご飯屋さんで働いたりしています。あとは、1月〜2月の期間限定で「八丈フルーツレモン」っていう特産レモンの収穫・販売の短期アルバイトをしたり、「くさや」や「明日葉」の生産を手伝う短期アルバイトもしています。

――お住まいは賃貸の古民家とのことですが、広いですか?

松岡:もともと1人で住む予定だったので、1人だったら広かっただろうなって(笑)。1階建てなのですが、リビングが12畳、寝室が6畳、そのほかにもう一つ部屋があり、キッチンもあります。それと、旦那がYouTubeでゲーム配信をしているのですが、家の中でやられるとうるさいので、庭に置いてある廃車の中でやってもらっています。あと、私も旦那もサウナが好きなので、テントサウナを買ってきて庭に設置しています。

――食べ物を買うのはスーパーですか?

松岡:3店舗あるのですが、空輸輸送費なんかが乗っているからか東京本土のスーパーよりも全部高いです。それと、八丈島の漁師さんは獲れた魚を一度築地まで運ぶんです。八丈島では築地価格で販売されるので全然安くなくて……海に囲まれているので魚は安いと思っていたんですけどね。

――自宅に広い畑がありますよね。野菜や果物は自給自足ですか?

松岡:畑では常時10〜20種類の野菜を育てているので、あまり買うことはありません。果物は以前イチゴを育てていたことはありますが、それ以外は木で育つものが多いので…。持ち家でもないですし、4年後にみかんができると言われても「育ててもな〜」みたいな感じですね。ただ、島では物々交換がすごく多くて、例えばスイカをたくさんくれた相手に野菜をあげたりしています。ちなみに、私の親も自宅のベランダや屋上で家庭菜園をやっているのですが、うちの畑があまりにも広いのでうらやましがっていましたね。

◆釣った魚で旦那が寿司を握ってくれる

――ムロアジをたくさん釣ってさばいている動画を拝見しましたが、魚はたくさん釣れそうですね。

松岡:私はもともと魚を釣るのもさばくのも好きだったので、東京本土に住んでいた頃から経験があったのですが、旦那は島に移住してから釣りを始め、魚をさばくのを覚えました。お寿司なんかもよく握ってくれるんです。八丈島のお寿司屋さんは観光客向けなのか値段が高いので、地元の方々はお寿司屋さんにほとんど行きません。東京本土にあるような100円の回転寿司はないですし、旦那がお寿司を握ってくれるのはありがたいです。

――どんな魚が釣れますか?

松岡:釣れたら嬉しいのが、カツオ、カンパチ、アカハタなどで、逆に嬉しくないのがオヤビッチャ、エソ、それと、フグの何倍もの猛毒を持つソウシハギです。ただ、ソウシハギは毒がある内臓を取ってしまえば、身はふぐみたいな感じでめちゃくちゃ美味しいんです。私たちは「どんな味がするんだろう?」と思ってなんでも食べちゃうのですが、島で私たち以外にソウシハギを食べている人はいないと思います。あと、ハリセンボンは針を全部抜いてふぐ皮ポン酢みたいにしたり、唐揚げにしたり、アバサー汁(アバサーは沖縄の言葉で、ハリセンボンのことを指す。身を煮込み、肝と味噌で味付け)にしています。本当に美味しいんですよ。

――松岡さんにとっての八丈島の魅力とは?

松岡:自然に囲まれていることはもちろん、東京本土との距離が飛行機で約1時間と近いので、気軽に行き来できます。それと、島の面積がJR山手線の内側とほぼ同じなんですよね。狭いエリアにいろいろなスポットがあるので各所へ行きやすいと思っていて、それも魅力ですね。ただ、これは私の感覚なのですが、割と都会的で何でもある島とも言えるので、もうちょっと田舎でもよかったですね。

<取材・文/浜田哲男>

【浜田哲男】
千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界を経て起業。「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ・ニュース系メディアで連載企画・編集・取材・執筆に携わる。X(旧Twitter):@buhinton

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