6年ぶりにツアー復帰の森田理香子が見据える未来「QTも受けるし、レジェンズツアーにも出たい」

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2024年10月27日 10:01  webスポルティーバ

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■森田理香子インタビュー【後編】
復帰のきっかけと、今、未来

>>インタビュー前編「心も体も、もう疲れていた」を読む

【森田理香子が試合に出ているだけで喜ぶ人がいる】

 元賞金女王の森田理香子が6年ぶりのツアー復帰を果たしたことは、女子ゴルフ界でも驚きだったに違いない。いちど、ツアーから離れた選手が、再挑戦をするという壁が想像以上に分厚いからだ。

 近年は若林舞衣子や横峯さくらなど結婚、出産を経てツアー復帰する選手も増えてきてはいるが、シード選手に返り咲くのは厳しい世界でもある。森田は2018年の休養宣言後、いつツアー復帰への覚悟を決めたのだろうか。

「休養に入ってから1〜2年は仕事をしなかったんです。ただ、それだけだと自分も嫌になってきていたし、頭の隅には自分もこういう生活から抜け出して、よくなりたいという思いがありました。たまに仕事でプロアマに参加していた時も、『すごくいいものを持っているのに、もったいないから試合に出てみてよ』と言ってもらったり、『成績はどうでもいいから、ただ森田理香子が試合に出ているだけでうれしい人がいるんだよ』っていう声を、いろんなところで聞くようになったんです」

 人のためにゴルフをするのも悪くない――。ゴルフは自分との戦いでもあるが、歳を重ね、たくさんの人と出会う過程でゴルフとの向き合い方も大きく変化した。

「自分の家族もそうです。お父さんもお母さんも私が試合に出るのをすごく楽しみにしていたんです。でも、私が試合に出なくなったとたん、ツアーをまったく見なくなったんです。私も同じで、(ゴルフの)インターネットもテレビも見なくなり、誰がどんな成績なのかもわからないくらい、興味がなくなってしまったんです。とくに、お父さんは試合を見にいくのを生きがいにしていた人だから(笑)。実際に復帰することになって、想像以上に周囲がすごく楽しみにしてくれているのを実感しています」

【若手のレベルは上がり、コースセッティングも変わったが】

 そんな森田が、家族やファンに大きな喜びを与える試合があった。先日、10月5日に行なわれた「センコーグループLADY GO CUP」で、森田と藤本麻子のペアが優勝したのだ。

「LADY GO CUP」は結婚・出産などを経た30代以上の女子選手を対象にしたツアー外競技。国内ツアー14勝の有村智恵と同2勝の原江里菜が発起人で、同ツアーは3年目を迎えている。

「優勝はめっちゃうれしかったです!緊張もしましたけれど、楽しく回れました。出場選手も子どもがいる方が多いので、みなさん子どもを連れてきているんです。だから、私も姪(兄の子)を連れていったのですが、優勝するところを見せられたのでよかった(笑)」

 こうした競技に出ながらゴルフの楽しみを実感ていく日々も、森田にとっては新たな経験でもある。人とのつながりが増えることで、気づきも増えた。

 今回の「LADY GO CUP」のプレイベントでもあるシンポジウム「スポーツの力で越えるジェンダーの壁〜多様性へのチャレンジ〜」が都内で開催されたが、ここに森田も出演した。主催側の有村が声をかけて実現したが、こうした場所に呼ばれる"立場"になったということでもある。

「ツアーはどんどん若い選手が活躍するようになって、30代以上になって結婚、出産もして生活している選手にもチャンスが与えられるのはすごくいいな、と共感しています。ゴルフだけじゃない人生のほうが長いわけですから。これを形にしている有村さんは本当にすごい。そんな先輩たちの力になれればなと思って試合に出ています。私はどちらかと言えば、先頭に立ってやるタイプではないので、陰で支えていきたい(笑)」

 とはいえ、今はツアーに復帰するなど"発信"していく立場でもある。

「自分が試合に出て周りに知ってもらったりとか、プロゴルファーは個人事業主で社長なので、自分のプロデュースも必要になってくる。私は表に出ていかないといけないポジションでもあるので、『LADY GO CUP』に出ることで30代以上で子育ても頑張っている選手たちがたくさんいるんだ、というのを伝えていきたいです」

 様々なことにチャレンジすることで、充実した日々を送るが、ファンの心理からすれば、やはり期待したいのはツアーで上位争いする姿を見ることだろう。
 
 近年は2年連続年間女王の山下美夢有、今季7勝の竹田麗央、さらには岩井明愛・千怜姉妹の躍進など、若手のレベルの高さを実感している。

「みんなほんまにうまい。私が試合に出ていた時は、どれだけスコアを出させないか、というセッティングが多かったと思うんです。当時は3日間大会が多かったですけど、グリーンも固くして速くしたり、ラフも長いコースが多かった。今はまた時代が変わって、米ツアーに通用する選手を育てるという意味合いで、伸ばし合いのコースセッティングをしたりもするので、どうしてもブランクのある私はそこになかなか慣れないというか、ガマン勝負が多かったので。今はピンが狭いところの奥に切られていても、ユーティリティーやウッドでどんどんピンを狙っていく。それが私はまだできてない。きっと攻め方やマネジメントに対する考えも違うんです」

【女子では珍しい"3番アイアン"もバッグイン】

 森田は、トレーニング方法やスイングについても、「今はYouTubeでトッププロのスイングにすぐに触れられて学べるし、クラブの進化もあると思います。私たちの時代は"見て覚えなさい"という時代でしたから(笑)」と笑う。道具の進化はもちろんのこと、欲しい物や情報が、求めれば手に入る環境の変化がツアー全体のレベルの底上げにつながっているのは正しい指摘だろう。

 それでもどこかで余裕があるのは、いまだ飛距離に自信があるからだ。「昔より飛んでいて、今はキャリーで260ヤードくらいはいっています。成績だしてナンボの世界なので、あんまり大きな声では言えへんけれど、球の質は私が上回っていると思います」。

 冗談っぽく、照れ笑いしながらそういうが、それが本音だろう。今季は推薦7試合の出場だが、ドライビングディスタンスは255.07ヤード。今季のツアー全体に当てはめれば、6位に入る数字だ。

「飛ぶのが有利だし、短いクラブで打てるのはメリット。アプローチだったり小技がまだうまくないので、そこがよくなれば試合ではいけると思います。もちろん成績が出ないことに対してはめっちゃ悔しいっす。一気によくなればいいですが、それだけだと人生楽しくないから(笑)。休んでいる間は、こういうプレッシャーも緊張感もなかったから、試合に出ることで雰囲気も楽しめるし、月1くらいで挑戦できている今がすごく幸せです」

 クラブセッティングもすべて自分の好みに変え、「昔はユーティリティーが嫌いだったけれど、入れていたんです。でも、今は1本も入れていなくて、すべてアイアンです。3番アイアンを入れています」とのこだわりだ。

【今はレジェンズツアーも視野に】

 すでに公にしているが、シーズン後のQT(来季のツアー出場資格を争う予選会)には予定どおりに出場する。ただ、フル参戦の出場権を得たとしても、それを行使するつもりはないという。理由も明確だった。

「今年は推薦でツアー7試合の出場ですが、推薦で出るのと違うのは、自分のQTランキングがあれば、下部の『ステップ・アップ・ツアー』にも出られますよね。そうなると平日に試合があったり、『LADY GO』の試合もあったり、いろんな大会に出られるんです。自分のウエアや解説、企業プロアマの仕事などもあるので、私はすべてこなしたいんです。ツアーに連戦で出場すると自分の仕事ができなくなるというのがひとつ。それに、プロアマに出るとお客さんから学ぶことが多いんです。プロゴルファーの世界はすごく狭いから。人生の勉強でプラスになることが多い。ツアー一本で生きていたいとは思っていないですから」

「もう自分の手からクラブが離れることはないですか」、と聞いた。

「ないですよ!この先は(45歳以上の)レジェンズツアーにも出ようと思っていますから」

 ゴルフしかしてこなかった元賞金女王は、いちどはゴルフが嫌になり離れたが、今では"ゴルフ"を通じて生まれるすべてのものを吸収しようとしている。「まだまだ人生、学ぶことばかり」と最後に笑った。

【Profile】森田理香子(もりた・りかこ)/1990年1月8日生まれ。京都府出身。
ゴルフ練習場を経営していた祖父の影響で、8歳からゴルフを始める。京都学園高3年時にアマチュアとして出場した『日本女子オープン』でローアマ(16位)を獲得。2008年にプロ転向。美しいスイングから繰り出される圧倒的な飛距離を武器に、2010年「樋口久子IDC大塚家具レディス」でプロ初勝利。2013年には年間4勝をあげ、賞金女王にも輝いた。その後長らく不調に苦しみ、2016年には賞金シードからも陥落。2018年6月「ニチレイレディス」を最後にツアー休養を発表。今年「ダイキンオーキッドレディス」で6年ぶりに復帰した。ツアー通算7勝。

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