Androidスマホが“短命”なのは過去の話? OSアップデートが長期化されたワケ

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2024年10月27日 13:21  ITmedia Mobile

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スマートフォンのOSアップデートに関する最新動向を解説する

 今から約2年前の2022年10月に「Androidスマートフォンの“寿命”がiPhoneよりも短い理由」というコラムを執筆した。当時を振り返りつつ現状を見てみると、この認識は古いものになりつつあるようだ。


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 今回はこの題に対して、最新の状態にアップデートした内容で「AndroidスマートフォンはiPhoneに対して寿命が短いのか」について考えてみよう。


●メーカーが公表しているOSアップデート期間 最長はサムスンとGoogle


 まずは直近に発売されたスマートフォンのソフトウェアアップデート期間についてまとめてみよう。2年前とは異なり、Androidスマートフォンではソフトアップデート提供期間を公表するようになったことが大きな変化だ。アップデート提供期間は日本でも知られるメーカーを中心に以下の通りだ。


・Apple:非公開(直近では7年間のOSアップデート)


・サムスン電子:7年(2024年以降のGalaxy Sシリーズ、Fold、Flipシリーズに限る)


・Google:7年(Pixel 8以降)


・Xiaomi:4回(グローバルモデル、セキュリティアップデートは5年)


・OPPO:4回(グローバルモデル、セキュリティアップデートは5年)


・HONOR:4回(グローバルモデル、セキュリティアップデートは5年)


・シャープ:3回(セキュリティアップデートは5年)


・ソニー:3回(セキュリティアップデートは4年)


・モトローラ:3回(セキュリティアップデートは4年)


・FCNT:3回(セキュリティアップデートは4年)


・ASUS:2回(セキュリティアップデートは4年)


・ZTE:非公表


・京セラ:非公表


・参考:Huawei:6回以上(HarmonyOSアップデートを含む)


 ソフトウェアのアップデート期間が長いことで知られるApple iPhoneは、アップデート提供を行う期間を非公開としている。直近の例になるが、2018年発売のiPhone XSは最新のiOS 18へのアップデートが行える。これはOSアップデートが6回行われ、最新OSの状態を7年間利用できることになる。


 また、AppleではOSアップデートが終了したiPhone 8などの古い機種にも、セキュリティアップデートを度々提供している。アップデート提供期間の長さなら他社の追従を許さない。


 一方、ここ数年でAndroidスマートフォンにも変化が見られた。サムスンとGoogleは一部機種に対し、7年間のOSアップデート、セキュリティアップデートを行うと公表した。Googleは2023年発売のPixel 8から、サムスンはGalaxy S24シリーズ以降のハイエンド機種が対象だ。今後は Aシリーズなどのミッドレンジ端末もアップデートの長期化が考えられる。


 長期のサポートで有名なHuaweiもソフトウェアアップデートの提供期間は非公表としている。端末によっては6年以上のアップデートを提供している。Huaweiの場合、Android OSのアップデートではなく、HarmonyOSのアップデートという形に変化しているため、通常のAndroidスマートフォンと同じ指標で評価できない点は留意したい。


 また、中国向けに今後発売する端末は完全な独自OS「HarmonyOS NEXT」に移行する。既存機種にもアップデートが予定されており、HuaweiのスマホはAndroidのカテゴリーから離れる見込み。これによりAppleのようなソフトウェアの一括管理ができるため、より長期のアップデートを提供できる可能性がある。


 それ以外のメーカーも平均して4〜5年のソフトウェアアップデートを提供すると表明している。特にグローバル展開をするXiaomi、OPPO、HONORはセキュリティアップデートを含め、5年間のソフトウェアアップデートを提供すると公表している。


 前項のサムスンやGoogleと異なり、OSアップデートの回数とセキュリティアップデートの提供年月が異なるため、OSアップデートは回数、セキュリティアップデートは年数という形で表記される。


 日本市場で強いメーカーでは、シャープが2023年発売の「AQUOS R8」から3回のOSアップデートと最大5年間のセキュリティアップデートを行うと公表している。ソニーやFCNTも上位機種にて、3回のOSアップデートと4年間のセキュリティアップデートを行うと公表するなど、日本メーカーも「アップデート期間を公表する」流れが恒常化している。


●長期化するソフトウェアアップデート アップデート期間を公表する理由は?


 ここにきて「ソフトウェアアップデート期間を公にする」方向に各社かじを切り始めた。この理由について、他社との差別化を図る以上に、各国の法規制に対応するための措置という側面があるようだ。


 大きなところでは、2024年7月に施行された米カリフォルニア州の「修理する権利を認める法律(SB-244)」の存在がある。ここでは、同州で販売される100ドルを超える電子機器は発売から7年間の修理パーツ供給、ソフトウェアアップデートの提供を義務付けている。長期アップデートを行うiPhoneに加え、PixelやGalaxyが7年のOSアップデートを公表してきた背景には、この州法の存在がかなり大きいと考える。


 この流れはEU域内でも加速している。EU域内では2025年6月より施行予定の「スマートフォン、スマートフォン以外の携帯電話、コードレス電話およびスレート タブレットのエコデザイン要件」によって、スマートフォンの保守パーツは7年間、ソフトウェアアップデートは製品の販売終了から最低5年間提供するよう定められている。EU域では製品の販売終了から5年間の提供となるため、旧機種を併売するメーカーは対象機種に対してより長期のアップデートを提供する必要がある。


 また、どちらの法律も「ソフトウェアアップデートの提供」としており、OSのバージョンアップではない。コストを抑えた廉価機種では、セキュリティを改善するアップデートを中心に配信されると考えた方がよさそうだ。


 これらの法律のため、米国やEU域で販売するスマートフォンは、今後ソフトウェアアップデートの年数が長期化するとみられる。また、米国やEU域にならって「ソフトウェアアップデートの期間」を定める法律や規制を整備してくる国や地域が増えることも想像できる。特にグローバル展開するメーカーでは、ソフトウェアアップデートを行う期間の長期化、期間を公表する流れが恒常化すると考える。


 日本ではどうだろうか。日本でもシャープやソニー、FCNTがアップデート期間を公表する方針をとり始めた。これはサムスンやGoogleの長期アップデートの動向に加え、国内の消費者動向調査の結果のもと、4〜5年のソフトウェアアップデート期間に設定していると考える。


 それでもなお、日本ではソフトウェアアップデート期間をiPhoneや各社の直販モデルといったメーカーが設定するものもあれば、従来通り通信キャリアが設定するものもある。そのため、同じ機種でもアップデート提供期間は一律ではないのだ。


 また、グローバルでは4回のOSアップデート、5年のセキュリティアップデートを公言したXiaomiや OPPOも日本では非公表としている。実際にXiaomi 12T Proのソフトバンク版はアップデートの提供が遅いという声があり、今後もしっかりアップデートを行うのか、不安が残る。


 これは日本向けにFeliCaや各種通信キャリア向けのカスタマイズが行われており、海外向けとは異なる仕様のソフトウェアが入っていることが理由と考えられる。


●Androidスマホも寿命が伸びた OSアップデートの長さで選べるように


 AndroidスマートフォンでもPixelやGalaxyのように7年間のソフトウェアアップデートを提供する例も現れ、多くのメーカーがアップデート期間を明確な数字として示してきた。


 つまり、長くスマートフォンを安心して使いたいユーザーは、長期のアップデートを提供してくれる機種を選んで利用できる状況にある。従来のようにメーカーや通信キャリアによって端末のアップデート期間が異なり、機種によっては期間が短いといった「くじ引き」のような状況ではなくなりつつある。


 現状、長期のアップデート提供するスマートフォンは、主に10万円を超えるハイエンド端末が中心だ。一方で、メーカーによっては比較的廉価なミッドレンジスマートフォンにも長期のアップデートを保証している。2万円台で購入できるシャープのAQUOS wish4などが良い例だ。


 欧州や欧米の法律などを鑑みると、今後は比較的廉価なスマートフォンにも長期のソフトウェアアップデートが提供されると考える。この場合はOSのバージョンアップよりも、セキュリティアップデートの形で提供される可能性が高いと考えられるが、長く安心して利用できる点に変わりはない。


 さまざまな制約からアップデート期間を一律にすることが難しかった日本市場でも、この2年でアップデート期間を明確に示すメーカーが増えてきた。これはメーカーが独自に取り扱うオープンマーケット版(直販版)の機種が増加したことも大きな理由だ。


 2024年に発売された機種を見ても、キャリア専売の機種はXiaomiの「Redmi Note 13 Pro」くらいで、それ以外の機種はおおむねオープンマーケット版が存在する。価格設定やサポート期間にキャリアの意向が絡まない端末のため、OSのアップデート期間を明確に示すことができると考える。


 一部海外メーカーのスマートフォンでは、FeliCaや通信バンドをはじめグローバル向けと異なる仕様を理由に、長期のアップデートが難しい側面がある。アップデート期間がグローバル版と同等にできない、提供時期が遅れるなどの理由から、日本向けモデルではアップデート期間を非公表にしているのではないかと考えられる。


 それでも日本メーカーも「ソフトウェアアップデート期間」を明確にしてきた以上、海外勢もこの流れに追従しなければ「長く使えるか?」という点で消費者に不透明でマイナスな印象を与えてしまう。


 これはメーカーにとっても選択機会の損失になりかねない。そう遠くないうちに多くのメーカーが「アップデート期間の明確化」を図り、日本メーカーなどに追従してくることになるはずだ。


 OSアップデートに関する記事を書いた2年前から、「AndroidスマートフォンはiPhoneと比較して寿命が短い」という状況は大きく変わった。この変化は消費者に「スマートフォンの期待寿命」で選ぶという新しい選び方を与え、消費者にもプラスとなると考える。


 近年の長期アップデートを保証するAndroidスマートフォンを見ていると、「Androidスマートフォンの寿命はiPhoneよりも劣る」という認識は過去のものとなりそうだ。


●著者プロフィール


佐藤颯


 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。


 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。


・X:https://twitter.com/Hayaponlog


・Webサイト:https://www.hayaponlog.site/



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