生成AI活用で「間違いを恐れる」日本 米国に先越される

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2024年10月28日 07:31  ITmedia ビジネスオンライン

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生成AIの業務活用で先行していた日本が米国に追い抜かれたという

 生成AIの業務活用で先行していた日本が米国に追い抜かれた――。PwCコンサルティングの調査で、そんな状況が見えてきた。米国企業が積極的に対外向けサービスのリリースを目指す一方、日本企業はリスクに慎重で、インパクトが小さい社内向けのユースケースにとどまっているようだ。これから日本企業に求められる変化とは?


【画像】米国が生成AI活用で日本を追い抜いた。調査結果を見る


●「テキスト生成」に偏る日本 米国は?


 PwCは4〜5月、日米で売上高500億円以上の企業に所属する従業員、課長職以上、生成AI導入に関与する社員などを対象に調査を実施。日本から912人、米国から300人の回答を得て、結果を比較した。


 生成AI活用の推進度合いを比較すると、日本は「活用中」(業務で生成AIを利用)が43%、「推進中」(ユースケースの企画、技術検証)が24%で、計67%が推進中以上だったのに対し、米国は「活用中」43%、「推進中」48%で計91%が推進中以上となった。


 PwCが2023年10〜11月に実施したCEO意識調査では、生成AIの業務活用の割合は日本が50%で、米国(38%)、欧州(28%)、中国(27%)と主要他国をリードしていたが、今回の調査で、日本が米国にリードを許した形だ。


 生成AIの活用効果に対する期待の受け止め方も、日米で差が出た。


 「期待を大きく上回っている」と答えた割合は、日本が9%だったのに対し、米国は33%と日本より24ポイント高い結果に。反対に「期待を下回る」とした回答は、日本が米国よりも7ポイント高くなった。


 期待の受け止め方に差が出た要因を探ると、日米で生成AIのユースケースに違いがあることが見えてきた。「期待を大きく上回っている」と答えた企業が生成AIをどんな用途で使っているか調べると、日本では、報告書やメール作成、要約、校正など「テキスト系」の活用に片寄っている傾向が浮かび上がった。


 一方、米国ではテキスト系だけでなく、イラストや画像、音楽生成などの「画像/音声生成系」、プログラムコード生成、カスタマーサービスの自動化など「開発/新規ビジネス系」など、より幅広く活用されている様子が分かった。


 また、生成AI活用の指標とする項目について、日本は「社員生産性」「工数・コスト」と答えた割合が米国より20ポイント以上高かったのに対し、米国は「顧客満足度」と答えた割合が日本より29ポイントも高くなった。


 PwC執行役員パートナーの三善心平氏は「日本は既存業務の効率化が生成AIを活用するメインの目的となっているのに対し、米国では顧客体験価値の向上などが重視されている」と分析する。


 また、日本では「何となく分からない」といった漠然とした不安や100%の精度を保証できないという理由から、リスクの小さな社内向けのユースケースにとどまっている傾向があるという。反対に米国では、リスクは承知の上で、積極的に外部向けサービスのリリースを目指す傾向があると三善氏は指摘する。


●日本企業に求められる変革は?


 生成AI活用で足踏み状態にある日本企業は、今後どう動くべきなのか。三善氏は「やり方を変えるしかない」として以下の3点を挙げる。


(1)挑戦する意欲のある人材に予算と権限を委譲して推進する


(2)適切なリスク分析と具体的な対策を検討する


(3)生成AI活用によりマネジメントを高付加価値業務へ


 (1)のように、パイオニアになることをためらわない意欲のある人材を推進責任者に据えることで、事例主義からの脱却を図ることが求められるという。(2)の観点では、100%の精度を求めるあまり、生成AIを活用しないことによる機会損失こそリスクと捉えるべきだと指摘する。(3)では、マネジメント層が積極的に生成AIを活用することで組織に意識変革をもたらすべきだと強調する。


 生成AI活用は、業務効率化といった社内向けのユースケースだけではなく、新規サービスによる新たな顧客体験価値の創出といった、より大きなインパクトをもたらす領域に目を向ける必要がありそうだ。



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