「店長、本音でいいんですか……?」 ユニーが値引き商品を「パート」に決めてもらう納得の理由

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2024年10月29日 07:11  ITmedia ビジネスオンライン

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東海地方を中心にスーパー「アピタ」や「ピアゴ」を展開するユニー(提供:PPIH、以下同)

 東海地方を中心にスーパー「アピタ」や「ピアゴ」を展開するユニー(愛知県稲沢市)が、ユニークな値下げ施策を行っている。一般的に、販売する側が値下げする商品や価格を決めるが、ユニーは従業員が「値下げしてほしい商品」を投票。その結果から、値下げする商品や価格を決めている。こうした施策を実施する経緯や反響について、ユニーの販促企画部担当者に話を聞いた。


【画像】価格総選挙の様子(全11枚)


 ユニーでは同施策を「価格総選挙」と呼び、これまでに4月、7月、9月の計3回行っている。従業員は自身の働く店舗で値下げしてほしい商品を最大3点選び、希望の価格と合わせてPCかスマートフォンのアンケートフォームから投票する。投票期間は2週間で、対象商品は食品(総菜と生鮮食品を除く)と日用消耗品だ。


 4月に行った1回目の価格総選挙は、約2.3万人の従業員を対象に実施。2回目以降は、パートとアルバイト従業員だけが投票できるようにした。担当者は投票者を絞った理由について「パートとアルバイト従業員は、店舗の商圏で生活するお客さまでもある。近所のさまざまなスーパーを見ている彼ら・彼女らが持っている『他の店の方が安い』などの情報を投票結果に反映させることで、周囲の競合他社との価格競争に勝つことができる」と説明する。


 投票時には、PCやスマートフォンの操作が苦手な人もいたため、投票箱を設置したり、社員が代理で入力したりと工夫した店舗もあったという。


●値下げする商品を従業員の投票で決める理由


 なぜ、値下げする商品を従業員の投票で決めることになったのか。担当者は「物価高騰で値上げが続く中、買い物が楽しいものではなくなってしまっているのを感じていた。企業が一方的に提案するのではなく、利用客に一番近い立場のパートやアルバイト従業員の声を聞くことで、本当に喜んでいただける値下げになるのではないかと考えた」と説明する。


 投票について、従業員からは「本音を言っていいのか不安だった」という声が聞かれたという。「従業員としてではなく、お客として投票することに慣れていなかったため、感覚の切り替えが難しかった」と話す従業員もいたそうだ。


 しかし、投票した商品が実際に値下げされたことを受けて、「本音で投票していい」と従業員の意識が変わった。その変化は投票率にも表れている。約2.3万人の従業員が参加した1回目の約60%、パートとアルバイト従業員のみが参加した2回目は約70%、3回目は約75%に増加した。


 今では従業員から「お客さまの声を代弁する気持ちで投票している」という意気込みも聞かれるようになった。「徐々に遠慮もなくなり、消費者の声をストレートに代弁する投票結果に近づいているのではないか」(担当者)と感じているという。


●投票の結果、どんな変化があった?


 実際に値下げした商品は、牛乳やインスタントコーヒー、卵、食パンなど毎日の生活に欠かせない購買頻度の高い商品が多数を占めた。従来の値下げと価格総選挙の値下げを比較すると、「価格総選挙ではよりPI値(レジ通過客1000人当たりの購買指数=お客の支持率)が高い商品が選ばれている傾向がある」(担当者)という。


 価格総選挙により値下げされた商品の購入客数は、前年比で1回目が約111%、2回目が約113%と増加。利用客の中には価格総選挙の取り組みをテレビなどで知り、遠方から来店した人もいたそうだ。直接的な意見の収集はしていないが、担当者は「購入客数などの数値からも期待を寄せていただいているのではないか」と話す。


 加えて、価格総選挙により値下げされた商品の人気ランキングでは、地域ごとの特色が見られた。例えば、中京エリアはみそ、静岡・山梨エリアは果汁グミ、北陸エリアは地元メーカーの調味料が上位にランクイン。関東エリアでは、値上げが続く食用油や小麦粉が人気を集めた。


 担当者によると、地域によって競合他社が違うため、票が集まる商品も地域や店舗によって違うとのこと。お互いの店舗の値下げ幅も、店長同士がお互いの店舗の値下げ結果を見せ合い、参考にすることもあったそうだ。


 ユニーでは、「トク得セール」や毎週の「火曜特売」など、通常の安売りも実施している。これらと並行して、今後も3カ月に1度のペースで価格総選挙を実施予定だ。



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