手作りポップコーンの材料として売られている「ポップコーン粒」を土に植え、大収穫した女性の投稿に注目が集まり、「増やしてる人初めて見た!」「あれって種だったの?」「衝撃的…」など驚きの声が寄せられている。投稿者は家庭菜園歴5年の“しばみゆ”さん(kinmokusei@akinosora)。1粒のポップコーンから、“袋いっぱいのポップコーン”を作る目からウロコの栽培と家庭菜園の魅力について話を聞いた。
【画像】土に植えたポップコーン、5ヵ月後にどうなった…!?
■普通のトウモロコシを乾燥させたものじゃない? ポップコーンの正体にも驚く人が続出
――食用ポップコーンのあの粒が発芽するとは、本当に驚きました。4ヵ月で収穫、その後3週間の乾燥を経て、最後には紙袋いっぱいのポップコーンに…! ポップコーン栽培は、家庭菜園ファンの間ではよく知られているテクニックなのでしょうか?
「ポップコーンを育てること自体が珍しいので、家庭菜園ファンでも知らない方のほうが多いと思います。茹でて食べられるスイートコーンを育てるほうが一般的ですし、栽培するなら種子として売られているものを購入するので『食べるために買ったポップコーンを育ててみた』という方は少ないのではないでしょうか」
――確かに、食べるために買ってくるので、植えてみようという発想にはなかなか至りません。
「『食べ物』だと思っているから『種』として認識できないという、人間の固定観念が邪魔している部分があるのかもしれませんね(笑)」
――スーパーで売られているポップコーンには味付きのものもありますが、どのタイプでも発芽するのでしょうか。
「全種類(メーカー)試したわけではないので分かりかねますが、味付きのタイプも発芽はするのではないかと思います。ただし、油分や塩分等で発芽しても生育障害を起こし、上手く育たないかもしれません…。やってみないと分かりませんね。面白い宿題を頂きましたので、次回チャレンジしてみたいと思います!」
――結果がとても楽しみです! ちなみに、恥ずかしながら「ポップコーン」と「スイートコーン」の違いも、今回初めて知りました…。
「今回植えたのは、皆さんが普段よく食べている『スイートコーン』のトウモロコシではなく『爆裂種(ばくれつしゅ)』というもの。粒(皮)がとても固く、甘みも無いので茹でて食べても美味しくはありません。『ポップコーンって普通のトウモロコシを乾燥させてるんじゃないの?』とか『あれって種だったの?』という声がとても多くありましたが、一般的なスイートコーンを乾燥させてもポップコーンにはならないんですよね」
■「本格的に育てたい場合は、栽培用の種を購入するのがおすすめ」
――今回の投稿をみて「ポップコーン栽培」に挑戦したいと思った人も多いかと思います。上手に栽培するためのアドバイスをお願いします。
「私は好奇心から食用のポップコーンを種として育てましたが、本格的に育てたい場合は、種を購入して栽培するのがおすすめです。プランターで育てる場合は深さ30センチ以上で、土が25リットル以上入るものを選んでください。種まきの時に鳥に食べられないよう保護すること、本葉が5、6枚出た頃と雄穂(1番上に出る穂)が出た頃に追肥をするのもポイントです」
――人工授粉をするタイミングはいつ頃でしょうか?
「人工授粉のタイミングは、雄穂の花粉が飛び出した頃ですね。何度かに分けて行えば受粉の確率もアップしますよ。トウモロコシは風の力で受粉する『風媒花』ですが、他家受粉といって他の株からの花粉の方が受粉しやすい植物です。だから、栽培する時は1株ではなく複数株育てる必要があります。その後は枯れてから収穫し、風通しの良い軒下で充分乾燥させれば、ポップコーンにして楽しめます」
――栽培の際に気をつけることがあれば、教えてください。
「トウモロコシは『アワノメイガ』という虫の被害にあいやすいです。この虫は雄穂から茎、雌穂の順に食べていくので、雄穂をいつまでも付けておかず、切り取るようにしてください。色々と話しましたが、ポップコーンは一般的なトウモロコシより育てやすいので、あまり気負わず気軽に育ててもらえたらと思います!」
――動画の最後で披露していた、封筒を使ったポップコーンの作り方も目からウロコでした! 市販のものはひと粒ずつバラバラになっていますが、軸についた状態のままで加熱しても大丈夫なのですね。
「丸ごとレンチンしたのは、実は軸から外すのが面倒だったからなんです(笑)。乾燥した種はかなり硬いので、作業がとても大変でして…。この方法は楽ちんですが、全部を弾けさせるのは少し難しく、弾けないで終わっちゃうこともあります」
■封筒を使ったポップコーンの作り方「炭にした経験があるので、加熱はほどほどに」
――封筒でポップコーンを作る時のポイントを教えてください。
「動画では、A4サイズほどの紙封筒にポップコーンを入れ、レンジ強で3分加熱しています。少しするとポンポンと弾ける音が聞こえ始めるので、音がしてから30秒位で一度取り出し、封筒を開けずにシャカシャカと揺すってください。表裏を逆にしてレンジに戻したら、また時間まで加熱します。弾ける音が完全にしなくなったら封筒を開け、弾けていない部分が多めなら、1分位ずつ様子を見ながら同じ作業を繰り返します」
――ぜひ試してみたいと思います。レンチンする時に注意することはありますか?
「先に弾けたポップコーンが焦げたり、封筒から煙が出たりするので、追加の加熱はほどほどにしてください。私は全部弾けさせようと欲張ったせいで、ポップコーンを炭にした経験があります(笑)。また、音がしなくなっても突然弾けることがあるので、封筒を開ける際は要注意です。軸もとても熱くなっているので、火傷には気をつけてくださいね」
■「土をいじり自然に目を向けることで、優しい気持ちを取り戻せるのも、家庭菜園の良いところ」
――改めて、“しばみゆ”さんが思う家庭菜園の魅力についてお聞かせください。
「家庭菜園の魅力は、何といっても感動できることです。種から芽が出た時や、茶色の土を持ち上げて、黄緑色の芽が顔を出した時など、『やった〜!』という気持ちで胸がいっぱいになります。また、どんなに育てるのが下手でも、野菜たちは何とかして育とうと一緒に頑張ってくれる。だからこそ、収穫した時の形がいびつでも、サイズが小さくても、とても愛おしく思えて、大切に味わうことができるんです」
――自分で育てた野菜を食べる瞬間は、感動的でしょうね。
「同時に、今まで当たり前に買っていたスーパーの野菜が立派なことに気づき、育てている農家さんの技術力の高さ、大変さを思い知りました。今では食べ物に対してだけでなく、懸命に作ってくださっている農家さんへの感謝の気持ちでいっぱいです。慌ただしい日常でイライラしたり、悩んだりすることもあると思いますが、土をいじり自然に目を向けることで、優しい気持ちを取り戻せるのも、家庭菜園の良いところかもしれませんね」
――最後に、これからの季節に初心者が家庭菜園をするとしたら、どのような野菜・方法がおすすめか教えてください。
「これからの時期は涼しくなるので作業がしやすく、虫も少ないので初心者にはぴったりな季節です。おすすめの野菜は、ズバリ『育てたいもの』です! 栽培難易度を考えることも大切ですが、どうせなら自分が好きな野菜を育てた方が楽しいし、意欲も湧くじゃないですか(笑)。食べることを想像して楽しむのも重要なことだと思います」
――初心者だと、最初に失敗を恐れてしまいがちですよね。
「家庭菜園向けの野菜は大抵、育てやすいように品種改良してあります。失敗を恐れず、まずは種を蒔いてみてください。何を育てればいいか迷う場合は、小松菜やほうれん草、春菊などの葉物野菜がおすすめです。育てやすいですし、時期をずらして種を蒔くと、長い期間収穫を楽しめますよ」