長期的な成功を支えるリスクヘッジの重要性
柴田雄平氏(以下、柴田):振り返ると、起業してから10年間、失敗だらけでした。本当にたくさんの失敗を経験しました。契約やお金の問題もあり、いろんな出来事がありました。例えば、上場企業との契約破棄や、支払い済みの取引先が倒産してしまったり、人材の離職や横領など、さまざまなトラブルがありました。
しかし、エジソンの言葉で「1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」という言葉があるように、失敗を通じて多くのことを学びました。
数億円単位の損失もありましたが、その経験が今に活かされていると感じています。事業を運営されているみなさんも、失敗を経験している方が多いと思いますが、事業が大きくなるほど、失敗の規模も大きくなることは避けられません。だからこそ、リスクヘッジは重要です。できるだけリスクを避けられる部分はヘッジしておくことが、長期的な成功につながると考えています。
僕も、みなさんが事業で成功することを心から願っています。もし、何か参考になる部分や質問があれば、気軽にX(旧Twitter)のDMなどで「セミナーを聞きました」と送っていただければと思います。
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10個にまとめると、こういった内容になりますが、今後もkoujitsuとしても、僕個人としても、さまざまな交流が生まれていけばありがたいと思っています。ぜひ、引き続きよろしくお願いします。
質問があれば、ぜひ書いていただければと思います。「最低契約料金を引き上げるタイミングと、その際のサービス内容の見直し」について。お答えします。
まず、最低契約料金を引き上げる際には、いったん営業利益からすべてを見直し、「どの人が何時間働くか」「その工数にどれくらいの費用がかかるか」を細かく計算しました。お客さまには、1ヶ月前に事前告知し、その間に契約を更新するかしないかの判断をお願いするかたちで進めました。
引き上げのタイミングはバラバラで、制作に関しては整理に時間がかかり、約2ヶ月ほどかかりました。マーケティング部門は、サービスメニューとの照らし合わせが必要だったため、半年ほどかかりました。重要なのは、どの事業モデルが利益を生み出せるかをきちんと見極めたことです。
お客さまとのすり合わせはかなり丁寧に行いました。値上げに驚かれる方もいましたが、話し合いを進めると、ほとんどのお客さまは「今までが安すぎたよね」と納得してくれました。ただ、利益率の低いお客さまについては、少し揉めたケースもありましたが、最終的には契約を更新していただけました。事業モデル上厳しいお客さまもいましたが、契約終了に至ることは少なかったですね。
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みなさんの中にも、こういったケースがあるかもしれませんが、話し合いの大切さをあらためて感じました。
Zoom顔合わせに顔を出さない…炎上リスクの高い顧客の特徴
次の質問ですね。「成長期の会社の悩みとして、案件を取りたいけれど、クライアントが厳しく、炎上しそうな案件を受けるべきか」という内容ですね。
僕たちの会社では、案件の単価が高いか低いかに関わらず、クライアントとの関係にリスペクトが欠けている場合、案件は基本的に受けない方針です。例えば、「マーケティング会社だから何でもやってくれるだろう」とか、「広告を回しておいてくれ」というように、こちらへのリスペクトが欠けているクライアントには注意を払っています。
逆に、こちらからもその会社に尽くしたいと思えない場合、いくら単価が高くても受けないことが多いです。案件を受けるかどうかの判断基準としては、その会社のために時間をかけて成果を出したいと思えるかどうかが大きいです。お金だけではなく、時間と労力をかけて本当に成果を出せるか、尽くしたいかどうかが重要です。
たまに態度が非常に悪いクライアントもいますよね。例えば、初回の会議にZoomで顔を出さない、あるいは「これやっておいてくれたらいい」的な態度で接してくる場合です。そういった会社には最初から「断っていいんじゃない?」と判断します。シンプルに「ありがとう」「ごめんなさい」が言えないようなクライアントは、炎上リスクが高いので、最初から受けないほうがいいと思っています。
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最終的には、その案件がどうしても受ける価値があるのか、リスペクトがあるかどうかで判断し、炎上リスクが高い案件は早めに断るのがベストだと感じています。
炎上後の対策として、僕たちはまず部長レベルでお客さまに対応します。それでも解決できない場合は役員が対応し、最終的に役員でも難しい時は僕が対応するという流れです。ただ、僕のところまで来ることはあまり多くありません。
本当に収拾がつかない時は、返金を検討します。あきらかにこちらが価値を提供できていない場合は返金しますが、実際にはこちらが十分な価値を提供しているにもかかわらず、理不尽な要求をされることもあります。そのような場合は、契約ごと破棄するかたちで対応することもあります。
ただし、その際は必ず弁護士を通じて対応しています。法的な観点から注意喚起を行ったり、あまりにも暴力的な言葉や態度を取るお客さまには法的な対処が必要です。特に、若い経営者がそうした状況に巻き込まれると大変だと思いますので、僕たちが先に対処しておくべきだと感じています。
「尽くしたいくらい良い会社とつき合いたいっていう価値観」をいうコメントをいただきました。これは本当に僕たちが大切にしているところです。
顧客との長期的な関係性がもたらす価値
次の質問「お客さん候補の企業や案件の属性はどのように変化しましたか?」についてですが、僕たちのLTV(顧客生涯価値)は基本的に12ヶ月以上、平均で36ヶ月ほどです。長期的な付き合いが多くなり、マーケティングのニーズが増える一方、コミュニケーションは楽になります。長く付き合うと「これはこういうことだよね」というように、言いたいことが分かるようになってきます。
企業の案件の属性自体は大きく変わっていませんが、紹介される企業は似たような、社長や役員が非常に良い人たちばかりになりました。変な会社からの案件が減ったのは、僕がしっかりと選別しているからだと思います。
次に「採用を決めた後、数ヶ月経って合わないと感じた場合、どのように対応し、改善策を伝えるか」という質問についてです。
現在のところ、インターン期間でほぼ見極められているため、大きな問題は起きていません。しかし、もしそうしたケースが発生した場合、まずは1on1でその状況をしっかり話し合います。社長、役員、部長など、上司がどう話すかが大事ですが、会社が何を求めているのか、要件定義をきちんと行うことが最初のステップです。
その上で、社員が提供する価値が不足している場合、足りていない部分を促してサポートすることが重要です。直接的にフィードバックし、改善点を一緒に探るかたちで進めるのが良い対応策だと思います。
よく話すのは「理解しているかどうか」という点です。こちらが何を言っているのかを相手が理解できていない場合、まずはその理解を促すことが必要です。なぜ理解できていないのかを確認し、理解してもらった上で、次に「それを実行するかどうか」を確認します。
社員の成長を引き出す効果的なフィードバック
ここで実行しないという選択をした場合、僕は「給料が変わらなくてもいいの?」と質問します。「もし給料が変わらなくて良いなら、うちでは成長機会がないから辞めたほうがいいんじゃない?」と、率直に伝えることもあります。ただ、これは解雇を促しているわけではありません。あくまで「成長の機会がないよね」という点を明確に伝えるだけです。
うちの給与制度では、昇給は評価に基づいて行われます。自動的に給料が上がる仕組みはないので、「昇給の機会を失っている」という事実をしっかり伝えます。もしそのままの給料で働き続けたいと言うのであれば、「その作業だけを続けてください」と伝えます。評価に値しないということをきちんと伝えるかたちです。
僕たちの会社では、このようなケースはほとんどありませんが、採用後にこうした問題が生じる場合もあると思います。会社が目指すMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や売上目標、利益目標を共有していく中で、多くのメンバーが自発的に行動を変えていくと感じています。
全体的に、このようなプロセスを通じて、社員一人ひとりが自分の役割や成長機会を理解し、それに基づいて行動するようになることが理想だと考えています。
例えば、売上10億円の会社が20億円を目指すとなると、単純計算で同じ人数で倍の成果を出さなければならないわけです。そうなると、会社の成長スピードについていけない社員も出てきて、価値観や文化が合わなくなって辞めるケースがあると思います。そういった場合、早めに気づいて対処するための1on1が重要です。上司がきちんと伝えるべきですが、難しい場合は社長や役員が対応することも大事ですね。
紹介案件の成約前に意識しているポイント
次に「アポ初日でのクロージング」についてのご質問ですけど、僕の場合、初日でクロージングすることが多いです。これには事前情報が大きく関わっていて、アポの前に僕たちのサービスや実績を調べてきてくれる企業が多いからだと思います。さらに、X(旧Twitter)のコメント上で「お願いしたい」と言われて、そのまま契約が決まることもあります。
特に多いのが、紹介経由のケースです。すでに成果を出しているクライアントが「柴田さんのところに頼むべきだ」と言ってくれることで、初回の提案書を作る前に契約が決まることがあります。これが初日でのクロージングが頻繁に起こる理由の1つですね。
意識しているポイントは3つあります。1つ目は提供価値を明確化しておくこと、2つ目は金額をしっかり伝えること、3つ目は実績や信頼をきちんと見せることです。この3つが非常に大切です。
また、紹介してくれた人が「柴田のサービスは良い」と言ってくれている場合や、「既に50万円払っているけど、それ以上の成果が出ているからやってもらったほうがいい」と勧めてくれると、ほぼ間違いなく契約が決まります。僕のところに来る案件は、99パーセントが紹介です。そうした紹介による信頼が契約成立の大きな要素になっています。
例えば、僕は年間で12回ほど壁打ちセッションを行っており、50社くらい募集する中で、5社ほどがその場で「契約したい」と言ってくれます。つまり、約10パーセントがその場で契約に至るんです。これが僕たちの営業スタイルですね。
再現性という点でいうと、僕のX(旧Twitter)を見ていただければ、どんなことをやるかがだいたいわかるというのが、一番重要だと思っています。お金を払う側は、未来に何をしてくれるのかが一番気になるところです。
どんな結果が出て、それが自分の会社にどう落とし込まれ、利益がどれだけ出るかということを考えますよね。ですから、僕はそのイメージをしっかりとつけさせることを意識しています。「この人と一緒に仕事をしたら売上が上がる」と思わせるのが大事だと思います。
確実な成果提供で築くクライアントとの信頼関係
実際に、僕たちと仕事をした会社で売上が上がらなかった会社はほぼありません。売上が上がることは多いのですが、利益としてはそれほどではないこともあります。しかし、マーケティングコストや事業戦略コストを加味した上で、利益率や利益額をしっかりと増やしていくことが僕たちの仕事です。
たとえば、僕たちが年間1,200万円の契約をいただいたとしたら、その会社にはそれ以上の利益を出すことを目指しています。僕たちは「1,000万円もらったら1,000万円以上の利益を出す」と決めて仕事をしており、それが達成できなければ返金しますとも言っています。これが僕たちがコミットする理由でもあります。
再現性や営業力の面では、このように費用対効果を明確にし、クライアントに対して確実に成果を提供することを重視しています。
ですので、今後もkoujitsu、僕柴田も含めて応援してくれたらうれしいです。というところでよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。