モバイルアプリのエンジニアが経験2年目でもフリーランスで月100万円以上の仕事を得たり、求人サイトで年収1000万円が提示されるなど、高収入が得られる“おいしい職種”だとして一部SNS上で話題となっている。実際のところ、どうなのか。そして、数多くあるITエンジニア職のなかで、どのような立ち位置なのか。現役モバイルアプリエンジニアの見解を交えて追ってみたい。
スマートフォンの普及に伴い近年、モバイルアプリの数が急増するなか、それを開発するエンジニアへの需要が高まっている。少し前にはあるフリーランスのモバイルアプリエンジニアがX(旧Twitter)上にポストした以下内容が一部で話題を呼んでいた。
<やっぱりモバイルアプリエンジニアに転向してよかった。Webエンジニアだったらムキムキなベテラン達に押し潰されてたと思う>
<自分は運良く、経験2年目から月100万円以上のお仕事を頂いてる>
<30超えてから今のキャリアをスタートしてこれだから、10代20代の人はモバイルアプリ開発をやった方がいい>
<今から始める人で、お金が欲しい、いい環境で働きたい人は、AWSの資格取ってインフラ方面に行くか、モバイルアプリ開発に行くか、のどちらかが良さそう>
Androidアプリ開発者でモケラボ代表取締役の深見浩和氏はいう。
「日本ではiPhoneユーザが多いことも影響して、SwiftなどのiOSアプリ開発用言語を扱うエンジニアと比較して、KotlinなどのAndroidアプリ開発用言語のエンジニアの数が少ないです。そのため、『Androidアプリのエンジニアを採用したいけど、なかなか採用できない』という企業の声はよく聞きます。転職市場に出てくる人数も少なく、高めの報酬を提示して求人サイト上で募集をかけても、数カ月たっても採用できないということも珍しくないようです。もっとも、iOSアプリエンジニアも需要が高いため、Androidアプリと同程度の給与水準が見込めるのが現状で、iOSとAndroidの両方のアプリ開発に使えるFlutterエンジニアの需要も高まっています」
実際に求人サイトでAndroidアプリエンジニアの募集をみてみると、マネーフォワードが想定年収580〜1200万円、Sansanが同714〜1449万円、メドレーが600〜1500万円、Amaziaが450〜1200万円、SHIFTが800〜1500万円、ゼンショーホールディングスが500〜1000万円で募集しており(10月28日現在)、高いスキルと経験がある人材であれば高待遇を得るチャンスがあるといえる。
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日本ではウェブ開発で主流のJava、AIの普及で人気上昇中のPython、最近需要が高まりつつあるTypeScript(JavaScript)など、数多くのプログラミング言語があるが、他の言語と比較した際の特徴は何か。
「iOSはアップル、Androidはグーグルによって毎年、多くの更新・新機能追加が行われており、エンジニアは常に勉強してキャッチアップしていく必要があります。習得すべき新しい知識が膨大にあるため、過去に身につけた知識だけでは歯が立たず、途中で脱落して他の領域に転向するエンジニアも珍しくありません。その点では、アマゾンのAWS(Amazon Web Services)やグーグルのGoogle Cloudといったクラウド系エンジニアと似ているといえます。
一方で、その点をクリアして必要とされる一定レベルのスキルを維持しつつ経験を重ねていけば、一部のメガベンチャーのように報酬・研修・スキルアップサポート面含めて比較的良い環境で働けることが期待できます」(深見氏)
では、モバイルアプリエンジニアになるには、どのようなパスがあるのか。
「プログラミングスクールで最低限の知識を学び、まずはアプリ開発を行っている会社に見習いとして入り、徐々にキャリアアップを図っていくというパスや、大学生であれば独学で最低限学んだ上でメガベンチャーのインターンシップに応募し、そこで働きながら社内の教育環境を活用するというパスもあります。また、小さなモバイルアプリであれば1人でつくることが可能なので、何か成果物をつくり、それを実績としてアピールすることで、どこかの企業に見習い的なポジションで就職するという手もあります。
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前述したとおり、日本では特に若い人はiPhoneユーザが多いことも影響して、モバイルアプリエンジニアを目指す人はiOS(Flutter)にいく傾向が強く、また近年ではAIや機械学習の領域を目指す人が多いのに対し、Androidアプリにいく人は少なめです。そのため人材市場において需要に対して供給が少ないため、人材の希少価値が高くなっており、報酬の高さや就職のしやすさ、仕事の獲得のしやすさという面では狙い目だと感じます」
モバイルアプリ市場は拡大傾向にある。総務省「令和3年版 情報通信白書」によれば、日本の2023年のモバイルアプリ売上高予測は前年比11%増の365億ドル。フラー株式会社発表の「アプリ市場白書2023」によれば、ユーザが1日にスマホアプリを起動する回数は121回、1日におけるアプリ利用時間は5時間、1カ月に利用するアプリの個数は47個に上る。
(文=Business Journal編集部、協力=深見浩和/モケラボ代表取締役)
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