セブン-イレブンが「うれしい値!宣言」というキャンペーンを打ち出し、300円台の弁当のラインナップを増やしている。ほかのコンビニ各社でもコンパクトかつ安価な弁当をよく見かけるようになった。物価高時代になぜ? その最新事情を調査してみた!
*価格は税込です。地域・店舗により取り扱いのない場合があります。また、価格が異なることもあります
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■ありがたいけど採算は大丈夫なの?
セブン−イレブンが「うれしい値!宣言」なるキャンペーンを打ち出し、300円台の低価格弁当を増やしているのが話題になっている。物価高時代になぜ? コンビニグルメ研究家のいぬきち氏が経緯を語る。
「過去にあった弁当の上げ底やハリボテサンドイッチのようなネガティブなイメージが顧客に残っている中で、今年7月にセブン−イレブンは代表的な弁当『牛カルビ弁当』を100円近く大幅に値上げしました。
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さすがに反発が大きかったのか、わずか1ヵ月ほどでまた値下げ。その流れを受けて、9月から本格的な低価格路線『うれしい値』の展開が始まっています。高価格や値上げといったワードに過剰に反応された経緯を経て、現在は低価格路線を選択したと考えられます」
経営コンサルタントの岩崎剛幸氏もこの流れを分析してくれた。
「そもそも安く飲食物を販売するドラッグストアの進出などで若年層のコンビニ離れが進んでいました。その中でコンビニは低価格化のほかに"増量""ポイント還元"などお得感を打ち出すためにさまざまな努力をしてきました。
コンパクトな低価格弁当はローソン、ファミリーマートが先に対応し始める中、高品質路線のセブン−イレブンはなかなか舵を切りませんでしたが、客数や売り上げの減少に直面し、いよいよ参入せざるをえなくなったのでしょう」
ちなみに、この弁当の低価格化はどういった層に向けてのアピールなのか? 岩崎氏が続けて語ってくれた。
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「これまでコンビニ弁当の購入層は40代以降が多かった。コンビニで買い物をする習慣が根づいていて、どこにでもあるコンビニはやはり便利。
一方、20代は距離でいえばコンビニよりも近くにスマホがある。時間を買うならデリバリー、安く済ませるなら前述のようにドラッグストアなど別の選択肢もある。低価格弁当はそんな若者へのアピールと考えられます。
実際、20代の客数、購入数増加が結果としてデータに出ている。若い層も含めて刺さった理由として考えられるのは、ヘルシー(どのコンビニも、低価格でも健康にこだわったものが多く、炭水化物を控えたい層にはちょうどいい)。
タイパがいい(丼物やおにぎりセットなどカップラーメンを作るよりも早く食べられる)。
スペパがいい(スペースを取らないので、小さなバッグを使う女性などにも人気。職場でも置いておきやすい)。
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環境への配慮(ゴミが少なく済むように各社が努力していて、そういった姿勢も若い世代の視点を考えると重要)。
そして、もちろんコスパもいいからということです」
ちなみに、この物価高時代に採算が取れるのだろうか。岩崎氏が語る。
「低価格弁当は"入り口商品"というポジションで、まずは客を増やす戦略でしょう。コンビニを使う習慣を根づかせ、弁当のついでにドリンク、酒、惣菜、パンや菓子などもセットで買ってもらいたいという狙いがあると思います」
いぬきち氏は細かい部分でのコスト削減に目をつける。
「セブン−イレブンを例に取ると、この10月から『国産小麦使用チョコクリームのちぎりパン』(162円)を『チョコクリームのちぎりパン』(162円)という商品名に変え、原材料の小麦を変更しています。
ほかには、プラスチックのフタから強化ビニールのフタに変更するなど容器の簡素化。そして『赤坂四川飯店監修 麻婆チャーハン』(626円)を『麻婆チャーハン』(572円)と変更するなど、有名店監修を外して独自ブランドを展開して、価格を維持しているように見受けられます」
■オススメの低価格弁当を紹介
前提がわかったところで、コンビニ大手3社のオススメ低価格弁当をいぬきち氏に紹介してもらおう!
「セブン−イレブンからは、まずは麻婆丼(348円)。クオリティの高さとリニューアル前の『醤の旨味引き立つ麻婆丼』と栄養成分がまったく変わっていないことに魅力を感じています。
ちなみにバターチキンカレー(348円)は、クオリティはとても高いですが、リニューアル前からカロリーや栄養成分が若干減っています。
最新の399円弁当、なすのコク旨肉味噌炒め丼(399円)は、現在は地域限定販売なのですが、ナスのうまみと味噌の味わいが合っていて、全体的に食べやすく満足感もあるので、今後は販売地域が広がっていく可能性があります。
おにぎりランチ(399円)は3種類の味(オムライス、ツナマヨ、わかめ)のおにぎりに、おかずも唐揚げやウインナーといった人気のものが入っていて、手軽さとコスパはかなりいいです。
ファミリーマートのオススメは30種類以上のスパイスが決め手のこだわりカレー(358円)。ファミマを代表するお弁当のひとつで年々微妙に値上がりしていますが、まだまだ現役の人気商品です。カレールーが絶品でご飯が進みます。カレー自体に具材は入ってないので、ファミチキやファミコロなどを別で買ってアレンジすることもできます。
鶏のうまみ!鶏そぼろ弁当(298円)は鶏そぼろ、玉子のそぼろ、信州菜を使った三色弁当で見た目もいい。小容量なのでガッツリ食べたい方にはちょっと物足りないですが、カップ麺やサラダをつけるといいでしょう。
ローソンのオススメはチャーシュー弁当(354円)。小容量のお弁当で、甘辛いタレで味つけされたチャーシューでご飯が進みます。
ちなみに弁当ではないのですが、セブン−イレブンから10月に新発売されたチルド麺コロッケそば(399円)はつゆもおいしく、麺もしっかりとコシがあって、ここ最近の新商品としてはかなりクオリティが高いです」
■今後も低価格化は続くのか!?
それでは最後に、今後の展望を予測してもらおう。こうした低価格路線は続くのだろうか。岩崎氏が語ってくれた。
「セブン−イレブンは低価格弁当でいい結果が出ているため、もっと増やしていくはずです。また"対セブン−イレブン"はローソン、ファミリーマートの基本姿勢。低価格弁当を減らすことは当面考えられず、どのコンビニでもますます増えると予想されます」
ただし、既存の商品の値下げは厳しいだろうと予測するのはいぬきち氏。
「例えば、弁当ではないのですが、セブン−イレブンのななチキ(骨なし)が2017年発売時で198円だったものが現在は240円。ここから低価格を目指すとしても198円にはならないとみています。
もちろん量を減らして販売すれば可能かもしれませんが、これは冒頭に述べたように顧客の反感を買い、ネガティブな印象を持たれることになるので、することはないと考えられます。安価な新商品の登場に期待です」
われわれとしては、安価においしいものを手に入れられるのはありがたい限り。今後の動向から目が離せない。
取材・構成/黄孟志