AI時代にこそ「総務が磨くべきスキル」とは “なんでも屋”はもう終わり

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2024年10月31日 07:11  ITmedia ビジネスオンライン

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(提供:ゲッティイメージズ)

 総務にとって価値を届けるべき「顧客」とは、目の前の従業員だ。その顧客のことを、果たして本当に理解していると言えるのだろうか?


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 月刊総務の調査によれば、総務の情報収集に重要なのは「ぶらぶら」することだ。現場をぶらぶらしながら、従業員との何気ない会話から、潜在的な課題や、不安、あるいは要望をくみ取り、現場に即した提案をしていく。ある意味、総務の社内マーケティング活動である。調査データからも分かるように、多くの総務パーソンが実践している。


 一方で、生成AIが急速な進化を遂げている。ほとんど人と同等のスピードで話すことができるようにもなってきた。なんでも屋として見られる総務の仕事は、今後、このAIと、どのようにすみ分けていけば良いのだろうか?


●AI時代に磨くべきスキル


 生成AIを使うと、メールの作成から議事録、提案書、採用についての公募書類まで、ありとあらゆる文書が作成できる。総務に寄せられる問い合わせについても、的確な回答を返してくれる。最後は人の判断や確認が求められものの、十分なたたき台は作成可能だ。


 単純作業や繰り返しの作業は、RPAなどを用いたシステムの方が、間違えず、文句も言わず、24時間365日対応できる。さらに、専門技術を要する仕事は、総務内で行うより、外部のプロフェッショナルであるBPOに任せた方が、仕上がりが良いかもしれない。


 現在の総務の仕事を可能な限りテクノロジーに置き換え、残りはBPOに任せるとして、われわれ総務パーソンには一体、何が残るのか?


●ぶらぶら総務は、AIで可能か?


 先述したぶらぶら総務の目的は、現場の空気を体感し、違和感を覚えることや問題を発見して、先回りして対処することだ。


 既に問題となっていることは、そのまま対処すれば良く、BPOなどでも対応できる。総務パーソンが行うべきは、自社のことを知り抜いた上で、潜在的な問題を発見することだ。この潜在的な問題は、まだ言語化されておらず、生成AIは提示できない。そこから、具体的な課題設定へと移る。


●理想と現実のギャップを見つける


 ぶらぶら総務をしながら問題として発見できることとは、どのようなことか。平常時の状態や、あるべき姿とのギャップが、違和感として見えてくるのだ。平常時とのキャップは、平常時に戻すだけだが、あるべき姿とのギャップを見つけ、それに対処することは改善、進化につながる。


 総務パーソンは各人が任せられている担当において、理想像を描くことが必要だ。これは自社に愛着を持ち、自社と社員とともに成長を目指す総務パーソンにしかできない仕事である。


 当然、あるべき姿を描くには、外部の専門家やパートナー(サプライヤー)の協力、情報提供は必要だ。その素材を基にあるべき姿を考え、描くことが、総務パーソンに今求められる、最も重要な仕事なのだ。


●熱量を伴ったコミュニケーション


 理想を描き、ぶらぶら総務で現実を把握し、理想とのギャップを見つけ、問題として把握し、これを課題解決していく。


 課題解決には、新たな取り組みもあるだろう。そうなると、現場社員に対して行動変容を求めることが必要となる。人は変化を嫌う。これを突破しないと、課題解決につながらない。行動変容には丁寧なコミュニケーション、すなわちチェンジマネジメントが欠かせないのだ。


 大事なのは、WhatとWhy。「何を目指すのか」のWhatは、先述した理想形だ。「それはなぜなのか」がWhyだ。「何を目指すのか。それはなぜか。だから、このようにしてほしい」といった丁寧なコミュニケーションが必要となる。


 Whatは、総務パーソンが当事者として自ら考えたありたい姿なので、熱量をもってコミュニケーションができるはずだ。この熱量を表現することこそ、当事者にしかできない、究極の総務パーソンの仕事となるのである。


 つまり、理想を描き、ぶらぶらして問題を見つけ、熱い思いでチェンジマネジメントを行う。これが今の時代に求められる、総務のコア業務となるのではないだろうか。


著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)


株式会社月刊総務 代表取締役社長/戦略総務研究所 所長/(一社)FOSC 代表理事/(一社)ワークDX推進機構 理事/ワークフロー総研 フェロー


早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)FOSC代表理事、(一社)ワークDX推進機構の理事、ワークフロー総研フェローとして、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。


著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』



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