マネーフォワードが運営する家計簿サービス「マネーフォワードME」とSBI証券の連携障害が発生し、資産の増減が確認できない状況が長時間続いた。ネットでは「マネーフォワードのSBI証券連携が何日も復旧せず、資産状況が全く確認できない状態が続いている。いつになったら直るのか」といった声も上がっている。一体何があったのか。
「現在、SBI証券様との連携はスクレイピングにて行っている。連携先様のサイト仕様の変更に伴い、当社側のシステム対応が必要となった」とマネーフォワード広報はコメントした。
スクレイピングとはWebページに表示されている情報を収集・抽出する方法だ。HTMLの構造を解析してデータを取り出すため、APIが提供されていないサイトからでもデータを集められる利点がある。しかし、サイトの構造が変更されると機能が停止する可能性がある。この度SBI証券のサイトに変更があったため、そのままではデータ取得が行えなくなった。
障害は10月25日に発生。30日の午後0時20分の時点で、ようやく一部のユーザーを除き連携が再開した。ただしラップ口座を保有しているユーザーは未連携のままだ。
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こうした障害は、スクレイピングによってデータを取得しているサイトでは常に起こる可能性がある。そもそもスクレイピングは相手先のサイトに勝手にクローラーがアクセスしデータを取得する方法で、許可を得て行う方法でもない。事前にサイト側が仕様変更を伝えるようなものでもない。
スクレイピングの難易度はサイトの構造によっても異なるが、SBI証券のデータ取得に苦しんでいるのはマネーフォワードだけではないようだ。同様のサービスを提供するMoneytreeでもSBI証券との接続で問題が発生。10月30日時点でいまだに対応が終わっていない。
今回の障害は、スクレイピングによるデータ取得の限界を表したものだともいえるだろう。銀行においては金融庁の音頭の元、データを取得するためのAPIが整備され、マネーフォワードのようなアグリゲーション事業者は銀行と契約を結びAPIを利用する形に移行した。
しかし銀行以外の金融機関では、APIを提供しているかどうかはまちまちだ。メルカリ(メルペイ)やPayPayはAPIを提供しないだけでなくスクレイピングも行えない作りとなっており、アグリゲーション事業者はデータ連携が行えない。
これらは構造的な課題である一方で、マネーフォワード側の情報共有にも課題が残る。SBI証券のデータ連携再開には5日の時間を要したが、当初「連携再開に向けてシステム対応を進めておりますので、お待ちいただけますと幸いです」とサポートサイトに記載するにとどまった。
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10月30日になってやっと「SBI証券におきましては、連携先サイトの変更に伴い、弊社側のシステム対応が必要な状況でございます。本事象につきましては、現在、今週中の対応完了をめどに、鋭意システム対応を進めております」と原因と進捗を公開したが、不安を感じたユーザーも多かった。
ネットでは「毎月プレミアムプランの料金を支払っているのに、重要な機能が使えないままです。サービスが利用できない期間の料金は返金してほしい」「これだけ長引く不具合対応の遅さには失望した。有料会員としては納得できない。他のサービスへの乗り換えも考えている」といった声も見受けられた。
家計簿サービスとして認知されているマネーフォワードMEだが、昨今は資産状況をまとめて把握できるサービスとしての利用も増加しており、証券会社との接続ニーズは大きい。有料サービスである以上、状況の丁寧な共有は重要になるだろう。
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