「103万円の壁」を178万円に引き上げる政策を掲げる国民民主党。税負担が減り、手取りが増えるとのことですが、減税の規模は“8兆円”との試算も出ています。その財源はどこから確保するのでしょうか?
【写真を見る】国民民主党「103万円の壁」を178万円に引き上げ案 実は“8兆円”の大減税 財源どうする?【news23】
“103万円の壁”引き上げ 実は8兆円の大減税藤森祥平キャスター:
永田町のやり取りでは、国民民主党が鍵を握っているようです。
国民民主党 玉木雄一郎 代表
「我々がほしいのは、ポストではなくて『103万円の壁』を引き上げたい」
この「103万円の壁」とは、アルバイトやパートの方などが103万円以上稼いでしまうと、所得税の支払いが発生してしまう額のことです。
|
|
その額を超えてしまうと扶養から外れてしまうので、例えば学生のアルバイトの方は親の手取りが減ることを避けるために働く時間をあえて抑え、収入を103万円に届かないようにしていくケースもあります。今回の国民民主党の提案は、この上限を178万円まで引き上げようとするものです。
小川彩佳キャスター:
この政策はSNSなどでも非常に話題になってましたけれども、国民民主党のこの政策どこがポイントなのでしょうか?
23ジャーナリスト 片山 薫さん:
一言で言うと、「大減税」です。
もともと「103万円の壁」とは、年収100万円の人がもう少し働けるようになり、178万円に上がると、年収100万円前後の方にとってプラスだと思われている方も多いと思います。
しかし調べてみると、年収400万・800万円・1200万円・2000万円の方でも大きな恩恵があります。
実は底上げがあって、一律75万円の基礎控除という税金がかからない枠が、ほぼ全ての方に対して大幅に引き上がるということになります。どの層であっても、手取りが増えるといった政策になっています。
藤森キャスター:
これは具体的に年収別で見ていただくとわかりますが、非常に多くの方に関わる減税です。
玉木代表のSNSでも一覧がありました。
|
|
年収300万円の人は減税額が11.3万円、600万円の人も15.2万円の減税です。
例えば、夫婦それぞれが500万円を稼いでいる家では、26万4000円の減税となり税金を納めなくて済む計算です。これだけ見るとかなり多くの人の負担が減るようですが、いかがでしょうか?
トラウデン直美さん:
1回の給付だとやはり貯金に回ってしまうイメージです。これまでもそういう話がありましたが、恒久的にこういった減税の形になるのであれば、税収は減るのかもしれませんが経済にとってはよさそうだなと思います。
23ジャーナリスト 片山さん:
定額減税となると、「1回きり」と皆さん思っていますが、今後も減税されていく点では効果はあると思います。
ただ問題点もあって、例えば年収200万円の方の減税効果で8.6万円。500万円の方が13.2万円だとして、1000万円では22.8万円。
国民民主党は試算を出していませんが、2000万円だとおそらく30万円ぐらいの減税効果があります。そうなると、高所得者に恩恵が偏るのではないかという指摘はあると思います。
藤森キャスター:
かなり差がつきます。
23ジャーナリスト 片山さん:
ちなみに2400万円は所得制限になっているので、おそらくそれ以上の方にはあまり恩恵はないと見られています。
|
|
トラウデン直美さん:
そこのラインが変わるという議論はあるんですか?
23ジャーナリスト 片山さん:
それはないです。もしかしたら今後、自民党と協議する中で出てくる可能性はあるかもしれませんが、かなり複雑です。シンプルに玉木氏は、この「103万円の壁」を選挙で訴えてるので、これを通したいと強く主張しています。
小川キャスター:
国民民主党は2400万円以下の方が、減税の対象になるという考え?
23ジャーナリスト 片山さん:
そういう考えです。
もう一つの問題点は、やはり税収の問題です。財源が本当に大丈夫かなというところです。今回かなり幅広い恩恵で、8兆円規模の減税になります。さらに、2024年は1人4万円の定額減税もあり、それが5兆円規模なのでかなり額が大きいです。
かつ、毎年やるというのは財源としてどうなのでしょうか。これに関して玉木氏は、「税収は増えていくので大丈夫。インフレになって増えていくだろう」という、ちょっと楽観論に立っていらっしゃるんですね。
トラウデン直美さん:
思った以上に楽観的。大丈夫ですか?
23ジャーナリスト 片山さん:
正直言うと、本当にこんな減税が簡単にできるのか、私は少し疑問です。
特にこれは、この先恒久的な減税になる可能性があるので、そうなると経済が悪くなって税収が下がったときに対応できるのか?毎年8兆円分どこから生まれてくるのか?と思います。
藤森キャスター:
31日に自民党と国民民主党による幹事長会談が行われますが、実際にこの案を与党側が飲むのでしょうか?
TBSスペシャルコメンテーターの星浩さんに聞くと、「自民党の幹部は、高所得者優遇でバラマキだとしていて、この案を丸のみはできない」と反発しているそうです。
だから、すんなりいかないかも知れないですね。
トラウデン直美さん:
できれば早く進めてほしいですよね、できるとなったら早くていつ頃になりそうでしょうか?
23ジャーナリスト 片山さん:
実際にこれがまとまるのは、2週間後ぐらいまでにおそらく何かしらどういう方向性になるかは決まると思います。年末ぐらいまでに本当にこの壁をどういうふうにするかの議論はされるでしょう。
ただ効果とか恩恵を受けるのは、来年度・再来年度ぐらいだと考えられるので、即効性は正直ないと思います。
藤森キャスター:
ちょっと気が早くなって、今年少し多めに稼いでも大丈夫っていうことになることは、今年はない?
23ジャーナリスト 片山さん:
2024年は103万円の壁のままなので、この年末に働いて増やしてもいいということにはならないと思います。注意していただきたいです。
小川キャスター:
誰の案が、どれだけ生かされるのかというのは、政治の世界では大事なことなのかもしれませんが、いま苦しいという方に即効性のある対策というのも必要ですよね。
NEWS DIGアプリでは『与野党の幹事長会談』について「みんなの声」を募集しました。
Q.「103万円の壁」の引き上げ 与党は受け入れるべき?
「受け入れるべき」…45.2%
「引き上げ額の精査は必要」…33.4%
「税金の大幅減になるため反対」…4.2%
「数合わせの合意には反対」…15.4%
「その他・わからない」…1.7%
※10月30日午後11時18分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
===============
〈プロフィール〉
23ジャーナリスト 片山 薫さん
元経済部筆頭デスク 財務省や経産省・農水省などを担当
趣味はハイキング 育児休暇中に家事をイチから学ぶ
トラウデン直美さん
環境問題やSDGsについて、積極的に発信
趣味は乗馬・園芸・旅行