プレミアリーグ第10節。6位のブライトンは、首位マンチェスター・シティに勝ち点1差で2位につけるリバプールとアウェーで対戦した。三笘薫は左ウイングで先発。後半42分までプレーした。対するリバプールの遠藤航は後半32分から出場。13分間+5分間(アディショナルタイム)プレーした。今季ここまでプレミアでの出場は3試合で、いずれも時間稼ぎのような交代だった遠藤にとって、明るい出来事だった。
両チームは3日前に行なわれたリーグカップ4回戦でも対戦していた。遠藤は先発を飾り後半19分までプレー。対する三笘は後半31分から出場だったので、両者が同じピッチに立つことはなかった。
リーグカップの結果はアウェーのリバプールが3−2で勝利したが、舞台をアンフィールドに移して行なわれたこのプレミアリーグの一戦には、両軍ともメンバーを大幅に入れ替えて臨んだ。リバプールは9人。ブライトンは8人。形骸化しているとはいえ"ベストメンバー規定"なるものが依然として存在するJリーグのルヴァンカップ決勝と同じ日に行なわれた試合である。
リバプール対ブライトンに話を戻せば、前半と後半でここまで展開が異なる試合も珍しかった。前半はブライトンペースで、後半はリバプールペース。結果は2−1、リバプールの逆転勝利だった。
リバプールといえば現在、UEFAランキングでマンチェスター・シティ、レアル・マドリード、バイエルンに次ぐ欧州で4番目の強豪だ。チャンピオンズリーグ(CL)の優勝候補でもある。だが少なくとも前半、ブライトンはアウェーながら、アンフィールドのファンを大いに慌てさせた。
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きっかけは、開始1分も経たないうちに三笘が披露したステップだった。左SBペルビス・エストゥピニャン(エクアドル代表)からパスを受けた三笘が、対峙するリバプールのトレント・アレクサンダー・アーノルド(イングランド代表)に向けて踏んだ、威嚇するようなステップワークである。リバプールは三笘のこの挨拶代わりのワンプレーですっかり受け身になった。贔屓目抜きに、そう思う。
13分に三笘のドリブルをアレクサンダー・アーノルドが止めたとき、スタンドから湧いた大歓声にそれは集約されていた。9分にも三笘は目を引くような中央ドリブルを決め、ゴール前に進出していた。危険な存在であることを印象づけていた。だからその大歓声は、安堵の声そのものに聞こえた。
【先制ゴールを生んだドリブル】
そして迎えた15分、右ウイングのフェルディ・カドゥオール(トルコ代表)のからサイドチェンジ気味の横パスを受けると、三笘はドリブルを開始。縦を警戒したアレクサンダー・アーノルドは内側への警戒を怠っていた。その間隙を三笘のスライスのかかったアウトサイドパスが抜けていく。1トップ、ダニー・ウェルベック(元イングランド代表)がこのボールを外に逃がすと、そこに三笘にパスを出したカドゥオールが走り込み、左ポスト内側に、胸のすくような一撃を蹴り込んだ。
ウェルベックのポストプレー、カドゥオールのクリーンシュートも見事だったが、三笘のドリブルには自軍を勇気づけ、相手には"やられた感"を植えつける効果がある。それはアウェーのスタンドの雰囲気に端的に表現されていた。
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前半20分には自軍の深い位置でボールを受けるとドリブルを開始。3タッチ目でマークに付こうとしたアレクサンダー・アーノルドの背後にボールを送り込むと、スピードで抜き去った。リバプールのペナルティエリアの角あたりまで、60〜70メートル前進する圧倒的なプレーを見せた。ウェルベックに右足アウトで出したスルーパスはアレクシス・マック・アリスター(アルゼンチン代表)にカットされたが、ブライトンペースはこれでますます加速していくことになった。
さらに21分、23分と冴えたドリブルを立て続けに披露。この時間帯の三笘は手がつけられない状態にあった。グリーンのピッチの上をスイスイと小気味よく滑らかに進む、胸の空くような、けれん味のない痛快なドリブルである。
36分には決定的な折り返しを送った。自軍の深い位置からドリブルを開始。数十メートル進むと、いったんウェルベックにボールを預け、そのリターンを受けるや、逆サイドで構えるカドゥオールに向けて送り込んだ左足キックである。カドゥオールがこのシュートを的確に蹴り込んでいれば、勝利の女神はブライトンに微笑んでいたかもしれない。
だが後半は、先述したようにリバプールペースに一変する。リバプールのアルネ・スロット監督がハーフタイムに出した指示が奏功したということになる。前半あれだけ活躍した三笘も沈黙。アレクサンダー・アーノルドとの1対1をものにできなくなった。後半25分、コディ・ガクポ(オランダ代表)に同点ゴールを許すと、27分にはモハメド・サラー(エジプト代表)に逆転ゴールを浴びた。
三笘を採点するならば前半7、後半6。前後半を通すならば6.5となる。遠藤はプレー機会が少なく採点不可能だが、途中から入ってもこのハイレベルの好試合にすんなり溶け込むことができていた。ふたりの日本人選手がそのピッチに立っていたことを誇ることができる試合。サイドを使いボールをよくつなぐ、見栄えのいい攻撃的サッカー同士による、この世界をリードする模範的な一戦だった。
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この日、マンチェスター・シティがボーンマスに不覚を喫したため、リバプールは首位に浮上。ブライトンは順位をひとつ下げて7位に後退した。