政治や選挙の話題は「家族間でも避けるべき」なのか? 投票に行くことすら秘密を貫く義母の言い分

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2024年11月03日 22:11  All About

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初対面の人と政治や選挙の話はしない方がいい、とはよく言われる。ある政治ネタ大好き一家は、同居するようになった老齢の義母に「センシティブな話」だから食卓で話題にしないでほしいとダメ出しされてしまう。
家族であっても政治的な話は一切しない、選挙の時も誰に入れるか、入れたかという話はしない。そんな立場をとる人たちもいる。初対面の人に政治と宗教の話はしない方がいいとはよく言われることだが、家族であってもそうなのだろうか。

政治ネタが大好きな議論好き一家に異変

「夫とは、くだらない話から政治や国家観みたいなことまで何でも話します。ときには大議論になることも。そこに高校生の男女の双子が絡んでくるから、うちは賑やかというか議論好きというか。妙な家族だと思っていましたが、それが楽しいからいいよねという感じだったんです」

ミチコさん(46歳)はにこやかにそう言った。同い年の夫との間に17歳になる双子がいる。共働きだったため幼いころはとにかく大変だったが、今となっては親が同い年、子どもも同い年で面白いと思うようになっている。

「夫と私がよくしゃべるから、子どもたちも自然とおしゃべりになった。何かトピックがある時は感情をぶつけず、冷静に理屈で話すのが私たち夫婦の流儀なんです(笑)。子どもたちもそれを見ていたんでしょうね」

家庭内で「朝まで生テレビ!」(※編集部註:BS朝日で放送される討論番組)状態の議論が交わされることもある。

ところが今年の初めから義母が同居することになった。70代半ばの義母は義父亡き後15年ほど一人暮らしを楽しんでいたのだが、最近は少し体力が落ちてきていた。昨年秋に転倒して骨折、入院。リハビリで自分のことはできるようになったが、心細くなったのだろう、施設に入りたいと言い始めた。

「本当に施設に入りたいならいいけど、本音は家族と住みたいんじゃないのと夫に言ったんです。元々そう遠くに住んでいるわけではなかったし、義母とは関係がよかったから、一緒に住むのは嫌じゃなかった。義母に『一緒に住みましょうよ。家の中を歩けるなら留守番くらいしてくれるでしょ』と冗談交じりに言ったら喜んでくれて」

他人の悪口や批判が大嫌いだという義母

しかし同居が始まってみると、たまに会うのとは大違いだった。なにより義母は極端なきれい好き。体が自由に動くなら自分で整理整頓や掃除をしたいのだろうが、若い時のようには動けないので、自然とミチコさんへの文句が多くなる。

「あ、ミチコさん、そこの隅が汚いのよって。言ってから『ごめん。つい気になっちゃって』と。私は気にならないからいいです、このままで。お義母さん、気になるならこれでやってと粘着テープのコロコロを渡したら、掃除はこんなものでするんじゃない、雑巾がけよ、と。

私は仕事があるので無理でーすと流しちゃうんですけどね。お義母さんの方がストレスたまっているんだろうなと思いつつ、わが家の慣習は変えられませんと笑いながらよく言っていました」

それは日頃の会話にも及ぶ。義母は他人の悪口や批判をいっさい受けつけない。すてきなことではあるが、たまには家の中でだけ誰かの悪口を言ってすっきりしたいこともある。悪口だけでなく愚痴も聞こうとはしない。聞かないだけならいいが、「やめて」と言われるのがミチコさんのストレスになった。

政治の話は「精神的につらいの」と義母

特に義母が嫌うのは政治や世界の紛争などのこと。同居が始まってすぐ、「これだけはお願い。あなたたちが毎日のように話していることが、私にはとても精神的につらいの」と言われてしまった。

ミチコさん一家は、世間話のように政治の話をしていたから、それが封じられるのは誰もが納得いかなかった。

「特に夫が怒っちゃって。お母さんに話題を制限する権利はないと思う、なんて言って義母を不快にさせてしまった。とはいえ食事はほぼ毎日一緒だし。まあ、義母は食事が終わるとわりと早く自室に引き上げるので、濃厚な話はそのあとということになりました。

最近では『今日は私の分は自分で作るわ』ということもあります。早い時間にひとりですませたい日もあるみたい。そんなときは相変わらず、一家4人で喧々囂々(けんけんごうごう)ですけどね」

今回の選挙のときも、公示日から子どもたちは興味津々。祖母がそういう話は嫌いだと分かっていながら、一緒の食卓で父親に議論をふっかけたりしていた。

「どうして政治の話はダメなんですかって私、義母に聞いたんですよ。そうしたら、たとえ家族でもプライバシーを侵害するからって。うーん、選挙や政治ってそんなに秘密の話ですか?と、思わず言っちゃいました。

思想信条は個人的なものでしょと義母は言うけど、それを話題に話が盛り上がることもあるんじゃないかなと思うんです。思想信条というより、政治の話はむしろ生活に密着した話だと思うけど」

こうやって政治の話を避けるから、政治に無関心な人が多いのではないだろうかとミチコさんは思ったそうだ。

「もっと家族で話題にして、みんなで調べたりしていかないと。私たちの暮らし直結のことなんですから」

投票に行くことすら伏せる義母

ミチコさんと夫は、それぞれ時間を見つけて期日前投票をした。義母は当日、散歩に行くと言って投票してきたらしい。

「それすら言わないなんて……。そんなにタブーなんですかね。夫に聞いたら、そういえば昔からそうだったかもって。家族でそういう話をしたことはなかったなあと言っていました」

ミチコさんは、義母のそんなタブーを打ち破りたいという気持ちになっているとか。次の選挙までには義母を議論に巻き込んでみたいとニヤッと笑った。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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