痛烈な「ダメ出し」大歓迎! アプリ会員1500万人の口コミは、ドンキをどう変える?

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2024年11月06日 07:11  ITmedia ビジネスオンライン

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PPIHの口コミサービス「マジボイス」(編集部撮影)

 商品改良や店舗改善において、「顧客の声を聞く」ことは重要だ。ドン・キホーテなどを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、2023年11月から公式アプリ「majica(マジカ)」に新しい口コミ機能「マジボイス」を搭載。1500万人のアプリ会員から、生鮮食品や総菜、日用品、コスメ、家電、衣料・アパレルなどの商品に対する声を収集している。


【画像】痛烈な「ダメ出し」で変わった商品(全5枚)


 マジボイスが通常の口コミサービスと異なるのは、高評価も低評価も全ての意見を公開している点だ。同社がマジボイスを始めた経緯について、宮本慎太氏(マーケティング戦略本部 マーケティング戦略部 マジボイス推進課)に話を聞いた。


●「ダメ出しの殿堂」にダメ出し


 マジボイスのコンセプトは「みんなの声で、ぜんぶが変わる?」。商品を「いいよ!」と「ビミョー」で評価する「正直レビュー」と、顧客同士が交流できるコミュニティーサイト「おしえて掲示板」という2つのコンテンツを軸に、アプリ会員から商品への要望や利用する店舗への意見などを収集している。


 PPIHはかつて「ダメ出しの殿堂」というWebサイトを立ち上げ、情熱価格(PB)の商品に対する「ダメ出し」を集め、商品開発に生かしてきた。しかし、ダメ出しの殿堂では商品に関する声しか集められないという課題があった。「商品以外についても顧客から声を集める必要があると考え、新しくマジボイスを作りました」(宮本氏)


 マジボイスは前述の通り、majica内の機能の1つ。そもそもmajicaを使用するには、個人情報やよく利用する店舗など会員登録が必要だ。ここに、マジボイスをダメ出しの殿堂のようなWebサイトではなく、アプリの機能として実装した理由がある。


 ダメ出しの殿堂では、ダメ出しを書いた人の性別や年齢などの属性、商品を購入したかどうかといった情報が分からなかった。しかし、majica内の機能であるマジボイスは、評価やコメントに会員情報を紐(ひも)付けられる。宮本氏は「店舗で買い物をするお客さまの中でも、アプリ会員はドン・キホーテのファン、つまり重要な顧客と言えます。その重要な顧客が、いつ、どの商品に、どういうことを言っているのかが、アプリに実装することで可視化されるようになりました」と説明する。


●「ビミョー」が引き出すリアルな声


 正直レビューは「いいよ!」「ビミョー」の二択で評価する。実際に正直レビューを開いてみると、「鮭フレーク(いいよ!96%、ビミョー4%)」「焼き芋(いいよ!89%、ビミョー11%)」「偏愛めし 吸ってよし食ってよしだし漬け枝豆(いいよ!17%、ビミョー83%)」(いずれも10月30日時点)といったように、商品ごとに「いいよ!」「ビミョー」の割合が一目で分かるようになっている。「いいよ!」が急増しているなどプラスの評価が高い商品だけでなく、「ビミョー!」の評価が多数を占める「イマイチ商品」も公開中だ。


 正直レビューの評価軸を設定するに当たり、宮本氏はさまざまな工夫をこらしたと振り返る。「今や口コミサイトはよくある当たり前のサービスです。後発だからこそ、マジボイスならではの独自性が欲しいと思っていました」(宮本氏)


 まず工夫したのが、何段階の評価にするかという点だ。宮本氏によると、星5つのような5段階評価は、多くの人が真ん中を選ぶ傾向にあるため、正しい評価が分かりにくくなってしまうのだという。良し悪しをハッキリさせるため、シンプルな二択とした。


 「ビミョー」という言葉にも意図がある。当初はビミョーの他に「ダメ」「BAD」といった候補があったとか。「着目したのは『評価すること』に対するハードルです。『ダメってほどじゃない』『BADまではいかない』という絶妙な顧客の気持ちに寄り添うため、ビミョーという表現を採用しました」(宮本氏)


●高評価も低評価も全て公開


 正直レビューで一覧になっている商品をタップすると、その商品に寄せられたコメントを見ることができる。コメントの吹き出しを、購入者で「いいよ!」評価をした人は水色、購入者で「ビミョー」評価をした人は灰色、購入者ではない人は白色にそれぞれ設定。そのコメントについて、どういう人がどういう評価のもと書いたのか一目で分かるように設定した。


 「いいよ!」「ビミョー」の評価だけでなく、コメントも誹謗中傷に当たるもの以外は全て公開。中には、商品に対して手厳しい意見も見られた。マジボイス上でマイナスな意見を公開することについて、社内から反対はなかったのだろうか。


 「弊社は顧客最優先主義を掲げ、顧客にとって都合のいいお店を目指しています。私も店長をやっていた時に、批判の声も含めて、顧客からの意見に耳を傾け、仕入れなどに生かしていました。マジボイスは、これまで現場に寄せられていた声がアプリ上に反映されただけとも言えます。マジボイスの構想が生まれた当初から、低評価も公開して当然との考えでした」


 この考えを基に、宮本氏は役員や商品開発担当者、現場の店長などあらゆる立場の社員にマジボイスで全ての声を公開する必要性を説明して回ったという。社内からも大きな反対などはなかったそうだ。


●改良する様子は「七転八倒」


 正直レビューには、2023年11月のサービス開始から累計約112万件(9月末時点)の評価やコメント(内訳:商品評価約86万件、コメント約26万件)が集まっている。宮本氏は「1年で100万件くらいなら御の字だと思っていたので、想像以上の反響です」と振り返る。


 集まった評価やコメントは、月に一度開催するマジボイス実現委員会で精査。マジボイス実現委員会のメンバーは、宮本氏をはじめとするマジボイス推進課や広報、マーケティング、開発、品質管理、デザインなど各部門から集められた30人前後で構成されている。評価の割合や書き込まれたコメントを基に選んだ約10商品を取り上げ、年に約30商品をリニューアルしているそうだ。


 7月15日に発売した「抗菌アルミホイル25cm×10m」(141円)も、改良した商品の1つだ。「ホイルは良いが、毎回紙刃がきれいに切れずプチストレス。刃が箱側でなく、蓋側に付いてた方が切れやすいのでは?」とのコメントをきっかけに、改良に着手。箱パッケージを従来の一体刃から別体刃に変更することで切りやすさを向上した他、刃の形状や位置を微調整した。販売数はリニューアル前から1.2倍にアップしたという。


 一方、改良が一筋縄ではいかなかった商品が、偏愛めしの1つである「あんだく溺れ天津飯」(430円)だ。2023年11月に発売したところ、「持ち帰る時斜めにならないように注意しないと、隙間からつゆがあふれる。ふたと皿の隙間をラップでふさいで欲しい」とのコメントが。約40種類の容器から餡のあふれづらい容器を新しく選び、今年5月にリニューアルした。


 しかし、リニューアル後も「改善されたという容器でも普通に餡はこぼれます」という意見があった。顧客から寄せられる忌憚(きたん)ない声に、商品担当者も一度はくじけそうになっていたというが、再び調整を行い、再々販に至った。マジボイスをきっかけにした改良の様子について、宮本氏は「お客さまの要望を実現させるために、七転八倒しながら対応しています」と話す。


●マジボイスの弱点


 マジボイスはサービス開始から想定以上の評価やコメントが集まっているが、これまでキャンペーンはほとんど行っていない。majica実装当初に、認知拡大のため「コメントを書いたらポイントプレゼント」というキャンペーンを2回実施したのみだ。「キャンペーンをやりすぎると、インセンティブ欲しさにとりあえず書くといったような雑な評価やコメントが増えてしまいます。コメントの質を落とさないため、今後もキャンペーンで声を買うようなことはしない考えです」(宮本氏)


 マジボイスの課題について、宮本氏は評価やコメントの集まりに偏りがあることを挙げる。購入頻度が高い食品や日用品には評価が多く集まる一方、そこまで購入頻度が高くないアパレルや高価格帯の家電などはまだまだ少ないのが現状だ。アパレルや家電の商品担当者からは「コメントをもっと集めてほしい」と要望されているといい、こうした現状を打開する解決策を考案中だという。


 マジボイスの将来像について、宮本氏は何かの購入を検討している時、その商品を調べるツールの1つになりたいと考えている。「商品の評価を調べるとき、多くの人がAmazonのレビューを見ると思います。そこに肩を並べられるよう信頼度を高め、いつかは欲しいものができた時にマジボイスで調べるのが当たり前という状況を作りたいです」(宮本氏)。顧客と現場の声を重視するPPIHが生んだ、口コミサービス「マジボイス」の今後に注目だ。



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  • 夜の客層がクズばっかりなので殆どいかないw
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