芝ダート二刀流の名馬と聞いて、多くのファンが最初に思い浮かべるのがクロフネだろう。01年にNHKマイルCを制したものの、秋は天皇賞(秋)に出走が叶わず、武蔵野Sに参戦。初ダートも何のその、従来のレコードを1秒2も更新する1分33秒3で駆け抜けた。そんな多くのファンに衝撃を与えた一戦を振り返る。
クロフネは父フレンチデピュティ、母ブルーアヴェニュー、母の父Classic Go Goの血統。名種牡馬の父が米国繋養時に残した産駒。00年のファシグ・ティプトン社主催のトレーニングセールにおいて、吉田勝己氏に43万ドルで落札された。
2歳秋に松田国英厩舎からデビュー。3歳春に毎日杯で重賞初制覇。NHKマイルCでは武豊騎手と初めてコンビを組み、単勝1.2倍の支持に応えてGIウイナーの称号を獲得した。その後、日本ダービーは5着に敗退。秋初戦の神戸新聞杯は3着だったが、大目標の天皇賞(秋)に向けては順調そのものと思われた。しかし、同レースの外国産馬出走枠が2頭だったのに対し、獲得賞金額でクロフネを上回るメイショウドトウとアグネスデジタルが参戦を表明。出走が叶わなかったため、天皇賞前日の武蔵野Sに向かうこととなった。
ダート初参戦となった一戦。単勝2.3倍の1番人気に支持されたものの、2番人気のエンゲルグレーセは2.7倍なので、決して1強ムードではなかった。しかし、レースは強烈なワンサイドとなる。スタートこそひと息だったが、馬なりで押し上げて3角では好位へ。他馬とは行きっぷりが全く違った。4角で先頭に立つと、そこからは後続を引き離す一方。2着のイーグルカフェに9馬身差の大楽勝を収めたのだ。そして何より凄かったのは勝ち時計。1分33秒3は92年にナリタハヤブサがマークした1分34秒5を1秒2も更新するJRAレコードだった。
クロフネは続くジャパンCダートも圧勝したが、年末に屈腱炎を発症。志半ばで無念の引退となる。ドバイやアメリカへの遠征が叶わなかったことは残念だが、砂上の2戦で見せた雄姿はいつまでも語り継がれるに違いない。