こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。
今、我が子のためにより良い教育環境を求め、家族で海外に移り住む「教育移住」がジワジワ注目を集めています。
ひと昔前であれば、海外で子育てをするというのは、親の仕事の都合か、子ども自身が海外留学を希望して行くかのどちらかでした。しかし新たな選択肢として、私費で海を渡る海外教育移住が増えているのです。
行き先はさまざまですが、物価や時差、文化の違いを考慮して、アジア圏が好まれる傾向があるようです。その中でも近年、特に人気が高まっているのが、マレーシアへの教育移住です。こうして取材を行った筆者も、実は海外教育移住に関心が高い親の一人です。
とはいえ、私自身は英語もできず、海外生活の経験もなく、ただ「子どもも私も、経験や視野を広げるためにも海外で生活してみたいな〜」と漠然と考える素人です。
ぼんやりした好奇心から始まった今回のインタビュー。答えてくれたのは、2023年の12月にマレーシアのペナン島に渡り、約1年の海外移住を送っているねこ田さん。自身のInstagram(@necolife_penang)では移住の経緯やマレーシアでの生活のようすを漫画で紹介しています。
コロナ禍により、働き方や生き方を見直した結果、いつか行きたいと願っていた海外移住を決意したねこ田さん。どういった経緯で決断に至り、また家族を説得し準備を進めていったのか、話を聞いてみました。
◆幼少期の海外生活が「いつか家族で海外へ」を実現させる
ねこ田家のプロフィールをご紹介すると、海外教育移住の発案者である、妻のねこ田さんと旦那さんは、ともにゲーム業界のデザイナーとして働く40代です。
2人のお子さんは、移住時は息子さんが8歳、下のお子さんが4歳と、まだまだ言語の学びの途中段階。2023年12月に渡航し、現在ペナン島のインターナショナルスクールに通っています。
まずはねこ田さんが海外移住を決意した理由を聞いてみました。
「私は8歳の頃、親の都合でアメリカに3年間いた帰国子女です。たった3年ではありますが、日本へ帰国後は、義務教育過程で英語は苦労せず習得できましたし、今も問題なく喋ることができます。こうした成功体験から、『子どもにも海外生活の経験をさせてあげたい』と考えるようになりました。
とはいえ、それはふわっとした感じで、いつまでにと期限を区切っていたわけではありませんでした。でも上の子が私がアメリカに渡った年齢と同じになったことと、コロナ禍が明けて就業形態が変わったことで、仕事も家庭生活も、同時に考え直すようになりました」
◆コロナ禍明けで「もっと子どもと向き合いたい」と思うように
よく、コロナ禍になり働き方や生き方を見直した、という声を耳にします。しかし明けてから改めて考え直すとは、いったい何があったのでしょう。聞いていくと、コロナ禍という変革期をへて、元の生活に戻れないと感じる現実があったようです。
「私達夫婦は、長年ゲーム業界で働くデザイナーでした。比較的忙しい働き方をしており、コロナ禍で在宅勤務ができるようになったことで、少しだけ余裕ができていました。しかし2023年の春にコロナ禍が収束にむかい、就業形態が在宅から基本、出社勤務に戻る形になりました。そのとき『(コロナ禍前の)あの働き方に戻りたくないな。もっと子どもと向き合いたい』と強く思ったんです。
ちょうどそのとき、上の子は私がアメリカに渡った年齢と同じ8歳になりました。きっと子どもが親の方を向いて、全力で親を求めてくる時間は、そう長くないだろうし、教育の面を考えても海外に行くなら今しかない。そうした思いやタイミングが重なり、もう一回、夢だった海外移住に目を向け、夫にも提案していきました」
◆夫婦の意見も一致し、勢いで海外生活準備をスタート
ねこ田さんは帰国子女ですが、旦那さんは海外留学経験がなく、語学力も特にあるわけではないといいます。旦那さんからすると、移住のハードルは高そうです。夫婦やお子さんとの話し合いはどのように進んでいったのでしょうか。
「夫に相談したときは、意外とすんなり『じゃあ行くか』って同意してくれたんです。大きな理由としては、『子どもが親を頼ってついて来てくれるのは今だけだから大切にしたい』という理由が、夫婦で一致したからです。そこから半年ほど準備期間を経て、現在夫はデジタルノマドビザ(フリーランサーやリモートワーカーに向けた長期滞在ビザ)を取得し、日本の仕事をリモートで行いながら生活し、私は専業主婦として子どものサポートにあたっています。デジタルノマドビザは2年の期限付きのものなので、2年後には一度帰国する予定です。
子どもの同意については、年齢もあってそこまで真剣に説得はしていないんです。上の子はなんとなく理解していたので、私も『海外に住みたいなー』って小出しに伝えて、最終的な視察は私と上の子の2人で行き『新しい学校を見にいくよ』と言って理解させました。下の子は当時4歳だったので、最後まであんまり理解はできてませんでしたね。
本当は子どもの気持ちに耳を傾けたりしたほうがいいのかもしれませんが、私自身が親の都合でアメリカに渡り、順応できた経験があったので『子どもは強い!』を信じて、突き進みました」
◆マレーシアのペナン島に移住を決めた理由
ねこ田さん一家が住んでいるのは、観光地としても人気を集めるペナン島です。マレーシアへの教育移住は流行っているといいますが、多くは首都クアラルンプール。事情がないなら、クアラルンプールにするのが妥当なように感じますが、なぜペナン島を選んだのか聞きました。
「まず、マレーシアにした理由は、物価や時差、ビザの関係が大きかったです。最初は首都のクアラルンプールにしようと思っていたのですが、クアラルンプールは都会的で学校の選択肢もたくさんある一方で、ここで生活したら、きっと東京での生活とそう変わることはないなと感じました。あまり憧れを抱けなかったこともあり、せっかくなら海外の空気感をもっと求めたいと思い、世界遺産など文化的な空気の残るペナンにしようとなりました。
実際行ってみて感じたのは、ペナンは華僑が多く、またイスラム教をはじめ、仏教、ヒンズー教の方もいるので、文化的な交流が盛んにある場所です。そのため、いろんな人がいろんなことを自由にやっている空気があり、それが魅力に感じています。
実際ペナンで生活していると、子どもが騒いだりしても『人の目が痛い』といったことはなく、皆さんがおおらかに他者を受け入れているように感じます。現実問題として、宗教や文化がまったく違えば受け入れざるを得ません。日本にはないおおらかさに、私自身はとても居心地の良さを覚えています」
ねこ田さんに教育方針を聞くと「自由にやればいいよ!」なのだと教えてくれました。親として勉強はしてほしいとは願うと言いながらも、同時にパッションがあるものには突っ込んでいってほしいのだそう。
英語は移住経験を通して身につけてほしいものの、親としては、英語を話すということはあくまでも通過点、英語は単なるツール、その先にある自分らしいパッションを極めてほしいのだといいます。
自由な環境で見つけるお子さん達のパッションはどういったものなのか。楽しみです。
【ねこ田】
2023年末よりマレーシアはペナン島に教育移住中。9歳5歳の子どもたちは現在現地のインターナショナルスクールに通っています。教育移住のあれこれをInstagram(@necolife_penang)にて配信中。
<取材・文/おおしまりえ>
【おおしまりえ】
コラムニスト・恋愛ジャーナリスト・キャリアコンサルタント。「働き方と愛し方を知る者は豊かな人生を送ることができる」をモットーに、女性の働き方と幸せな恋愛を主なテーマに発信を行う。2024年からオンラインの恋愛コーチングサービスも展開中。X:@utena0518