神奈川県警の巡査長(36歳)が、勤務していた駐在所管内の住民の男性(70代)の口座から、現金700万円を騙し取ったとして、詐欺や有印紙文書偽造・同行使の容疑で11月4日、神奈川県警に逮捕されたと報じられています。
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NHKなどの報道によると、巡査部長は今年5月、住民の自分で偽造した住民の男性名義の委任状と払戻請求書を男性名義の通帳とともに、横須賀市内の郵便局の窓口に提出し、口座から700万円を騙し取った疑いが持たれています。
この時、巡査部長は警察の制服を着用しており、郵便局の窓口に警察手帳も示して業務を装っていたとみられているとのことです。
公務員の行為によって損害が生じた時、国家賠償法にもとづいて、国や公共団体(地方自治体)には賠償責任があるとされています。今回のような警察官による損害は、国家賠償法の対象として、賠償してもらうことはできるのでしょうか。
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国家賠償法とは、公務員の職務執行から損害が発生した場合の賠償責任を規定した法律です。
同法は、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」(同法1条1項)としています。
この条文にあるように、国家賠償請求を行うには、請求の対象となる行為が、公務員の「職務を行うについて」損害を加えた場合でなければなりません。
公務員の行為であっても、公務と全く関係のない、私人としての行為は、国家賠償請求の対象にはなりません。そのような場合には、公務員個人に対して、民法上の不法行為責任(民法709条等)を追及することになります。
今回、この警察官は、業務を「装っていた」だけで、実際の業務として被害者の預貯金を引き出したわけではありません。そうすると、「職務を行うについて」ではない、とも思えます。
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しかし、判例上、この職務遂行性の判断は、行為の外形から客観的に行われることとされています。
たとえば、非番の警察官が、管轄外の場所で、制服を着て職務行為を装って強盗を行ったケースで、客観的に職務遂行の外形を備えていることから、国家賠償請求の対象となるという判断がされています(最判昭和31年11月30日。川崎駅警察官強盗殺人事件)。
このケースと同様に考えるのであれば、本件でも、当該警察官は制服を着て、窓口で警察手帳を見せて引き出し行為に及んでいることから、「職務を行うについて」と判断されるのではないでしょうか。
そうすると、今回のケースでも、被害者は神奈川県に対し、国家賠償法に基づいて損害賠償請求をすることも考えられそうです。
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