冬季五輪男子2連覇のプロフィギュアスケーター羽生結弦(29)が、コンディショニング面において「集大成」のサポートを受けたと感謝する22年北京五輪を回想した。このほど、日本代表選手団を支援する味の素(株)「ビクトリープロジェクト(VP)」の栗原秀文チームリーダー(48)と対談。前人未到だったクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑み、世界初の「4A」認定をつかむまでの舞台裏を振り返った。26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪のプレシーズンも開幕。金メダル2個の羽生に寄り添うことで得られた知見が、日本勢の次代も明るく照らす。(敬称略)【構成=木下淳】
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世界大会の主要6冠「スーパースラム」完成など、氷上に存在するタイトルは全て手にしてきた羽生が、競技会で最後に目指した夢が4回転半の成功だった。
羽生 栄養管理的にも(平昌五輪までの取り組みが)ベースになりました。(2連覇した後の)23、24歳ぐらいから「体が重たいのは嫌かも」と僕が言い始めて。マラソンみたいに、常時、内臓を揺さぶられ続けるダメージが、より大きくかかる競技でもあったので(胃に食事が残らないよう)内臓ケアもしたり。4回転半を目指すに当たって、ベストパフォーマンスを出せていた頃の体重がいいのか、それとも筋力をつけた方がいいのか、議論もしながら。
栗原 ハムストリングス(太もも裏)を鍛えるためのスクワットとか、北京五輪の前、かなり脚を鍛えたことが、ひと目で分かったので、驚いたら「分かる? だけど…」とおっしゃっていましたね。そして「筋力で跳ぶレベルは、いい感じ。あとは腱(けん)」と言ってくれたんです。まさに自分も4Aを跳ぶカギは「腱反射じゃないか」と言おうと思っていた時で。同じことを考えていたんだって。
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羽生 世界のトレンド的にも、研究がどんどん進んで、科学的にも証明されつつあるものがありましたから。
「腱」は筋肉と骨をつないで“ばね”のように振る舞い、弾性エネルギーを貯蔵・再利用できる。その反射を使って4回転半を跳ぼうと、アミノ酸を北京五輪に向けて積極的に摂取し、強化に努めていた。体内メカニズムの解明に余念がない羽生と、栗原の提案が調和した瞬間の1つだった。
羽生は「栗さんに洗脳されています」と笑いながら「やっぱり僕自身『どうやったらうまくなるか』に、かなり貪欲なんですよ。どうしても自分の知識だけでは足りない。だから栗原さんに聞いたし、自分でも調べたし。それを共有してブラッシュアップしましたね」と振り返る。
北京五輪シーズンが幕を開ける前の21年6月1日には、トレーナーもまじえてオンライン会議を行った。全ては4A成功のために。
栗原 腱反射から、解糖系の激しいトレーニング、有酸素系の話まで。腱を健康にする新たなアミノ酸も開発したので「きっと4Aにプラスになるだろう」という仮説を持って、トレーニングを設計させてもらったんです。
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羽生 インターバルトレーニング、ローカーボ(糖質制限)から加圧、心拍数まで、瞬発系か持久系か、もありました。もう「健康」がどうこうではなく、土台ができ上がって、その上に成り立っていました。(北京五輪は)集大成でしたね。
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